結論から書く。携帯・通信キャリアのコールセンターの仕事は、料金プランの照会と変更、MNPを含む契約手続きの受付、そして端末とネットワークの不具合の切り分けである。
ただし「携帯電話の問い合わせ窓口」という説明では、この仕事の性質が伝わらない。
他業種のセンターと違う点が2つある。ひとつは、覚える対象が料金制度と通信技術の両側にまたがること。もうひとつは、電話をかけてくる人が抱えている問題の多くが、電話の外で発生していることである。総務省の調査では、携帯電話サービスの苦情相談のうちコールセンターで発生したものは2.4%しかない。残りはほぼ店舗で起きている。
コールセンターという仕事の全体像はコールセンターの仕事内容に譲り、ここでは携帯・通信に固有の事情を扱う。
契約数2億2,775万を、世代とブランドが分けている
まず、応対の前提になる市場の形を押さえておきたい。
総務省が2025年12月26日に公表した「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データ」(令和7年度第2四半期・2025年9月末時点)によると、移動系通信の契約数は2億2,775万で、前年同期比4.5%の増加だった。人口を大きく超える契約数があり、1人が複数回線を持つ状態が常態化している。
LTEがまだ携帯契約の47.5%を占めている
同じ資料の内訳を見ると、5世代携帯電話(5G)の契約数は1億1,909万で前年同期比16.4%の増加、3.9〜4世代携帯電話(LTE)は1億1,112万で3.8%の減少だった(いずれも単純合算)。LTEは携帯電話の契約数の47.5%を占めている。
ネットワークの世代が2つ、ほぼ半分ずつ併存している。この状態が応対にどう効くかというと、「電波が入らない」という同じ一言に対して、確認する項目が変わる。相手の端末が5G対応かどうか、契約しているプランがどの世代を前提にしているか、その組み合わせで原因の候補が入れ替わるからだ。
移行の途中にある市場では、新旧の仕様を両方覚えることになる。片方だけ覚えれば済む段階は、まだ来ていない。
MVNOが17.9%、事業者数は2,000を超える
もうひとつの分岐がブランドである。
| 事業者区分 | 移動系通信の契約数シェア |
|---|---|
| NTTドコモ | 33.3% |
| KDDIグループ | 26.3% |
| ソフトバンク | 19.2% |
| 楽天モバイル | 3.4% |
| MVNO | 17.9% |
MVNOサービスの契約数は4,066万で、前年同期比19.7%の増加である。事業者数は一次MVNOが770、二次以降のMVNOが1,232に達する。
この数字が意味するのは、同じ回線設備を使っていても、契約の相手先と問い合わせ窓口が別々に存在するということである。自分がどのブランドと契約しているかを正確に言えない人が電話をかけてくる場面は、この構造から生まれる。応対の最初に契約の所在を確かめる工程が入るのは、そのためだ。
同じ工程は、小売の自由化で契約先が分かれた電力・ガスのコールセンターの仕事にも入っている。設備を持つ会社と契約先の会社が一致しない業種に共通する前提だと考えてよい。
苦情の上位3つは、電波でも故障でもなく契約の中身
では、実際にどんな問い合わせが多いのか。総務省が2026年2月にまとめた「電気通信事業分野における消費者保護の取組について」に、内訳が載っている。
心当たりのない請求が25.7%
同資料の2024年度調査によると、MNOサービス(移動系通信の大手事業者)に関する苦情相談2,493件の類型は次の順だった。
| 苦情相談の類型 | 割合 |
|---|---|
| 通信料金の支払い(心当たりのない請求等) | 25.7% |
| 解約の条件・方法 | 22.0% |
| 勧められて新規契約又は事業者変更 | 21.1% |
上位3つがすべて契約の理解に関するもので、通信品質や端末の故障は入っていない。総務省自身も、通信サービスと一体で契約されるオプションが「その要因となっている可能性がある」と分析している。
この構成は、業務で求められる能力の順序を示している。技術的な知識より先に、契約の構造を口頭で組み立て直す力が要る。請求額の内訳を、基本料、通話料、オプション、端末の割賦残債、割引の適用条件へ分解して、相手が納得できる順に並べ直す作業が応対の中心にある。
「もっと安くできませんか」に応じられない理由は法令にある
料金の話には、オペレーターの裁量が及ばない領域がある。
総務省の「電気通信事業法第27条の3等の運用に関するガイドライン」は、端末の購入や新規契約を条件とする利益の提供に上限を設けている。上限額は4万円(税抜)で、端末の対照価格が2万円超8万円以下の場合は、対照価格の5割に相当する額か2万円のいずれか高い額となる。ミリ波対応端末については当分の間5万5千円(税抜)とされている。
値引きの幅が制度で決まっている以上、交渉の余地は最初からない。ここで必要になるのは、断る技術ではなく、なぜその額なのかを説明する材料である。制度を知らずに応対すると、断り方が個人の感じの悪さとして受け取られる。
MNPは経路が2つあり、どこで止まったかで応対が変わる
契約手続きのうち、電話に乗りやすいのがMNP(番号ポータビリティ)である。
総務省の制度説明によると、MNPには2つの方式がある。従来のツーストップ方式では、契約中の事業者からMNP予約番号を取得し、それを持って新しい事業者に申し込む。2023年5月24日に始まったワンストップ方式では、新しい事業者のウェブサイトで申し込み、その画面から契約中の事業者にログインして確認情報を入力すれば、予約番号なしで切り替えが完了する。
ワンストップ方式はウェブ上の手続きに限られる
ここが電話業務に効いてくる。ワンストップ方式はウェブサイト上で完結する経路であり、店舗や電話で手続きする場合は従来のツーストップ方式になる。
つまり電話をかけてくるのは、ウェブの経路を使わない人か、使ったが途中で止まった人である。応対は「どこまで進んだか」の特定から始まることになる。手続き全体を頭から説明するのではなく、相手の状態に対応する残りの手順だけを渡す形になる。
解約の説明は3つの残りものを含む
MNPと解約は、番号を持ち出すかどうかの違いはあっても、契約を終えるという点で重なる。ここで苦情類型の2位「解約の条件・方法」22.0%が効いてくる。
解約の電話で説明する対象は、たいてい3つある。端末の割賦残債、通信契約とは別に申し込まれているオプション、そして解約に伴う条件である。総務省の資料は、オプションの解約が通信サービスの解約とは別の手続きになるため失念されやすいと指摘している。
引き止めが業務の中心にあるかのように語られることがあるが、苦情の中身を見る限り、実際に不足しているのは説明のほうである。手続きを止めることではなく、残っているものを漏れなく数えることが応対の仕事になる。
苦情の約88%は店舗で起きている
もう一段、視野を広げておきたい。苦情がどこで発生しているかという統計がある。
総務省の同じ2024年度調査は、MNOサービスの苦情相談2,493件について、発生したチャネルまたは応対場所を集計している(不明・その他を除く)。
- 店舗(その他)66.5%
- 店舗(キャリアショップ)11.4%
- 店舗(量販店)10.0%
- オンライン契約4.0%
- 電話勧誘3.8%
- コールセンター2.4%
店舗の3種を合わせると約88%になる。コールセンターは2.4%で、発生源としては最小の部類である。この分布が示すのは、電話窓口が問題を作っているのではなく、別の場所で起きた契約の後始末を受け取る位置にいるということだ。契約時の説明が届いていない状態から会話が始まるため、応対はまず事実の再構成から入ることになる。店舗側で何が起きているかは携帯ショップ・家電量販店の受付・接客の仕事内容で扱っている。
高齢の顧客が、利用比率より多く現れる
年代の偏りも記録されている。同資料は、携帯電話の利用動向における年代比率と、苦情相談における年代比率を並べている(2024年度)。
| 年代 | 利用動向での比率 | MNOの苦情相談での比率 |
|---|---|---|
| 20代〜50代 | 63.6% | 50.1% |
| 60代 | 14.9% | 16.9% |
| 70代 | 14.2% | 21.8% |
| 80代以上 | 7.3% | 10.6% |
70代は利用の14.2%に対して苦情相談では21.8%、80代以上は7.3%に対して10.6%を占める。20代から50代はその逆で、利用63.6%に対し苦情は50.1%だった。
この差は、応対で使う言葉の選び方に直結する。専門用語を減らし、確認を細かく挟み、一度に伝える情報量を絞る。技術の知識があっても、それを相手の語彙に落とせなければ通話は終わらない。この職種で最初に伸びるのは、通信の知識ではなく説明の分解能である。
覚える範囲は広いが、求人の母数も多い
働き口としての見通しはどうか。業界側の統計から確かめられる。
日本コンタクトセンター協会(CCAJ)が2025年度に実施したコンタクトセンター企業実態調査は、コールセンターの受託会社109社を対象に68社が回答したものである。この調査でクライアントの業種を尋ねた項目では、通信業を挙げた企業が38社あった。回答68社の55.9%にあたる。
受託会社の半数以上が通信業の案件を持っている。求人として目にする機会が多いのは、この構成の反映である。
技術系の窓口は別に立っていることが多い
同じ携帯・通信の案件でも、料金と契約を扱う窓口と、端末やネットワークの不具合を扱う窓口は分かれていることがある。後者はテクニカルサポートに分類され、必要な知識の方向が変わる。応募先がどちらなのかは、求人票の業務内容を読めば見当がつく。技術寄りの窓口の中身はテクニカルサポート・ヘルプデスクの仕事にまとめている。
在宅にできるかは案件の条件で決まる
CCAJ調査で在宅オペレーションの実施状況を答えた65社のうち、「既に実施している」は39社で60%だった。一方、「実施予定はない」と答えた22社の理由は「セキュリティ上の問題」が18社(81.8%)で突出している。
携帯・通信の窓口では、契約者の本人確認、住所、支払情報、通信の利用状況を扱う。在宅にできるかどうかは希望の問題ではなく、この情報を自宅で扱ってよいとクライアントが判断するかどうかで決まる。求人票に在宅の記載がない場合、会社の方針というより案件の条件である可能性が高い。
給料と、求人票で確かめる4点
賃金の話に移る前に、ひとつ断っておきたい。業種別の給与統計は存在しない。
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査では、コールセンターのオペレーターは「電話応接事務員」(電話交換手を含む職種区分)として集計される。フルタイムの年収換算は約394万円(きまって支給する現金給与額295,200円×12か月+年間賞与393,700円)、パート・アルバイトの1時間当たり所定内給与額は1,363円だった。
これはコールセンター全体の平均であり、携帯・通信の案件に限った数字ではない。通信系だから高い、という主張を裏づける公的データはない。給与の内訳そのものはコールセンターの年収・給料で分解している。
求人票のどこを見るか
平均値と目の前の求人を突き合わせるなら、この職種に固有の4点を確認すれば足りる。
- 料金・契約の窓口か、技術的な切り分けの窓口か
- 扱うのは大手事業者のブランドか、サブブランドやMVNOか
- 研修期間と、その間の時給が本採用後と同じか
- 在宅の可否が案件条件として書かれているか
1番目と2番目は、覚える範囲を決める。料金プランの数は事業者とブランドで違い、扱う端末の種類も変わる。3番目は、覚える量が多い職種ほど効いてくる。研修が長い案件で研修中の時給が下がる設定になっていると、最初の数か月の手取りが想定と離れる。
CCAJ調査で採用に苦労している企業は、回答した67社のうち45社(82.1%)にのぼる。採用側が採れていない状況では、これらを面接で確かめる余地がある。雇用形態や勤務時間から絞り込むならカスタマーサポート(受信)の求人で条件を並べて比較できる。
よくある質問
携帯・通信の知識がないと働けませんか
入る前の知識は前提にされていない。総務省の2024年度調査でMNOサービスの苦情相談の上位は「心当たりのない請求等」25.7%、「解約の条件・方法」22.0%、「勧められて新規契約又は事業者変更」21.1%と、いずれも契約の理解に関するものだった。技術的な知識より、契約の構造を説明し直す力のほうが先に要る。
料金プランは何種類くらい覚えますか
公的統計に「1案件あたりのプラン数」を示す数字はない。ただし移動系通信のシェアはNTTドコモ33.3%、KDDIグループ26.3%、ソフトバンク19.2%、楽天モバイル3.4%、MVNO17.9%に分かれ、事業者ごとにブランドが複数ある。覚える範囲は担当するブランドの範囲で決まるため、求人票で扱うブランドを確認するのが確実である。
MNPの手続きは電話でもできますか
総務省の説明によると、2023年5月24日に始まったワンストップ方式は新しい事業者のウェブサイト上で完結する経路である。電話や店舗で手続きする場合は、契約中の事業者から予約番号を取得する従来のツーストップ方式になる。電話窓口の業務には、この経路の違いの説明が含まれる。
クレームは多いですか
総務省の2024年度調査では、MNOサービスの苦情相談2,493件のうち発生チャネルがコールセンターだったものは2.4%で、店舗の3種を合わせた約88%が店舗で発生していた。コールセンターは苦情の発生源ではないが、店舗で起きた契約の問い合わせを受け取る位置にある。感情の強い通話が来る背景はここにある。
未経験でも採用されますか
CCAJの2025年度調査では、採用活動の状況を答えた67社のうち45社(82.1%)が「苦労している」または「やや苦労している」と回答した。職種別の不足感でも、コミュニケーター・オペレーターは66社中72.7%が不足と答え、「過剰気味である」と答えた企業はゼロだった。入り口は広い状態にある。
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出典
- 総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(令和7年度第2四半期(9月末))」(2025年12月26日公表・2025年9月末時点) https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban04_02000272.html
- 総務省 消費者契約適正化推進室「電気通信事業分野における消費者保護の取組について」(令和8年2月・2024年度調査/MNOサービスの苦情相談 N=2,493) https://www.soumu.go.jp/main_content/001069662.pdf
- 総務省 総合通信基盤局「電気通信事業法第27条の3等の運用に関するガイドライン」(令和5年12月4日改定・端末値引きの上限額) https://www.soumu.go.jp/main_content/000980312.pdf
- 総務省「携帯電話・PHSの番号ポータビリティ(MNP)」(ワンストップ方式は令和5年5月24日開始) https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/tel_number/mnp.html
- 一般社団法人日本コンタクトセンター協会「2025年度 コンタクトセンター企業 実態調査」(対象109社・回答68社・回収率62.4%・2025年6月16日〜7月23日実施) https://ccaj.or.jp/telemarketing/doc/outsourcing_research_2025.pdf
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)/短時間労働者 職種別1時間当たり所定内給与額(企業規模計10人以上) https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html
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