看護師からコールセンターへ|年収520万と394万の差の中身

看護師の経験を活かす医療コールセンターの仕事|仕事内容・働き方・求人の探し方

結論から書く。看護師がコールセンターのオペレーターに移ると、年収は平均で126万円下がる。厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査で、看護師の年収換算は約520万円、コールセンターのオペレーターが分類される「電話応接事務員」は約394万円である。

この126万円を「夜勤手当を手放した分」と読むと、判断を誤る。同じ調査から夜勤に紐づく手当だけを取り出して差額を計算すると、126万円の2割に届かない。

労働時間も、思ったほど動かない。看護師は月161時間、電話応接事務員は162時間。時間が減った分だけ収入が減る、という交換にはなっていない。

移った人が実際に手放しているものは、統計の内訳を開くと形が変わる。

目次

年収差126万円の正体は、夜勤手当ではなく基本給と賞与にある

まず4つの職種を同じ条件で並べる。いずれも令和6年賃金構造基本統計調査の一般労働者・企業規模計(10人以上)・男女計の数値である。

職種 所定内給与額 年間賞与 年収換算 平均年齢 勤続年数 労働者数
保健師 313,300円 999,200円 約521万円 38.7歳 6.9年 21,660人
看護師 329,600円 835,000円 約520万円 41.2歳 9.4年 904,810人
准看護師 273,700円 640,100円 約417万円 51.5歳 13.6年 139,160人
電話応接事務員 277,700円 393,700円 約394万円 43.6歳 7.8年 179,540人

年収換算は「きまって支給する現金給与額 × 12ヶ月 + 年間賞与」で計算した。表に載せた所定内給与額は、この現金給与額から超過労働給与額を差し引いた額である。

126万円を3つに割る

看護師と電話応接事務員の差を、賃金の項目ごとに分解する。

項目 看護師 電話応接事務員 年額の差 126万円に占める割合
所定内給与額(月) 329,600円 277,700円 62.3万円 49.4%
超過労働給与額(月) 33,900円 17,500円 19.7万円 15.6%
年間賞与 835,000円 393,700円 44.1万円 35.0%

超過労働給与額は、統計に独立の項目として載っているわけではない。きまって支給する現金給与額から所定内給与額を引いて求めた。看護師は月33,900円、電話応接事務員は月17,500円になる。

夜勤に関わる手当が入るのは、この超過労働給与額である。それが差の15.6%しかない。半分を占めているのは所定内給与額、つまり夜勤とは無関係に毎月決まって支払われる部分だった。

超過労働給与額に何が含まれるか

賃金構造基本統計調査の用語の定義によると、超過労働給与額は次の5つで構成される。

  • 時間外勤務手当:所定労働日の所定労働時間外の労働に対する給与
  • 深夜勤務手当:深夜の勤務に対する給与
  • 休日出勤手当:所定休日の勤務に対する給与
  • 宿日直手当:本来の職務外としての宿日直勤務に対する給与
  • 交替手当:臨時に交替制勤務の早番あるいは後番に対して支給される給与

看護師の夜勤で発生する深夜勤務手当と交替手当は、この定義に照らせば超過労働給与額に入る。それが月33,900円で、電話応接事務員の17,500円との差は月16,400円。年に直して19.7万円である。

夜勤をやめる決断で失う金額を先に見積もっておきたいなら、この19.7万円が上限の目安になる。残りの106万円は、夜勤の有無ではなく、職種そのものの賃金水準と賞与の厚みの差である。転職後に夜勤相当の負荷を引き受けたとしても、この106万円は戻ってこない。

労働時間はほぼ同じ。変わるのは時間の位置だけ

年収が126万円下がるなら、その分だけ働く時間が短くなると考えるのが自然だろう。統計はそう答えない。

職種 所定内実労働時間 超過実労働時間 合計 所定内給与の時給換算
保健師 154時間 10時間 164時間 2,034円
看護師 155時間 6時間 161時間 2,126円
准看護師 159時間 4時間 163時間 1,721円
電話応接事務員 154時間 8時間 162時間 1,803円

看護師161時間、電話応接事務員162時間。差は1時間である。時給換算では2,126円と1,803円で、323円の開きがある。

つまりこの転職は「働く時間を減らして収入を落とす」交換ではない。同じ時間だけ働いて、時間あたりの単価を323円下げる交換にあたる。夜勤を外すことで得られるものは、時間の量ではなく、時間の位置である。

「夜勤なし」は看護師の世界では6.4%しかない

日本看護協会が実施した2024年病院看護実態調査は、全国の病院8,079施設を対象に3,417施設が回答したもので、一般病棟の夜勤状況を集計している(夜勤状況の集計対象は n=2,035)。

2024年9月の1ヶ月間で、夜勤時間が0時間だった看護職員の割合は6.4%だった。1時間から16時間未満の層が8.8%。残りの8割超は、月16時間以上の夜勤を組み込まれている。

この数字は、病院の中で夜勤を外す選択肢がどれだけ狭いかを示している。制度として夜勤専従や短時間勤務正職員は用意されていて、正規雇用の看護職員に短時間勤務正職員を導入している病院は31.9%ある。それでも実際に夜勤ゼロで働けている人は6.4%にとどまる。

夜勤を外した理由の1位は「子どもの世話」

同調査で「夜勤時間が0時間の看護職員がいた」と答えた病院に、その理由を尋ねた結果がある。最も多かったのは「子どもの世話」で74.8%、次いで「身体的疾患による健康上の理由」が33.0%だった。

夜勤を外す理由は、仕事への意欲の問題ではなく生活側の事情に寄っている。そしてその事情は、時間の量ではなく時間帯によって作られる。深夜に家を空けられるかどうかは、月に何時間働くかとは別の問題である。

126万円の差を高いと見るか安いと見るかは、ここで決まる。夜間を空けられない事情がある人にとって、この転職は年収の交換ではなく、勤務時間帯の交換になる。

准看護師なら、所定内給与はむしろコールセンターのほうが高い

看護師の数字だけで判断すると、准看護師の状況を見落とす。

准看護師の年収換算は約417万円で、電話応接事務員との差は23万円しかない。看護師の126万円と比べると5分の1以下である。

月額では逆転している

内訳を開くと、順序が入れ替わる箇所がある。

項目 准看護師 電話応接事務員
所定内給与額(月) 273,700円 277,700円 電話応接が4,000円高い
所定内実労働時間 159時間 154時間 准看護師が5時間長い
所定内給与の時給換算 1,721円 1,803円 電話応接が82円高い
年間賞与 640,100円 393,700円 准看護師が24.6万円高い

毎月決まって支払われる部分では、電話応接事務員のほうが4,000円高い。労働時間は准看護師のほうが5時間長いので、時給換算の差は82円まで開く。

では23万円の差はどこから来ているのか。ほぼ全額が賞与である。准看護師の年間賞与640,100円に対し、電話応接事務員は393,700円。この24.6万円の差が、月額の逆転を打ち消して年収の順序を決めている。

准看護師の平均年齢は51.5歳、勤続13.6年。長く同じ職場に残った人の賞与が平均を押し上げている構図が読み取れる。勤続の短い層では、この23万円の差はさらに縮む可能性がある。

保健師は逆に超過実労働時間が長い

保健師の年収換算は約521万円で、看護師とほぼ同じ水準にある。ただし労働時間の形が違う。

超過実労働時間は10時間で、4職種の中で最も長い。超過労働給与額は月37,800円と、看護師の33,900円を上回る。所定内給与額は313,300円で看護師より16,300円低いのに、年間賞与999,200円が差を埋めて年収を並べている。

平均年齢38.7歳・勤続6.9年と、看護師より若く勤続も短い。労働者数は21,660人で、看護師の904,810人に対して2.4%にすぎない。母数が小さいぶん、平均値が個別の職場の事情に振られやすい数字でもある。

医療分野のコールセンターは、どこにどれだけあるか

条件の良し悪しを検討する前に、そもそも席がなければ移れない。医療の知識を使える電話の仕事は、どこにどれだけあるのか。

日本コンタクトセンター協会(CCAJ)が2025年度に実施したコンタクトセンター企業実態調査は、コールセンターの受託企業109社を対象に68社が回答したものである。この調査に、受託先の業種を尋ねた項目がある。

68社のうち27社が医療・福祉の案件を持つ

クライアントの業種(複数回答)で「医療・福祉」を挙げたのは27社、68社の39.7%だった。最多はサービス業50社(73.5%)、次いで通信販売業44社(64.7%)、金融・保険業43社(63.2%)と続く。

医療・福祉は上位ではない。ただし2023年度25社、2024年度23社、2025年度27社と、母数の違いを差し引いても大きくは減っていない。受託企業の4割が医療・福祉の案件を扱っているなら、席そのものは各地に散っていることになる。

受託業務の中身は受信に偏っている

同調査で受託業務の内容を尋ねた結果(複数回答)では、カスタマーサポートが64社(94.1%)、問い合わせ受付が61社(89.7%)、受注センターが47社(69.1%)と、受信系が上位を占めた。発信系は商品勧誘等の37社(54.4%)が最高である。

医療分野で想定される電話の仕事も、この分布から大きくは外れない。かかってきた電話を受けて、症状や制度の質問に答え、記録を残す形が中心になる。かける側の仕事を探しているなら、母数が半分以下になることを前提に探すことになる。受信と発信で日々の負荷がどう変わるかはインバウンドとアウトバウンドの違いで整理した。

看護師資格が要る電話の仕事は、統計上どちらに入るか決まらない

ここまで394万円という数字を使ってきたが、この数字が看護師免許を持つ人の求人に当てはまるとは限らない。

賃金構造基本統計調査の職種分類の原則には、「一人の労働者の行っている仕事が二つの役職又は二つ以上の職種にまたがる場合には、仕事の内容と責任の程度からみて重要な役職又は職種へ分類する」とある。看護師免許を要件にする電話相談の業務は、この原則のもとで「看護師」に入ることも「電話応接事務員」に入ることもありうる。

つまり、看護師資格を活かす電話の仕事の年収を、統計から一意に引き当てる方法はない。394万円という数字は、資格を問わないオペレーター職を含む平均であり、免許必須の求人の相場ではない。免許を要件にしている求人は、この平均より上に置かれている可能性がある。求人票の資格要件と給与額を突き合わせて、個別に判断するしかない領域である。

夜勤がなくなっても、対人の負荷はなくならない

夜勤は消える。ただし、人を相手にして感情をぶつけられる場面まで消えるわけではない。

厚生労働省の令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査は、全国の20〜64歳の労働者8,000人に回答を得たものである。この調査に、顧客と接する頻度別の集計がある。

毎日顧客と接する層では17.4%が経験している

過去3年間に顧客等からの著しい迷惑行為を受けた経験を、接客頻度で割ると次のようになった。

顧客と接する頻度 経験した割合
勤務日はほぼ毎日接している 17.4%
週に2、3日程度接している 14.3%
週に1日程度接している 10.7%
月に1日程度接している 7.5%
ほとんど接することがない 5.3%

毎日接する層と、ほとんど接しない層で3倍以上の開きがある。コールセンターのオペレーターは、勤務日のほぼ全時間を顧客との会話に使う職種にあたる。

同調査で業種別に見ると、医療・福祉は15.1%で、卸売業・小売業の16.0%、宿泊業・飲食サービス業の16.0%と近い水準にある。病院からコールセンターへ移ることで、この負荷が下がる根拠は統計にない。

ただし、受け手側の環境には制度上の変化が入る。改正労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメントの防止措置は2026年10月1日から事業主の義務になる。会社が方針を明確化し、相談窓口を設け、悪質な事案への対処方針を定めることが求められる。個人の技術で耐える問題から、会社の体制で処理する問題へ位置づけが移る途中にある。具体的な対応の手順はコールセンターのクレーム対応にまとめている。

求人票のどこを見れば、平均より上か下かがわかるか

ここまでの数字は全国平均である。目の前の求人が平均より上か下かを判断するには、固定給・賞与・在宅・昇給ルートの4点を見れば足りる。

固定給を277,700円と比べる

まず、きまって支給する現金給与額の平均は295,200円、そのうち所定内給与額が277,700円である。月給制の求人なら、残業代を含まない固定部分がこの277,700円をどう上回るかを見る。

時給制なら、所定内給与の時給換算1,803円が基準になる。短時間労働者の平均は時給1,363円だが、これは平均年齢50.2歳・勤続5.7年・月14.0日勤務という層の数字であり、フルタイム勤務の比較対象にはならない。

賞与の月数を必ず確認する

看護師との差の35.0%が賞与だった。電話応接事務員の年間賞与393,700円は、所定内給与額に対して約1.4ヶ月分にあたる。

求人票に「賞与あり」とだけ書かれていて月数の記載がない場合、この1.4ヶ月を下回る可能性を見込んでおきたい。月給28万円で賞与なしなら年収336万円、月給26万円で賞与2ヶ月なら年収364万円。月給の額面だけで並べると順序が入れ替わる

在宅とSVのルートを確認する

CCAJ調査では、在宅オペレーションを「既に実施している」企業が非公開を除く65社中39社で60%に達した。実施理由の最多は「働き方の多様化のため」で39社中33社(84.6%)である。夜勤を外す目的で移るなら、在宅の可否は勤務時間帯の柔軟さに直結する条件になる。在宅勤務の実態は在宅コールセンターの始め方で扱っている。

昇給の道筋も見ておきたい。同調査で職種別の過不足を答えた66社のうち、スーパーバイザーの不足感を挙げたのは58社(87.9%)、コミュニケーターは48社(72.7%)だった。SV1人あたりが受け持つコミュニケーター数は平均8.93人で、2023年度8.54人、2024年度8.83人と3年連続で増えている。管理側の人手が現場の増員に追いついていない状態が続いており、そこに上がれるかどうかが年収の変数になる。条件から絞り込むならカスタマーサポート(受信)の求人を勤務時間や雇用形態で並べ替えるところから始まる。

病院の受付という選択肢も残っている

夜勤を外すことだけが目的なら、電話の仕事に限る必要はない。同じ調査で受付・案内事務員の年収換算は約356万円、所定内実労働時間160時間、超過実労働時間7時間である。電話応接事務員より年収は38万円低いが、勤務先が医療機関なら看護の知識がそのまま使える場面は増える。医療機関の受付の仕事の中身はクリニック・病院受付の仕事内容で整理している。

よくある質問

看護師からコールセンターに移ると年収はいくら下がりますか

令和6年賃金構造基本統計調査の平均値で比べると、看護師約520万円に対して電話応接事務員は約394万円で、差は126万円である。ただしこの内訳のうち夜勤に紐づく超過労働給与額の差は19.7万円で、全体の15.6%にとどまる。残りは所定内給与額と賞与の水準差である。

准看護師の場合も同じくらい下がりますか

准看護師の年収換算は約417万円で、電話応接事務員との差は23万円である。毎月の所定内給与額では准看護師273,700円に対して電話応接事務員277,700円と逆転しており、差のほぼ全額が年間賞与から生じている。

夜勤がなくなる分、労働時間は短くなりますか

短くならない。看護師の所定内実労働時間155時間・超過実労働時間6時間の合計161時間に対し、電話応接事務員は154時間と8時間で合計162時間である。変わるのは時間の量ではなく、その時間が一日のどこに置かれるかである。

看護師の資格は給料に反映されますか

賃金構造基本統計調査の394万円は、資格を問わないオペレーター職を含む平均値である。職種分類の原則では、仕事が複数の職種にまたがる場合は内容と責任の程度で分類するため、免許必須の電話相談業務が統計上どちらに入るかは一意に決まらない。求人票の資格要件と給与額を個別に突き合わせて判断する領域になる。

医療の知識を使える電話の仕事はどれくらいありますか

CCAJの2025年度調査では、回答した68社のうち27社(39.7%)が医療・福祉分野のクライアントを持つと答えている。受託業務はカスタマーサポート64社(94.1%)、問い合わせ受付61社(89.7%)と受信系が中心で、かかってきた電話を受ける形の仕事が多数を占める。

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出典

  • 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計・企業規模計10人以上)/主な用語の定義 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html
  • 公益社団法人日本看護協会「2024年 病院看護実態調査」(対象:全国の病院8,079施設・有効回収数3,417施設・有効回収率42.3%・2024年10月1日〜11月15日実施) https://www.nurse.or.jp/research2024.html
  • 一般社団法人日本コンタクトセンター協会「2025年度 コンタクトセンター企業 実態調査」(対象109社・回答68社・回収率62.4%・2025年6月16日〜7月23日実施) https://ccaj.or.jp/telemarketing/doc/outsourcing_research_2025.pdf
  • 厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」(労働者等調査 n=8,000・2024年1月11日〜29日実施/企業調査 有効回答7,780件・回答率31.1%) https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001259093.pdf
  • 厚生労働省「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます! カスタマーハラスメント対策の義務化(改正労働施策総合推進法・指針の内容)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662576.pdf

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この記事を書いた人

受付・コールセンター歴10年の編集者。企業受付・インバウンド・SV(管理者)・採用担当を経験し、現場目線で「受付キャリアナビ」編集部の記事執筆・編集を担当。

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