この2つは、公的統計では隣り合った職業として扱われている。
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査で、受付は「受付・案内事務員」、コールセンターのオペレーターは「電話応接事務員」として集計される。総務省の日本標準職業分類でも、前者が小分類254、後者が256で、どちらも中分類25「一般事務従事者」の中にある。
年収の差は38万円、パートの時給差は132円。並べてみると、思ったほど離れていない。
そして、この金額の差は選ぶ基準としてはあまり効かない。効くのは別の3つである。
まず、金額の差がどれくらいかを確定させる
同じ調査の同じ表で並べる
| 項目 | 受付・案内事務員 | 電話応接事務員(コールセンター) |
|---|---|---|
| フルタイムの年収換算 | 約356万円 | 約394万円 |
| パートの1時間当たり所定内給与額 | 1,231円 | 1,363円 |
| フルタイムの平均勤続年数 | 8.6年 | 7.8年 |
| フルタイムの労働者数 | 84,880人 | 179,540人 |
| 所定内実労働時間 | 160時間 | 154時間 |
| 超過実労働時間 | 7時間 | 8時間 |
年収換算は「きまって支給する現金給与額 × 12ヶ月 + 年間賞与」で計算した値である。
コールセンターが38万円高く、拘束時間は月5時間短い。金額だけを見れば、コールセンター側に寄る。
差が大きいのは金額ではなく、人数のほうである
同じ表で目を引くのは労働者数の列だ。フルタイムで2.1倍、短時間労働者を含めた合計では受付16万9,460人に対してコールセンター27万7,270人と、1.6倍の開きがある。
募集の絶対数がこの比に近い形で存在すると考えると、応募先を見つけやすいのはコールセンター側になる。38万円の差より、この差のほうが応募の段階では先に効いてくる。給与そのものの内訳はコールセンターの年収・給料で分解されている。
違い1:働く場所を選べるかどうか
コールセンターは6割が在宅を実施している
日本コンタクトセンター協会(CCAJ)が2025年度に実施したコンタクトセンター企業実態調査(対象109社・回答68社)によると、在宅オペレーションを「既に実施している」企業は、非公開を除く65社中39社で60%に達した。
実施理由の最多は「働き方の多様化のため」で39社中33社(84.6%)。一方、「実施予定はない」と答えた22社では、理由の最多が「セキュリティ上の問題」で18社(81.8%)だった。在宅にできるかどうかは、本人の希望ではなく扱う案件の性質で決まっている。
受付は、窓口に人が立っていることが前提になる
受付側には、これに対応するデータがない。公的統計にも業界統計にも、受付職の在宅比率を示す集計は見当たらない。
理由は業務の構造にある。受付は来訪した人を迎える仕事なので、窓口という場所から離れられない。所定内実労働時間が160時間と事務系で最も長いのも、窓口を空けられないことの裏返しである。
通勤時間や勤務地が応募先を決める制約になっている場合、この違いだけで答えが出る。在宅の実態は在宅コールセンターの始め方で扱っている。
違い2:短時間勤務の枠の広さと、その中身
受付は半分がパート、コールセンターは3分の1
| 区分 | 受付・案内事務員 | 電話応接事務員 |
|---|---|---|
| フルタイムの労働者数 | 84,880人 | 179,540人 |
| パートの労働者数 | 84,580人 | 97,730人 |
| パートの比率 | 49.9% | 35.2% |
| パートの平均年齢 | 50.1歳 | 50.2歳 |
| パートの平均勤続年数 | 6.2年 | 5.7年 |
受付職は労働者の約半分が短時間勤務で、コールセンターは3分の1である。パート枠から入りたい場合、席の割合が高いのは受付側になる。
ただし、パートの収入はコールセンターのほうが高い
| 区分 | 受付・案内事務員 | 電話応接事務員 |
|---|---|---|
| 1時間当たり所定内給与額 | 1,231円 | 1,363円 |
| 月の実労働日数 | 13.7日 | 14.0日 |
| 1日の所定内実労働時間 | 5.7時間 | 5.9時間 |
| 月収換算 | 約9万6,000円 | 約11万3,000円 |
| 年間賞与 | 34,200円 | 20,100円 |
時給で132円、月収換算で約1万6,000円の差がつく。1日の勤務時間と月の日数がどちらもコールセンター側で長いため、時給差以上に月額の差が開く。
一方、年間賞与は受付が3万4,200円、コールセンターが2万100円で、こちらは受付側が上回る。金額そのものは小さいが、賞与の対象として扱われる契約かどうかの差が出ている。
平均年齢はどちらも50歳台前半で、ほとんど変わらない。短時間勤務の枠を学生の短期バイトが回している職種ではないという点も共通している。生活に組み込んで続けている層が、両方の職種で多数を占めている。
枠の広さを取るなら受付、月額を取るならコールセンター。この2つは同時に満たせない。
違い3:仕事が何で評価されるか
コールセンターでは、応対そのものが採点の対象になる
CCAJ調査で生成AIの活用方法を尋ねた項目(活用している55社・複数回答)では、「コミュニケーターの評価(モニタリングの採点)」を挙げた企業が49.1%あった。最多は「応対内容の要約」の74.5%である。
通話は記録され、要約され、採点される。評価の材料が形として残る職種だということになる。
受付では、うまく回った日ほど何も残らない
受付の応対は録音されない。滞りなく回った日に記録は残らず、取り次ぎを一件間違えたときだけ、その一件が記憶に残る。
評価の材料が失敗の側にしか蓄積しないため、面談で実績を説明しづらい。半年前に来客の流れを整理して待ち時間を短くしていても、改善が定着した時点で改善前を覚えている人がいなくなる。
数字で評価されることが負担なら受付側、努力が形として残らないことが負担ならコールセンター側になる。同じ「電話と対面の違い」で語られがちだが、実際に効いてくるのは評価のされ方の差である。
求人の探しやすさは、統計では比べられない
有効求人倍率は2職種を分けていない
厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年3月・全国計・常用/パート含む)で、受付・案内事務員と電話応接事務員はどちらも「一般事務従事者」として集計される。この分類の有効求人倍率は0.37倍で、2職種に分けた値は公表されていない。
つまり「どちらが受かりやすいか」という問いに、統計の側からの答えはない。判断材料になるのは労働者数の差(1.6倍)と、勤務地・勤務形態の条件のほうになる。
選ぶ順序は3つで足りる
働く場所に制約があるか。フルタイムとパートのどちらで入るか。評価が形に残ることを求めるか。この3つを先に決めると、年収差38万円を比べる場面はほとんど来ない。
順序を逆にすると決まらない。金額から入ると38万円と132円の差で迷い続けることになり、その差は勤務地や勤務日数の条件を1つ譲るだけで簡単に逆転する。フルタイムの年収でいえば38万円は約1割にあたるが、通勤時間が片道30分違えば、年間で使う時間のほうが先に効いてくる。
受付側の条件から募集を確認する場合は企業受付・総合受付の求人で勤務形態を指定できる。
よくある質問
受付とコールセンターはどちらが給料が高いですか
フルタイムの年収換算は受付356万円、コールセンター394万円で、38万円の差がある。パートの時給は1,231円と1,363円で132円差。どちらの雇用形態でもコールセンター側が上回る。
電話が苦手でも受付ならできますか
受付にも電話の取次ぎは含まれる。日本標準職業分類の中分類25は「秘書・応接(電話応接を含む)」を範囲に入れており、254と256は同じ中分類にある。違いは電話の比重で、受付は来訪者への対面応対が中心になる。
受付からコールセンターへ移る人はいますか
職種間の異動実績を示す公的統計はない。分かるのは、両職種が同じ中分類に属し、賃金水準も38万円差にとどまるという構造だけである。作業としては、来訪者か通話かという接点の違いを除けば、確認して記録する部分が重なる。
未経験ではどちらが入りやすいですか
労働者数はコールセンターが1.6倍あり、募集の絶対数では有利になる。ただし有効求人倍率は2職種に分けて公表されておらず、比較の裏づけとなる数字はない。
長く続けやすいのはどちらですか
平均勤続はフルタイムで受付8.6年、コールセンター7.8年。パートでは6.2年と5.7年。どちらも受付側がわずかに長いが、差は1年未満である。続けやすさで大きく分かれる2職種ではない。
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出典
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)/短時間労働者 職種別1時間当たり所定内給与額(企業規模計10人以上)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html)
- 一般社団法人日本コンタクトセンター協会「2025年度 コンタクトセンター企業 実態調査」(対象109社・回答68社・回収率62.4%・2025年6月16日〜7月23日実施)(https://ccaj.or.jp/telemarketing/doc/outsourcing_research_2025.pdf)
- 総務省「日本標準職業分類(平成21年12月統計基準設定)」中分類25 一般事務従事者/小分類254 受付・案内事務員/256 電話応接事務員(https://www.e-stat.go.jp/classifications/terms/20/02/254)
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」参考統計表6(令和8年3月・全国計・常用/パート含む)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/114-1.html)
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