コールセンターで病む前に|不調のサインと休職・受診の手順

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結論から書く。病んでいるかどうかを自分の根性で判定しない。公的に示されている目安は2週間である。

厚生労働省が運営する働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」は、寝つきが悪い、食欲がない、やる気が出ないといった症状が2週間以上続く場合は「うつ」が疑われるとして、精神科・心療内科へ早めに相談することを勧めている。

ここで気になる数字がある。同省の令和6年労働安全衛生調査(実態調査)によると、過去1年間にメンタルヘルス不調で連続1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10.2%だった。10事業所に1つである。ところが事業所の規模別に開くと、1,000人以上の事業所では88.2%、10〜29人の事業所では4.2%と、20倍以上の開きが出る。

この差が、病気のなりやすさの差だとは考えにくい。

目次

不調のサインは、気分より先に体と行動へ出る

自分の状態を「気分」で測ると、判断が遅れる。落ち込んでいるかどうかは、落ち込んでいる本人が最も見誤りやすい項目だからだ。

こころの耳が挙げているサイン

こころの耳は、ストレスサインをこころ・体・行動の3つに分けて示している。

出る場所 具体的なサイン
こころ 悲しみ、憂うつ感/不安感、イライラ感、緊張感/無力感、やる気が出ない
食欲がなくなる、やせてきた/寝つきが悪い、朝早く目が覚める/動悸がする、血圧が上がる
行動 消極的になる、周囲との交流をさけるようになる/飲酒、喫煙量がふえる/身だしなみがだらしなくなる

このうち自分で気づきやすいのは体と行動の側である。眠りと食事と身だしなみは、毎日必ず通る場所なので変化が記録に残る。

2週間という区切りの使い方

こころの耳の表現は「以下のような症状が2週間以上続く場合は『うつ』が疑われますので、専門家(精神科、心療内科)に早めに相談することをおすすめします」である。

2週間という区切りは、受診の判断に使いやすい。眠れない日が何日あったかは数えられるからだ。眠れないのが2日か、14日かで、取るべき行動は変わる。つらさの度合いではなく日数で区切ると、自己判断のぶれが小さくなる。

コールセンターの場合、シフトが不規則な現場だと睡眠の変化が勤務のせいに見えやすい。早番と遅番が混ざる週があるなら、シフト表と睡眠の記録を並べて見ておきたい。

「1か月以上の休業」は事業所の10.2%で起きている

不調で長期の休みに入ることが珍しいのかどうか。数字を見ておく。

全国の実測値

令和6年労働安全衛生調査の事業所調査(有効回答8,304事業所・有効回答率59.0%)によると、過去1年間(令和5年11月1日から令和6年10月31日)にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者、または退職した労働者がいた事業所の割合は12.8%だった。

内訳は、連続1か月以上休業した労働者がいた事業所が10.2%、退職した労働者がいた事業所が6.2%である。労働者側で見ると、連続1か月以上休業した人の割合は0.5%、退職した人の割合は0.2%だった。

規模別の開きは、拾う仕組みの差である

同じ調査を事業所規模別に見ると、連続1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合はこうなる。

事業所規模 1か月以上の休業者がいた事業所の割合
1,000人以上 88.2%
300〜499人 70.7%
100〜299人 52.2%
50〜99人 24.8%
30〜49人 10.9%
10〜29人 4.2%

人数が多ければ該当者が出る確率も上がるので、この並びには当然の部分がある。それでも4.2%と88.2%の差を全部それで説明するのは無理がある。

同じ調査で、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は全体で63.2%、労働者50人以上の事業所で94.3%、10〜29人の事業所で55.3%だった。制度がある側で数字が出て、無い側で出ていないという形になっている。

コールセンターは1つの拠点に数十人から数百人が入る職場である。統計上は、不調が制度として拾われる側に置かれていることが多い。

相談できる人は94.6%いるのに、相談したのは74.7%

制度の話の前に、その手前で止まる人が多いという事実を挟んでおきたい。

相談相手の内訳

同じ調査の個人調査(有効回答8,596人・有効回答率46.4%)によると、仕事や職業生活でのストレスについて相談できる人がいる労働者の割合は94.6%である。ほぼ全員が、相談先そのものは持っている。

一方、相談できる人がいる労働者のうち、実際に相談したことがある人の割合は74.7%だった。約4分の1は、相手がいるのに使っていない。

実際に相談した相手(複数回答)は「家族・友人」が62.1%で最多、次いで「上司」が58.9%である。

職場の外にも窓口がある

上司に言いにくい場合、外部の窓口がある。厚生労働省は「こころの耳」でメールと電話の相談窓口を案内しており、都道府県ごとに設置された産業保健総合支援センターでも、メンタルヘルス対策の専門スタッフによる相談を無料で受けられる。

家族・友人が最多だという結果を、そのまま「まず身近な人に話せばいい」と読むこともできる。ただ、休職や受診の手続きに進むには、医師か会社の窓口を経由する必要が出てくる。話を聞いてもらう相手と、手続きを動かせる相手は別である。ここを分けておくと、相談したのに何も変わらないという展開を避けやすい。

ストレスチェックには、受けたあとに使える手続きがある

年に1度、質問票に答えて結果が返ってくるだけの制度だと思われがちである。実際には、結果を受け取ったあとに労働者の側から動かせる手続きがついている。

50人以上の事業場では実施が義務

ストレスチェックは2015年から労働安全衛生法で実施が義務づけられている。対象は労働者50人以上の事業場で、業種を問わない。

令和6年労働安全衛生調査では、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の取組内容として「ストレスチェックの実施」が65.3%で最多だった。労働者50人以上の事業所に限ると89.8%が実施している。

結果は本人の同意なく会社へ渡らない

制度上、検査を行った医師等が、労働者の同意を得ないで検査の結果を事業者に提供することは禁止されている。

答えた内容がそのまま上司に伝わる仕組みではない。ここを誤解して正直に答えられないと、制度そのものが機能しなくなる。

申し出れば、医師の面接指導が事業者の義務になる

検査の結果、一定の要件に該当する労働者から申出があった場合、医師による面接指導を実施することが事業者の義務になる。そして申出をしたことを理由とする不利益な取扱いは禁止されている

面接指導のあと、事業者は医師の意見を聴き、必要に応じて就業上の措置を取る。措置の例として示されているのは、労働時間の短縮や深夜業の回数の減少である。ここでも不利益取扱いは禁じられている。

つまり、辞めるか耐えるかの二択になる前に、勤務条件のほうを動かす手続きが法律の中にある。使うには申出が要る。

50人未満の事業場も令和10年4月から義務化される

2025年の労働安全衛生法の改正により、これまで努力義務だった労働者数50人未満の事業場にも、ストレスチェックの実施が義務化された。施行は令和10年4月1日である。

小規模なセンターや、企業内の小さな窓口部署で働いている場合も、制度の外に置かれる期間には終わりが決まっている。きつさの正体そのものを職場側の要因から切り分ける手順はコールセンターがきつい・辞めたいときの切り分けで扱っている。

受診の目安と、診断書が起点になること

ここから先の手続きは、すべて医師の判断を起点に動く。順番を逆にすると使えない制度がある。

何科にかかるか

こころの耳が挙げているのは精神科と心療内科である。産業医が選任されている事業場なら、産業医に相談してから受診先を決める道もある。

受診の際は、いつから、どの症状が、何日続いているかを持っていくと話が早い。上のサインの表を使って、日数を数えたメモにしておけばいい。

診断書がないと休職の話が始まらない

休職は、労働者が「休みます」と言って成立する手続きではない。厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、第1ステップが労働者からの病気休業診断書の提出と定められている。

診断書が出て初めて、会社側の対応が始まる。逆に言えば、限界まで我慢してから休もうとすると、受診の予約が取れるまでの数日から数週間を、何の制度も動いていない状態で過ごすことになる。

厚生労働省がストレスチェック制度の資料で示している数字によれば、メンタルヘルス不調による病休期間は平均で約3か月である。3か月分の生活と手続きを、不調が最も重い時期に組み立てることになる。受診を早めることの実利は、ここにある。

休職の実務は5つのステップで決まっている

休職と復職の流れは、会社ごとにばらばらではない。厚生労働省の手引きが標準的な進め方を示しており、多くの企業がこれに沿って就業規則を作っている。

手引きが定める流れ

ステップ 内容
第1 病気休業開始及び休業中のケア(診断書の提出、休業中の連絡と安心感の醸成)
第2 主治医による職場復帰可能の判断(本人の意思表示と復帰可能の診断書)
第3 職場復帰の可否判断及び職場復帰支援プランの作成
第4 最終的な職場復帰の決定(試し出勤等を含む)
第5 職場復帰後のフォローアップ

第2と第3が分かれている点を見ておきたい。主治医が復帰可能と判断しても、それだけで復帰が決まるわけではない。会社側が情報を集めて可否を判断し、復帰後の働き方を決めるプランを作る段階がある。

再発率という現実的な数字

同省の資料には、メンタルヘルス不調で休業した場合、復職後に再び病休になる割合が約半数という記述がある。

この数字は、復帰の判断を急がないほうがいいという方向を指している。第4ステップに試し出勤が置かれているのも同じ理由だろう。復帰は日付ではなく、業務量の段階で決めるものと考えたほうが、この数字とは整合する。

コールセンターの場合、復帰後の業務量は件数と後処理時間で調整できる。プランを作る段階で、1日の目標件数をどう戻していくかまで話しておくと、第5ステップが空文にならない。

休職中のお金は傷病手当金で埋める

休職を選べるかどうかは、実際には生活費の問題として現れる。健康保険には、この期間を埋める給付がある。

支給される4つの条件

全国健康保険協会(協会けんぽ)によると、傷病手当金が支給されるのは次の4つを満たす場合である。

  • 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
  • 仕事に就くことができない状態であること
  • 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
  • 休業した期間について給与の支払いがないこと

3番目が「待期」と呼ばれる部分で、休んだ日が連続して3日間なければ成立しない。2日休んで3日目に出勤すると、待期は成立せずにやり直しになる。無理に1日だけ出るという判断が、給付の側では不利に働く。

金額と期間

1日あたりの支給額は、支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均を30で割り、その3分の2にあたる額である。協会けんぽの例では、標準報酬月額の平均が17万円の場合、17万円÷30≒5,670円、その3分の2で1日3,780円と計算されている。

支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月である。給与の支払いがあっても傷病手当金の額より少ない場合は、その差額が支給される。

平均病休期間の約3か月をこの給付で埋めると、手取りはおおむね従前の3分の2になる。生活が回るかどうかを、休む前に一度計算しておきたい。

辞める前に、配置を変えるという選択肢がある

休職と退職のあいだに、働き方を変える段があることを見ておきたい。

チャネルと案件は変えられる

日本コンタクトセンター協会(CCAJ)の2025年度コンタクトセンター企業実態調査によると、対応チャネル別ではeメールに対応している企業が80.9%、有人チャットが55.9%ある。業務量の増減では、メールやチャット等のテキスト業務が「増加した」と答えた企業が28社で最多だった。

在宅オペレーションを「既に実施している」企業は、非公開を除く65社中39社で60%に達している。通話そのものが負荷の中心なら、テキスト対応や在宅の枠へ移る余地は業界内にある。在宅勤務の実際は在宅コールセンターの始め方にまとめた。

就業上の措置として動かせるもの

前述の通り、医師の面接指導のあとに事業者が取る就業上の措置には、労働時間の短縮や深夜業の回数の減少が挙げられている。

コールセンターで深夜シフトに入っている場合、この項目はそのまま当てはまる。自己都合の希望として出すのと、医師の意見を経て措置として出すのとでは、通り方が変わる。

電話以外の枠を先に見ておきたい場合はカスタマーサポート(メール・チャット対応)の仕事内容が近い。在宅前提の募集条件は在宅・リモートのコールセンター求人特集で確認できる。

よくある質問

コールセンターで「病む」のは自分が弱いからですか

令和6年労働安全衛生調査では、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者がいた事業所は10.2%、1,000人以上の事業所では88.2%だった。規模の大きい職場ほど該当者が出ている。個人の資質ではなく、人数と制度の有無で数字が動いている。

受診するかどうかの基準はありますか

こころの耳は、寝つきが悪い、食欲がない、やる気が出ないといった症状が2週間以上続く場合に、精神科・心療内科への早めの相談を勧めている。つらさの強さではなく、続いた日数で区切ると判断しやすい。

ストレスチェックで正直に答えると会社に伝わりますか

検査を行った医師等が、労働者の同意を得ないで結果を事業者に提供することは禁止されている。ただし面接指導を申し出た場合は、その申出を通じて会社側が把握することになる。申出を理由とする不利益な取扱いは禁止されている。

休職するとお金はどうなりますか

健康保険の傷病手当金が使える。連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったことなど4つの条件を満たす場合に、標準報酬月額の平均を30で割った額の3分の2が1日あたり支給される。期間は支給開始日から通算1年6か月である。

復職できるか不安です

厚生労働省の職場復帰支援の手引きでは、主治医の復帰可能の判断(第2ステップ)と、会社側の可否判断およびプラン作成(第3ステップ)が分けられている。試し出勤を挟む段もある。復職後に再び病休になる割合が約半数という数字がある以上、日付を先に決めるより、戻す業務量の段階を決めるほうが現実的である。

次に読む

出典

  • 厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」事業所調査(有効回答8,304事業所・有効回答率59.0%)/個人調査(有効回答8,596人・有効回答率46.4%) https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r06-46-50.html
  • 厚生労働省「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」ストレスへの気づき https://kokoro.mhlw.go.jp/nowhow/nh003/
  • 厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」(労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度/令和10年4月1日から労働者数50人未満の事業場にも義務化) https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
  • 厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(平成16年10月・改訂平成21年3月) https://www.mhlw.go.jp/content/000561013.pdf
  • 全国健康保険協会「傷病手当金」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
  • 一般社団法人日本コンタクトセンター協会「2025年度 コンタクトセンター企業 実態調査」(対象109社・回答68社・回収率62.4%) https://ccaj.or.jp/telemarketing/doc/outsourcing_research_2025.pdf

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この記事を書いた人

受付・コールセンター歴10年の編集者。企業受付・インバウンド・SV(管理者)・採用担当を経験し、現場目線で「受付キャリアナビ」編集部の記事執筆・編集を担当。

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