電力・ガスのコールセンターの仕事|切替受付ときつさの実態

電力・ガスのコールセンターの仕事|仕事内容・きつさ・向いている人・未経験の始め方

結論から書く。電力・ガスのコールセンターの主な仕事は、引越しに伴う使用開始・停止の受付、契約先を切り替える手続きの受付、そして請求金額と単価に関する問い合わせへの回答である。

ただし「電気とガスの受付」という説明では、求人票の良し悪しを判断できない。

このクラスタの仕事には、他の業種のセンターにはない前提が2つある。ひとつは、応対の最初に「相手が今どこと契約しているか」を特定する工程が入ること。もうひとつは、電話の量が一年のうちで大きく上下することである。どちらも2016年以降の制度変更から出てきた前提で、電話応対の技術とは別のところに原因がある。

コールセンターという仕事の全体像はコールセンターの仕事内容に譲り、ここでは電力・ガスに固有の事情だけを扱う。

目次

家庭の4件に1件が大手電力以外と契約している

まず、電話の入り口が変わった理由を確定させておきたい。

電気の小売は2016年4月に、都市ガスは2017年4月に家庭向けまで全面自由化された。それまで地域ごとに供給者が決まっていたものが、契約先を選ぶ対象になった。選べるということは、選び直す手続きが発生するということでもある。

低圧分野の新電力シェアは26.1%

資源エネルギー庁が2026年7月7日に公表した「電力小売全面自由化の進捗状況について」によると、販売電力量に占める新電力のシェアは2026年3月時点で全体の約21.9%、うち家庭等を含む低圧分野では約26.1%だった。

家庭のおよそ4件に1件が、地域の大手電力以外と契約している計算になる。この数字は、電話を受けるときの前提を変える。かけてきた相手が自社の顧客とは限らず、他社から乗り換えてくる人か、他社へ乗り換えていく人か、あるいはどちらでもない人かを、会話の早い段階で切り分ける必要がある。

供給区域によって進み方も違う。同じ資料は区域別のシェアも示しており、全国一律に4分の1が入れ替わったわけではない。担当する区域が変われば、切替の話題が出る頻度も変わる。

都市ガスの切替は電気ほど進んでいない

ガス側の数字は、電気とは様子が違う。

資源エネルギー庁が公表していた都市ガスのスイッチング申込件数は、2021年3月31日時点で全国4,256,481件、スイッチング率16.8%である。地域別では近畿が22.5%、関東が17.8%、中部・北陸が16.0%、九州・沖縄が11.0%だった。同庁はこの集計を2021年3月31日時点分で最終とし、以降は電力・ガス取引監視等委員会の「ガス取引報」に集約している。

電気の低圧26.1%は販売電力量ベースのシェア、ガスの16.8%は契約件数ベースのスイッチング率で、同じ物差しではない。それでも、ガス側に切り替えの余地が大きく残っていることは読み取れる。この余地があるために、電気とガスをまとめて契約する商品の案内が電話に乗りやすくなる。すでに電気を切り替えた家庭に、ガスの分が手つかずで残っているからだ。

つまり電力・ガスのセンターでは、手続きの受付と商品の案内が同じ通話の中に同居する。受信専門の求人であっても、案内の一言が業務に含まれているかどうかは求人票を読むだけでは分からない。受信と発信の線引きについてはインバウンドとアウトバウンドの違いで整理している。

電話の量は3月に山を作る

一年を通して同じ量の電話が鳴るセンターではない。理由は業務の性質そのものにある。

電気とガスの使用開始・停止は、住所の移動に紐づいて発生する。人が引越さなければ、この手続きは起きない。したがって呼量の波は、国内の人口移動の波をなぞる形になる。

引越しは3月に月平均の2.1倍

総務省統計局の住民基本台帳人口移動報告によると、2025年の市区町村間移動者数は519万548人だった。単純に12で割ると、月平均は約43万3,000人になる。

時期(2025年) 市区町村間移動者数 月平均との比
3月 905,179人 2.09倍
4月 683,859人 1.58倍
8月 348,602人 0.81倍
月平均 約432,500人 1.00倍

3月と4月の2か月だけで158万9,038人が動いており、年間の30.6%にあたる。そして3月の移動者数は8月の2.6倍である。

この波が電力・ガスの受付にそのまま乗る。1件の引越しにつき、旧住所の停止と新住所の開始で最低2つの手続きが立ち、電気とガスの両方を扱うセンターなら件数はさらに増える。

繁忙期の求人が短期契約になりやすい理由

季節の山が高いほど、その分だけ人を厚くする必要がある。ここで業界側の統計が効いてくる。

日本コンタクトセンター協会(CCAJ)が2025年度に実施したコンタクトセンター企業実態調査は、コールセンターの受託会社109社を対象に68社が回答したものである。この調査で派遣を活用する理由を尋ねた項目では、「一時的な人材不足の解消」が88.1%で最多だった。次いで「受託案件への柔軟な対応」が55.9%である。

派遣枠が案件の増減を吸収するために置かれている、という構造がここに出ている。3月前後に立つ短期の募集は、この吸収枠にあたる可能性が高い。応募するときは、契約期間が繁忙期の長さと一致していないか、更新の可能性がどう書かれているかを確かめたい。

逆に言えば、8月のように移動者数が月平均を下回る時期は、受電の負荷が下がる。年間を通して均一にきついのではなく、山と谷がはっきりある職種だと考えたほうが実態に近い。

夏と冬は「請求が高い」の電話が別の山を作る

引越しの山とは別に、料金の問い合わせにも季節がある。こちらは使用量そのものが動くために起きる。

国が値引きの単価を月ごとに動かしている

資源エネルギー庁は2026年7月から9月使用分について、令和8年度一般会計予備費5,135億円を充てた電気・ガス料金支援を実施している。同庁の資料は「特に、電力使用量がピークとなる8月使用分の負担軽減を重点化する」と明記しており、値引きの単価は月ごとに変わる。

2026年 電気(低圧) 都市ガス
7月使用分 3.5円/kWh 14円/㎥
8月使用分 4.5円/kWh 18円/㎥
9月使用分 3.5円/kWh 14円/㎥

同資料は、標準的な家庭で3か月あわせて5,000円程度の負担引下げ効果を見込むとしている。

この値引きは、電気料金や都市ガス料金の算定に使う単価から差し引く形で反映される。つまり請求書の末尾に「割引」の一行が足されるのではなく、単価の側が動く。検針票を見た人が「先月と単価が違う」と気づいて電話をかけてくるのは、制度の設計からすると自然な流れである。

説明の対象が「金額」ではなく「単価の構成」になる

ここが電力・ガスのセンターの特徴になる。

問い合わせの多くは「今月の請求が高い」という形で始まる。しかし答えの中身は、使用量、燃料費調整、再生可能エネルギー発電促進賦課金、そして期間限定の支援単価という複数の要素に分かれる。金額を読み上げるだけでは会話が終わらない。

数字を1つずつ切り分けて、どの要素がいくら効いたのかを口頭で説明する。この作業が業務の中心にあるため、電話応対の技術より先に、料金表を読む力が要求される。研修で覚える対象も、応対のフレーズより料金体系のほうが分量が多くなりやすい。

裏を返すと、覚える対象が明確で、扱う商材が電気とガスに限られるという性質でもある。取扱商品が数百点ある通販のセンターとは、記憶の負荷のかかり方が違う。

相談件数は減っている。ただし入り口の混乱は残っている

自由化直後に起きた勧誘トラブルは、いまどうなっているのか。消費者側の統計を見ると、方向は改善している。

独立行政法人国民生活センターが公表している電力・ガスに関する消費生活相談の件数は、2022年度6,815件、2023年度4,523件、2024年度4,493件と推移している(2025年5月31日までの集計)。2022年度から2024年度で34.1%減った。

このうち契約トラブルに分類される相談は、2022年度811件、2023年度587件、2024年度529件である。2024年度の相談全体に占める割合は11.8%にあたる。

減っても、電話の入り口には効いてくる

件数が減ったことは、応対が楽になったことを意味しない。

年間4,000件台の相談が消費生活センター側に残っているということは、その手前に、事業者のコールセンターへ直接かかった問い合わせがある。相談として記録に残るのは、そこで解決しなかった一部である。

そして相談の中身が契約に関するものであるとき、電話をかけてきた人は自分の契約先や契約内容を正確に把握していない状態にある。応対は、契約者名、住所、供給地点特定番号といった情報の確認から始まる。この確認が長引くほど通話は伸び、相手の苛立ちも上がる。きつさを感じる場面は、電話の内容そのものより、この特定作業のほうに出やすい。

在宅で働けるかは案件の側で決まる

電力・ガスの案件は在宅にしやすいのか。業界全体の数字から見当をつけられる。

CCAJ調査で在宅オペレーションの実施状況を答えた65社のうち、「既に実施している」は39社で60%だった。実施理由の最多は「働き方の多様化のため」で39社中33社(84.6%)である。

一方で「実施予定はない」と答えた22社の理由は、「セキュリティ上の問題」が18社(81.8%)と突出していた。

扱う情報の種類が判断を分ける

電力・ガスの受付では、氏名、住所、供給地点特定番号、支払方法といった情報を扱う。契約の切替では本人確認も伴う。在宅にできるかどうかは、本人の希望ではなく、この情報を自宅の環境で扱ってよいとクライアントが判断するかどうかで決まる。

したがって同じ「電力・ガスのコールセンター」でも、在宅可の求人と出社必須の求人が併存する。求人票に在宅の記載がない場合、それは会社の方針というより受託案件の条件である可能性が高い。在宅勤務そのものの探し方は在宅コールセンターの始め方にまとめている。

給料と、求人票で確かめる4点

賃金の話に移る。ここで注意したいのは、業種別の給与統計が存在しないことである。

厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査では、コールセンターのオペレーターは「電話応接事務員」(電話交換手を含む職種区分)として集計される。フルタイムの年収換算は約394万円(きまって支給する現金給与額295,200円×12か月+年間賞与393,700円)、パート・アルバイトの1時間当たり所定内給与額は1,363円だった。

この数字はコールセンター全体の平均であり、電力・ガスの案件に限った値ではない。電力・ガスだから高い、あるいは低いと断定できる公的データはない。給与の内訳そのものはコールセンターの年収・給料で分解している。

求人票のどこを見るか

平均値と目の前の求人を突き合わせるには、この職種に固有の4点を確認すれば足りる。

  1. 受信だけか、切替の案内が業務に入るか
  2. 契約期間が3月前後の繁忙期と一致していないか
  3. 扱うのは電気だけか、ガスとセットか
  4. 在宅の可否が案件条件として書かれているか

このうち1番目と3番目は、研修で覚える量に直結する。電気とガスの両方を扱う案件は、料金体系を2つ覚えることになる。2番目は雇用の見通しに、4番目は通勤の負担に効く。

4点のうち2つ以上が求人票から読み取れない場合、面接で確認する材料として持っていきたい。CCAJ調査で採用に苦労している企業は、回答した67社のうち45社(82.1%)にのぼる。採用側が採れていない状況では、応募者側から条件を確かめる余地がある。雇用形態や勤務時間から絞り込むならカスタマーサポート(受信)の求人で条件を並べて比較できる。

よくある質問

電力・ガスのコールセンターはきついですか

負荷のかかり方に季節の偏りがある。2025年の市区町村間移動者数は3月が905,179人で月平均の2.09倍、8月は348,602人で0.81倍だった。引越しに連動する使用開始・停止の受付が主業務であるため、3月前後は受電が集中しやすい。通話1件あたりの難しさは、契約者情報の特定にどれだけ時間がかかるかで変わる。

電気とガスの知識がないと働けませんか

入る前の知識は前提にされていない。ただし応対の中身が単価の説明になるため、研修で料金体系を覚える負荷はある。燃料費調整、再生可能エネルギー発電促進賦課金、期間限定の支援単価といった要素を分けて説明できる状態が求められる。

未経験でも採用されますか

CCAJの2025年度調査では、採用活動の状況を答えた67社のうち45社(82.1%)が「苦労している」または「やや苦労している」と回答した。職種別の不足感でも、コミュニケーター・オペレーターは66社中72.7%が不足と答え、「過剰気味である」と答えた企業はゼロだった。入り口が広い状態にあるのは、業務が易しいからではなく採用側が採れていないためである。

短期の求人と長期の求人はどちらを選ぶべきですか

CCAJ調査で派遣活用の理由の最多は「一時的な人材不足の解消」で88.1%だった。繁忙期に合わせた短期枠が実在することを示す数字である。経験を作るために短期で入る選択はあるが、契約期間が繁忙期と一致している場合は更新の条件を先に確認したい。

電力・ガスの案件は在宅にできますか

CCAJ調査では在宅オペレーションを既に実施している企業が65社中39社(60%)、実施予定がない22社の理由は「セキュリティ上の問題」が81.8%だった。在宅可否は個人の希望ではなく受託案件の条件で決まる。求人票に在宅の記載があるかどうかで判断するほかない。

次に読む

出典

  • 資源エネルギー庁「電力小売全面自由化の進捗状況について」(2026年7月7日・次世代電力基盤ワーキンググループ資料5) https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/electric_power_wg/pdf/001_05_00.pdf
  • 資源エネルギー庁「スイッチング申込件数(2021年3月31日時点)」都市ガス https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/gas/liberalization/switch/
  • 資源エネルギー庁「今夏の電気・ガス料金支援(2026年7月〜9月)」(令和8年度一般会計予備費5,135億円) https://www.enecho.meti.go.jp/category/gekihen_lp/gaiyo.pdf
  • 総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」2025年結果および2025年3月・4月・8月結果 https://www.stat.go.jp/data/idou/index.html
  • 独立行政法人国民生活センター「電力・ガス(各種相談の件数や傾向)」(2025年5月31日までの集計) https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/electricity_gas.html
  • 一般社団法人日本コンタクトセンター協会「2025年度 コンタクトセンター企業 実態調査」(対象109社・回答68社・回収率62.4%・2025年6月16日〜7月23日実施) https://ccaj.or.jp/telemarketing/doc/outsourcing_research_2025.pdf
  • 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)/短時間労働者 職種別1時間当たり所定内給与額(企業規模計10人以上) https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html

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この記事を書いた人

受付・コールセンター歴10年の編集者。企業受付・インバウンド・SV(管理者)・採用担当を経験し、現場目線で「受付キャリアナビ」編集部の記事執筆・編集を担当。

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