コールセンターの離職率は本当に9割?平均勤続7.8年の統計で検証

コールセンターの離職率と長く続けるコツ

「コールセンターの離職率は9割」という言い方をよく見かける。

結論を書くと、この数字を裏づける公的統計は見つからない。厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によれば、コールセンターのオペレーターが含まれる「電話応接事務員」の平均勤続年数はフルタイムで7.8年である。

7.8年という数字は、毎年9割が入れ替わる集団からは出てこない。

ただし、「9割」という数字がまったくの作り話かというと、そう切り捨てるのも違う気がする。実際に短期間で辞めていく人がいるのは確かで、その印象がこの数字を生き延びさせている。数字が間違っているとして、では何が起きているのか。統計を開いていくと、辞める人が多い職場と続く人が多い職場が、かなりはっきり分かれていることが見えてくる。

目次

公的統計が示す実際の勤続年数

まず、事実の側を確定させておきたい。

フルタイムは7.8年、パートは5.7年

厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査では、コールセンターのオペレーターは「電話応接事務員」(電話交換手を含む職種区分)として集計されている。

区分 平均勤続年数 平均年齢 労働者数
フルタイム(一般労働者) 7.8年 43.6歳 179,540人
パート・アルバイト(短時間労働者) 5.7年 50.2歳 97,730人

合計27万7,270人を対象にした集計である。標本の規模として、特定の会社の事情で偏るような数字ではない。

「9割が辞める」と平均7.8年は両立しない

仮に毎年9割が入れ替わる職場を考えると、在籍者の大半は入社1年未満になる。平均勤続年数は1年台に収まるはずで、7.8年という値は出てこない。パートの5.7年についても同じことが言える。

つまり「離職率9割」は、業界全体の平均像としては成立していない。特定の現場、特定の期間、特定の雇用形態で起きたことが、業界全体の話として一般化されていると考えるのが自然だろう。

男女でも勤続はほとんど変わらない

同じ調査を男女別に見ると、男性8.5年・女性7.5年。1年しか違わない。

年収では男性464万円・女性358万円と100万円以上の差がつく職種なのに、在籍の長さはほぼ同じである。給与差の構造についてはコールセンターの年収・給料で詳しく分解した。ここで押さえておきたいのは、辞めやすさに男女差が出ていないという点だ。

受付の仕事と比べても、勤続はほとんど変わらない

「電話対応がストレスだから辞める」という説明はよく聞く。それが本当なら、電話が主業務でない受付職と比べたときに、勤続年数に差が出るはずである。

同じ調査で「受付・案内事務員」を見るとこうなる。

職種 勤続年数(男女計) 男性 女性 平均年齢
電話応接事務員(コールセンター) 7.8年 8.5年 7.5年 43.6歳
受付・案内事務員 8.6年 13.2年 7.5年 42.0歳

女性はどちらも7.5年で完全に同じ。男女計で0.8年の差があるのは、受付職の男性が13.2年と突出して長いためで、この層の人数は1万7,490人と全体の2割にとどまる。

つまり大多数を占める層で見ると、電話中心の仕事と対面中心の仕事で、続く長さに違いは出ていない。電話対応そのものが離職の主因だとすると、この一致は説明しにくい。

年齢層を見ると印象がさらに変わる

パート・アルバイトの平均年齢は50.2歳である。学生や20代が短期で入れ替わる職場、というイメージとは重ならない。

CCAJ調査でシニア(60歳以上)の雇用・採用について尋ねた項目では、「積極的である」12社と「やや積極的である」12社を合わせた24社(35.3%)が積極的と答えている。消極的は13社(19.1%)で、残る31社(45.6%)は「どちらとも言えない」だった。

積極的と消極的が2対1で、判断を保留している企業が半数近い。シニアの活用が業界の標準になったとまでは言えないが、排除する方向でもないという段階である。長く働ける職場かどうかを年齢の面から見るなら、この項目を面接で確認する価値はある。

では、なぜ「辞める職業」の印象が強いのか

平均が7.8年でも、辞める人が目立つ理由はある。業界側の統計を見ると、その理由が具体的に見えてくる。

日本コンタクトセンター協会(CCAJ)が2025年度に実施したコンタクトセンター企業実態調査は、コールセンターの受託企業109社を対象に68社が回答したものである。

辞める人が多いのではなく、採れていない

この調査で採用活動の状況を答えた67社のうち、「苦労している」26社と「やや苦労している」29社を合わせた45社(82.1%)が採用難を訴えている。

職種ごとの過不足では、非公開を除く66社のうち、

  • スーパーバイザー:87.9%が不足感あり
  • コミュニケーター・オペレーター:72.7%が不足感あり

となっており、どちらの職種でも「過剰気味である」と答えた企業はゼロだった。

不足の理由が「辞めるから」なのか「採れないから」なのかは、この調査だけでは切り分けられない。ただ、採用に苦労している企業が8割を超える一方で平均勤続が7.8年ある以上、人が抜ける速度より、入る速度のほうが問題になっていると読むほうが整合する。

現場の体感としての「みんな辞めていく」は、席が埋まらない状態を指していることが多いのではないか。辞めた人の穴が長く空いたままなら、実際の離職率以上に人が減っている感覚になる。

現場の負荷は3年連続で増えている

その感覚を裏づける数字がある。同調査によると、スーパーバイザー1人あたりが受け持つコミュニケーターの数は次のように推移している。

年度 SV1人あたりのコミュニケーター数
2023年度 8.54人
2024年度 8.83人
2025年度 8.93人

3年連続で増加している。SVの補充が現場の増員に追いついていない。

SVは新人のフォローや対応の相談を受ける立場なので、ここが薄くなると、入ったばかりの人ほど支えを得にくくなる。入社直後の離職が起きやすい構造は、オペレーター不足そのものより、SV不足のほうから来ている可能性が高い。SVの役割とキャリアはコールセンターのSVのキャリアにまとめた。

企業側も課題として認識している

CCAJ調査では、経営課題として取り組んでいる項目も尋ねている。「採用難・人手不足への対応」を挙げた企業は59社、「働きがい・従業員満足度・エンゲージメントの向上」も同じく59社だった。

人を集めることと、集めた人に定着してもらうことが、ほぼ同数の企業で課題として並んでいる。業界としては、問題が認識されていないわけではない段階にある。

続く人と続かない人を分けているもの

平均7.8年という数字の内側には、長く続く層と早期に離れる層が同居している。統計から読み取れる分岐点は3つある。

分岐点1:雇用形態

CCAJ調査で直接雇用と派遣の状況を答えた67社のうち、「直接雇用の方が派遣より多い」が52社(77.6%)を占めた。ただし派遣を活用している企業は59社(88.1%)に達する。

派遣活用の理由の最多は「一時的な人材不足の解消」で88.1%、次いで「受託案件への柔軟な対応」が55.9%だった。

この2つが上位に来ているということは、派遣枠は案件の増減を吸収するために設けられているということである。案件が終われば契約も終わりうる。本人が辞めたいかどうかとは別の理由で在籍が切れる枠が、業界全体で相当数存在している。

離職率の数字を押し上げているのが、この構造による契約終了である可能性は考えておいたほうがいい。

直接雇用の割合の分布も見ておきたい。同調査では「61%以上70%」が17社で最も多く、次いで「81%以上90%」が10社、「71%以上80%」が9社と続く。「直接雇用のみ(100%)」も8社ある。

直接雇用が6割台の会社と10割の会社が、同じ業界内に併存している。在籍の安定度は業界の性質ではなく、会社ごとの方針で決まっているということだ。求人票の時給だけを比べても、この違いは見えてこない。

分岐点1.5:どんな案件のセンターか

同じコールセンターでも、受託している業務の種類によって働き方は変わる。CCAJ調査で受託内容を尋ねた項目(複数回答)では、次の順になった。

受託内容 社数 割合
カスタマーサポート 64社 94.1%
問い合わせ受付 61社 89.7%
受注センター 47社 69.1%

ほとんどの企業がカスタマーサポートと問い合わせ受付を扱っている。一方で受注センターは7割弱にとどまる。

受注は成果が数字で出る業務で、問い合わせ対応は数字になりにくい業務である。評価のされ方が違えば、続けやすさの感覚も変わる。求人票の職種名だけでは判別できないので、面接で「どの業務の比率が高いか」を確認しておきたい。

分岐点2:役職に就けるか

前述の通り、男女で勤続年数はほぼ同じなのに年収は100万円以上違う。差は毎月の所定内給与額で6万7,100円、年間賞与で20万300円に及ぶ。

勤続7.5年と8.5年で100万円の差がつくということは、在籍年数を積んでも給与が自動的に上がる構造ではないということだ。動かすのは役職である。SVの不足感が87.9%に達している以上、上がる余地そのものは大きい。

逆に言えば、役職を目指さないまま5年、6年と続けた場合、給与面での手応えは得にくい。ここが「続けても意味がない」と感じる分岐点になる。

分岐点3:働き方を選べるか

在宅オペレーションを「既に実施している」企業は、非公開を除く65社中39社で60%に達した。実施理由の最多は「働き方の多様化のため」で39社中33社(84.6%)である。

一方、「実施予定はない」は22社で、その理由は「セキュリティ上の問題」が18社(81.8%)、「クライアントの要望」が12社(54.5%)だった。

在宅にできるかどうかは、本人の希望ではなく受託している案件の性質で決まる。金融や個人情報を扱う案件は在宅化しにくい。同じ業界内で、通勤前提の職場と在宅可の職場が併存している。在宅勤務の実際は在宅コールセンターの始め方で整理した。

定着しやすい職場を入社前に見分ける

ここまでの分岐点を、求人票と面接で確認できる形に落とすとこうなる。

  1. 直接雇用か派遣か、そして案件の想定期間。派遣枠なら、案件終了時の扱いを確認しておく。時給の高さは契約の短さとセットになっていることがある。
  2. SVの配置人数。平均は8.93人に1人。面接で「1チーム何人にSVが何人ですか」と聞いて、これより薄ければ入社直後のフォローは期待しにくい。
  3. 昇格の要件が明示されているか。年収を動かすのは役職なので、SVになるための条件が具体的に示されているかどうかは、長期で見たときの差が大きい。
  4. 在宅の可否と、その理由。「案件の性質上できない」と説明できる会社は、業務の切り分けができている。「検討中」のまま何年も経っている場合は、そもそも制度設計に手が回っていない可能性がある。

このうち2番目は特に効く。数字で答えられない、あるいは大幅に上回る答えが返ってくる場合、現場の負荷が高い状態にある。

業界そのものは縮小している点も見ておく

長く続けるつもりなら、会社単位だけでなく業界の方向も見ておきたい。

CCAJ調査で売上高を公開した47社の合計は1兆5,260億3,400万円で、前年度と比べて765億8,200万円、4.8%の減少だった。前年度と比較可能な37社に限っても4.4%減で、傾向は変わらない。

人手は足りていないのに、業界全体のパイは縮んでいる。この2つが同時に起きているとき、全体の待遇が底上げされる展開は考えにくい。

経営課題の優先度でも同じ方向が読み取れる。同調査で最も優先度が高いとされたのは「情報漏洩・サイバー攻撃等、情報セキュリティの強化」65社、次いで「DXを通じた効率化・生産性向上」64社、「AI活用による自動化対応・セルフサービス化の推進」63社の順だった。上位3項目のうち2つが、人を増やす方向ではなく効率化の方向を向いている。

さらに、優先度が高い上位5項目のうち未着手(検討中と着手していないの合計)が最も多いのがAI活用である。優先度は高いが手が付いていない。裏を返せば、これから着手される領域ということでもある。

定型的な問い合わせ対応は自動化の対象になり、人が残るのは判断や例外処理の部分になる。長期で見るなら、続けられるかどうかより、続けた先に何が身につくかで職場を選んだほうがいい。

条件を絞って探すならカスタマーサポート(受信)の求人から、雇用形態や勤務形態で並べ替えて確認できる。

よくある質問

コールセンターの離職率のデータはどこにありますか

職種別の離職率を継続的に公表している公的統計は見当たらない。厚生労働省の雇用動向調査は産業別の離職率を公表しているが、コールセンター単独の区分はない。現状、勤続年数から間接的に推測するのが最も確実な方法になる。

なお、業界団体であるCCAJの実態調査にも離職率の項目はない。会員企業68社を対象にした調査で採用難や職種別の過不足は毎年尋ねているのに、離職率は尋ねていない。業界内でも共通の指標として集計されていないということなので、「9割」のような具体的な数字が公式な集計から出てくる余地は、そもそも小さい。

3ヶ月で辞める人が多いというのは本当ですか

これも公的な裏づけとなる統計はない。ただしSV1人あたりの担当人数が3年連続で増えていることから、入社直後のフォローが薄くなる方向に動いているのは確かである。早期離職が起きやすい環境要因は存在する。

未経験だと続きにくいですか

CCAJ調査では採用に苦労している企業が82.1%に達し、未経験者への門戸は広い状態にある。一方で研修体制の充実度は企業によって差がある。入り口の広さと定着のしやすさは別問題として確認したほうがいい。未経験からの入り方はコールセンターがきついと感じたときも参考になる。

パートのほうが辞めやすいですか

平均勤続はフルタイム7.8年に対してパート5.7年。2.1年の差はあるが、パートの平均年齢が50.2歳であることを考えると、短期の腰掛けとして使われている層というより、生活に組み込んで続けている層と見るほうが数字に合う。

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出典

  • 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)/短時間労働者 職種別1時間当たり所定内給与額(企業規模計10人以上)
  • 一般社団法人日本コンタクトセンター協会「2025年度 コンタクトセンター企業 実態調査」(対象109社・回答68社・回収率62.4%・2025年6月16日〜7月23日実施)

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この記事を書いた人

受付・コールセンター歴10年の編集者。企業受付・インバウンド・SV(管理者)・採用担当を経験し、現場目線で「受付キャリアナビ」編集部の記事執筆・編集を担当。

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