結論から書く。「楽なコールセンター」という単位の職場は存在しない。楽さを決めている条件が5つあり、それぞれ別の求人票の項目に現れる。
これは言葉遊びではない。実際に困るのは、条件どうしが逆を向く場面があるからだ。
たとえば在宅勤務は通勤の負担を消すが、機材と回線の管理を自分の側に移す。受注中心のセンターは用件が読める代わりに、繁忙期の入電量が読めない。どれかを取ると、どれかが重くなる。だから「楽な職場」を一括で探すと、入ってから想定と違う部分に当たる。
以下、日本コンタクトセンター協会(CCAJ)の2025年度コンタクトセンター企業実態調査(受託企業109社対象・68社回答)と、厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査を使って、5つの条件を一つずつ開いていく。
「楽」は5つの条件に分かれている
先に全体を並べる。それぞれ、どの数字で確認できるかまで対応させておく。
5つの条件と、確認できる場所
| 条件 | 何が楽になるか | 確認できる場所 |
|---|---|---|
| 用件が読めるか | 準備と暗記の量が減る | 受託内容(受注/サポート) |
| 受信か発信か | 断られ続ける負荷が消える | 電話業務のイン・アウト比率 |
| 会社がクレームを引き取るか | 個人で抱える時間が減る | カスタマーハラスメント対策の整備状況 |
| 通勤があるか | 拘束時間が減る | 在宅オペレーションの実施有無 |
| 自動化のあとに何が残るか | 覚える量が変わる | 自動応答の導入状況 |
この5つは独立している。すべてを満たす求人は多くないので、自分にとって重いものから順に見るほうが早い。
なぜ一つの尺度で選べないのか
同じ「きつい」という言葉が、人によって指しているものが違う。用件が読めないことを指す人、断られることを指す人、クレームを一人で抱えることを指す人がいる。
CCAJ調査で受託内容を見ると、「カスタマーサポート」64社(94.1%)、「問い合わせ受付」61社(89.7%)、「受注センター」47社(69.1%)と、複数の業務を受けている企業が大半である。同じ会社の中にも、条件の違う持ち場が並んでいる。会社単位で楽かどうかを決めようとすると、この時点で無理が出る。
条件1:用件が読めるセンターかどうか
いちばん効くのはここである。何を聞かれるかが決まっていれば、覚えることも謝ることも減る。
受注センターと問い合わせ受付は、性質が違う
受注センターは、注文を受けるという用件が最初から決まっている。聞き取るのは商品・数量・住所・支払方法で、通話の型がほぼ固定される。
問い合わせ受付とカスタマーサポートは、相手が何を持ってかけてくるか選べない。使い方の質問も、故障も、苦情も同じ番号に入る。CCAJ調査で94.1%の企業がカスタマーサポートを受託しているのは、そこが最も需要のある業務だからだが、働く側から見れば最も用件が読めない業務でもある。
クライアントの業種が広いほど、覚える量が増える
同調査でクライアントの業種を見ると、「サービス業」50社(73.5%)、「通信販売業」44社(64.7%)、「金融・保険業」43社(63.2%)、「流通・小売業」41社、「通信業」38社、「電力・ガス・水道」38社と広く分布している。
業種が違えば、覚える商品知識も規則も別物になる。金融や通信のように制度が絡む案件は、覚える量が多いぶん時給が高く設定される傾向がある。「楽」を優先するなら、時給の高い案件を避けるという判断が成立する場面がある。
案件の切り替わりがあるかを確認する
同調査で「センター運営」はすべての企業が受託しており、「スタッフ派遣」が37社(54.4%)、「コンサルティング」が31社(45.6%)と続く。受託企業は複数のクライアントの案件を抱えているため、案件が終われば別の案件へ移る。
用件が読める案件に配属されても、それが続く保証はない。面接では「この案件はいつから続いているか」を聞いておきたい。用件の定型度が高い持ち場を先に見るなら、受注・予約受付の求人で業務内容の書かれ方を確認しておくと比較しやすい。
条件2:受信か発信かで、負荷の種類が変わる
用件の読みやすさとは別に、電話をかける側か受ける側かで負荷の質が変わる。
85.1%は受信中心。母数としては受信が主流
CCAJ調査で電話業務のイン・アウトの比率を見ると、「インバウンドのみ」と「インバウンドの方が多い」を合わせて57社、非公開を除く67社の85.1%を占めた。「アウトバウンドの方が多い」は8社、「アウトバウンドのみ」は1社にとどまる。
求人の母数としては受信が圧倒的に多い。発信中心の職場を意図的に避けるのは、それほど難しくない。
発信に固有の負荷は、断られる回数そのものにある
発信業務では、相手が用件を持っていない。かけた側から用件を作るため、断られることが常態になる。この負荷は、話し方や慣れで減る性質のものではない。
一方で、発信には受信にない楽さもある。入電量に左右されないため、業務量が読める。かける件数を自分の裁量で配分できる場面もある。受信の「用件が読めない」と、発信の「断られ続ける」は、別の種類の重さである。どちらが自分に重いかは、実際に経験してみないと判断しにくい。業務の流れの違いはインバウンドとアウトバウンドの違いで比較している。
発信のすべてが勧誘ではない
発信業務のなかには、確認や調査といった、勧誘を伴わないものもある。求人票に「アウトバウンド」とだけ書かれている場合、勧誘なのか確認なのかは読み取れない。応募前に用件の中身を確認する価値がある。
条件3:クレームを個人で受け止めさせない会社かどうか
クレームの有無そのものは選べない。選べるのは、それを会社が引き取る体制があるかどうかである。ここは調査に直接の数字がある。
50%を超えたのは6項目のうち1つだけ
CCAJ調査は、カスタマーハラスメント対策の整備状況を6項目で尋ねている。未回答を除く67社での「既に対応済み」の内訳は次の通りだった。
| 対策項目 | 対応済みの企業 | 比率 |
|---|---|---|
| 社内報告・連携体制の整備 | 35社 | 52.2% |
| 基準の明確化 | 33社 | 49.3% |
| 対応方針または行動基準の策定・公開 | 30社 | 44.8% |
| 相談窓口の設置 | 29社 | 43.3% |
| 対応マニュアルの策定 | 27社 | 40.3% |
| 警察通報基準・規則の策定 | 21社 | 31.3% |
50%を超えたのは最上段の1項目だけである。残り5項目は、対応済みの企業が半数に満たない。
「基準の明確化」が49.3%であることの意味
この6項目のうち、働く側にとって最初に効くのは「基準の明確化」である。どこからがカスタマーハラスメントで、どこから電話を切ってよいのかが決まっていなければ、判断は現場の個人に降りてくる。
その基準がある会社は49.3%。半数の会社では、切ってよいかどうかを本人が判断している。この数字だけを見ると業界の遅れに見えるが、裏を返せば、整備済みの会社を選べば負荷が実際に変わるということでもある。応対そのものの進め方はクレーム対応のコツで扱った。
面接で確認できる形に落とす
「クレームは多いですか」と聞いても、答えは主観になる。代わりに、上の6項目を質問の形にする。エスカレーションの基準が文書であるか、通話を終了してよい条件が決まっているか、対応後に誰かが引き取る仕組みがあるか。
いずれも「ある/ない」で答えられる。答えに詰まる会社は、整備されていない側である可能性が高い。
条件4:通勤の有無と、時間の自由度
在宅勤務は、楽さの条件のなかで最も導入が進んでいる項目である。
在宅は60%まで来ている
CCAJ調査で在宅オペレーションを「既に実施している」と答えた企業は39社で、非公開を除く65社の60%にあたる。2023年度31社、2024年度35社、2025年度39社と3年続けて増えている。
実施理由の内訳は、「働き方の多様化のため」33社(実施39社の84.6%)、「BCP対策のため」24社(61.5%)、「採用が容易である」15社(38.5%)、「業務効率化のため」(28.2%)、「経費削減のため」(25.6%)だった。上位2つが働き方と事業継続で、コスト削減は下位にある。企業側が人を集めるために導入している構図が読み取れる。
実施しない会社の理由は、そのまま在宅の難しさを示している
一方、「実施予定はない」と答えた22社の理由は、「セキュリティ上の問題」18社(81.8%)、「クライアントの要望」12社(54.5%)、「労務管理上の問題」11社(50.0%)、「品質管理上の問題」10社(45.5%)、「社則・規定上不可」8社(36.4%)、「現場マネジメントが困難」7社(31.8%)と並ぶ。
上位2つは会社側の事情で、働く側の努力では動かない。金融や医療のように扱う情報が重い案件ほど在宅にしにくい。在宅で探すと、案件の選択肢が先に狭まるという関係にある。
在宅が楽とは限らない部分
在宅は通勤時間をゼロにするが、機材と回線の管理を自分の側に移す。音質の不調も、通信の切断も、まず自分が対処する。
さらに、その場で聞ける人がいない。用件が読めないカスタマーサポートを在宅で受けると、条件1の重さがそのまま増幅される。在宅を選ぶなら、用件が読める案件と組み合わせるほうが無理がない。始め方と必要なものは在宅コールセンターの始め方にまとめている。
条件5:自動化のあとに、人の側へ何が残るか
最後の条件は、いま業界で進行している変化に関わる。ここは「楽になる」と読み違えやすい。
電話は減り、自動応答は増えている
CCAJ調査で電話業務の増減を尋ねた項目では、「昨年度より減少した」が19社で「増加した」の16社を上回った。チャットボットやボイスボット等の自動応答による業務は「増加した」が21社で最多となり、自動応答を行っていない企業を除く50社の42%を占めた。
提供チャネルでも、チャットボットが48.5%、AIボイスボットが35.3%まで来ている(回答68社ベース)。生成AIをセンター運営の実務で運用している企業は33社(48.5%)である。
簡単な用件から先に機械へ移る
自動応答が引き取るのは、定型的で件数の多い用件である。営業時間の確認、配送状況の照会、パスワードの再設定。先に機械へ移るのは、人にとっていちばん楽だった部分である。
結果として、人に回ってくる通話は、機械が処理できなかったものに寄っていく。件数は減っても、1件あたりの難易度は上がる。電話の総量が減っているという事実を、そのまま楽になる兆候として読むわけにはいかない。
教える体制があるかで、この変化の重さが変わる
難易度の上がる方向に業務が動くなら、教育体制の有無が効いてくる。CCAJ調査では専任トレーナーがいる企業が36社(回答68社の52.9%)、専任のQC・QA担当者がいる企業が31社(45.6%)で、いずれも半数前後にとどまる。
同調査ではSV1人あたりのコミュニケーター数が平均8.93人で、2023年度8.54人、2024年度8.83人と3年連続で増えている。聞ける相手の密度は薄くなる方向にある。難しい通話が増える一方で聞ける相手が減るなら、教育体制の差は今後さらに開く。
「楽」を取ると、何を手放すことになるのか
条件を満たす職場を選ぶこと自体に問題はない。ただし、代わりに何が動くのかは見ておきたい。
給与は業務の難易度では決まらない
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、電話応接事務員(コールセンターオペレーターを含む職種区分)のフルタイムの年収換算は約394万円、パート・アルバイトの時給は1,363円である。
この統計に業務の難易度による区分はない。差がつくのは雇用形態と役職である。CCAJ調査ではSVの不足感が非公開2社を除く66社の87.9%と全職種で最も高く、オペレーターの72.7%を上回る。年収を動かすのは案件の難しさではなく、役職に就くかどうかである。給与の分かれ方はコールセンターの年収・給料はいくらで分解した。
楽な案件ほど、外へ持ち出せる技能が薄い
用件が固定された案件は、覚える範囲が狭い。そのぶん、身につく知識も狭くなる。金融や通信の案件で制度知識を積んだ人と、数年後の選択肢が変わる。
これは「楽を選ぶな」という話ではない。期間を決めて楽な条件を取るのと、無期限にそこへ留まるのとでは意味が違う、というだけである。体調や家庭の事情で負荷を下げたい時期に、条件のよい案件を選ぶのは合理的な判断になる。
負荷を下げる代わりに何がいくら動くかは、職種ごと移った例で見るとはっきりする。看護師からコールセンターへ転職したときの年収差では、下がる126万円のうち夜勤手当で説明できる分が2割に届かないことを内訳から示した。
求人票で見るなら、この順番になる
- 受託内容の記載。受注中心か、サポート中心か。書かれていなければ面接で聞く。
- 受信か発信か。「アウトバウンド」とだけある場合は、勧誘か確認かを確認する。
- エスカレーションの基準の有無。文書化されているかどうかで答えが分かれる。
- 在宅の可否と、その条件。全日在宅か、研修期間は出社か。
- 研修とモニタリングの担当者。専任がいるか、SVが兼務しているか。
上から順に、入ってからの負荷への効き方が大きい。5番目まで確認できる求人は多くないので、面接で埋めることになる。
よくある質問
一番楽なコールセンターの業務は何ですか
用件が最初から決まっている受注業務が、覚える量と謝る場面の少なさでは有利になる。CCAJの2025年度調査で受注センターを受託している企業は47社(69.1%)あり、カスタマーサポート64社(94.1%)に次ぐ規模である。ただし繁忙期の入電量が読めない点は残る。楽さの条件は複数あるため、自分にとって重い条件から選ぶほうが確実である。
クレームが少ないコールセンターはありますか
クレームの多寡そのものを示す統計はない。確認できるのは会社側の体制のほうで、CCAJ調査ではカスタマーハラスメント対策6項目のうち「既に対応済み」が半数を超えたのは「社内報告・連携体制の整備」(35社・52.2%)だけだった。基準が明確な会社を選ぶことが、実質的にクレーム負荷を下げる手段になる。
在宅コールセンターは楽ですか
通勤時間はなくなるが、機材と回線の管理が自分の責任範囲に入り、その場で聞ける相手もいない。CCAJ調査では在宅を実施しない22社の理由に「品質管理上の問題」45.5%、「現場マネジメントが困難」31.8%が挙がっており、運用の難しさは会社側も認識している。用件が読める案件と組み合わせるかどうかで評価が変わる。
楽な職場は時給が低いですか
賃金構造基本統計調査に業務の難易度による区分はないため、直接の比較はできない。傾向として、金融や通信のように制度知識を要する案件は覚える量が多く、時給が高く設定されやすい。時給の高さを避けることが、結果として覚える量を減らす選択になる場面はある。
AIで仕事が楽になりますか
CCAJ調査では自動応答による業務が「昨年度より増加した」企業が21社で最多だった。ただし自動化が先に引き取るのは定型的で件数の多い用件であり、人に残るのは機械が処理できなかった通話に寄っていく。件数は減っても1件あたりの難易度は上がる方向にある。
次に読む
出典
- 一般社団法人日本コンタクトセンター協会「2025年度 コンタクトセンター企業 実態調査」(対象109社・回答68社・回収率62.4%・2025年6月16日〜7月23日実施)
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計・企業規模計10人以上)/短時間労働者 職種別1時間当たり所定内給与額
その悩み、次の一歩に。LINEで無料相談
受付・コールセンター専門のアドバイザーが、あなたに合う職場探し・応募をLINEで無料サポート。新着求人もお届けします。
LINE友だち追加して無料相談受付キャリアナビ(運営:求人アグリ研究所)
