耳鼻科クリニックの受付は、来院受付、保険資格の確認、会計、月初のレセプトを担当する。医療受付に共通する部分は医療受付に共通する受付・会計・レセプトの流れにまとめてある。
この科に固有なのは2点だけだ。同じ曜日・同じ時間帯でも、月が変われば来院数がまるごと変わること。そして診察の途中に検査が挟まり、患者が窓口の前を何度も通ること。
求人票の「クリニック受付」という一語からは、どちらも読み取れない。
混み方が月ごとに別の顔になる
花粉症の有病率は20年あまりで2倍を超えた
環境省の花粉症環境保健マニュアル2022によると、全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象にした鼻アレルギーの全国調査は、1998年・2008年・2019年とほぼ10年おきに3回実施されている。花粉症の有病率は1998年が19.6%、2008年が29.8%、2019年には42.5%だった。スギ花粉症だけを取り出しても2019年で38.8%あり、およそ3人に1人という水準になる。
年齢層で見ると偏りがある。同マニュアルは、2019年の全国疫学調査でスギ花粉症の有病率が10代から50代で45%以上と高く、この年齢層ではスギ以外の花粉症も30%前後になると記している。
つまり働いている世代の半分近くが、毎年決まった時期に症状を抱える。窓口から見れば、春の数週間だけ来院数が跳ね上がり、同じ人が翌年もまた来るということである。
同じマニュアルが「正確なところは分かっていません」とも書いている
この42.5%という数字は、そのまま国民全体の有病率として使いにくい。同マニュアルは冒頭で、日本において花粉症を有する人の数は正確なところが分かっていないと断ったうえで、調査の対象が耳鼻咽喉科医とその家族であることを明示している。
代わりに使える数字を探すと、今度は別の壁に当たる。厚生労働省の令和5年患者調査は10月に実施されており、スギ花粉の飛散期を含まない。この科で最も混む時期の外来患者数は、国の統計に写っていない。
季節の波の大きさを公的統計で示せない以上、求人票の「未経験歓迎」を読むときに見るのは、繁忙期の勤務条件のほうになる。春に人員をどう増やすかは医療機関ごとの運用で、統計からは出てこない。
検査が診察に挟まるので、患者は窓口の前を何度も通る
耳鼻咽喉科学的検査は点数表に12区分ある
厚生労働省の令和6年度診療報酬改定による医科診療報酬点数表では、「耳鼻咽喉科学的検査」としてD244からD254までの12区分が置かれている。主なものを並べるとこうなる。
| 検査 | 点数 |
|---|---|
| 標準純音聴力検査、自記オージオメーターによる聴力検査 | 350点 |
| 簡易聴力検査(気導純音聴力検査) | 110点 |
| チンパノメトリー | 340点 |
| 鼻腔通気度検査 | 300点 |
| 平衡機能検査(標準検査・一連につき) | 20点 |
| 嗅覚検査(基準嗅覚検査) | 450点 |
聴力・鼻の通り・平衡感覚・嗅覚と、測る対象がそれぞれ違う。使う機器も別になる。診察室で完結せず、検査の場所へ移動して戻ってくる流れが、耳鼻科では日常的に発生する。
受付から見ると、待合にいる患者の状態が一律ではなくなる。診察を待っている人、検査を待っている人、検査を終えて説明を待っている人が同じ椅子に並ぶ。呼び出す順番は受付番号の順ではない。
補聴器適合検査には届出と回数の上限がある
12区分のうち、D244-2の補聴器適合検査は扱いが違う。点数は1回目1,300点、2回目以降700点。この検査は、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関で行われる場合に、患者1人につき月2回に限り算定するとされている。
自院が届け出ているかどうかで、その検査を予約できるかが変わる。算定できるのは月2回までなので、同じ月に3回目の来院があれば会計の組み立ても変わる。窓口で管理するのは日程だけではない。
患者の8割以上が診療所に来ている
耳の病気も、鼻とのどの病気も、大半は診療所で受け止められている
令和5年患者調査によると、調査日に外来を受けた推計患者数は、「耳及び乳様突起の疾患」が81.0千人、「呼吸器系の疾患」が625.3千人だった。
施設の種類別に見ると、耳の疾患は一般診療所68.5千人で84.6%、呼吸器系の疾患は一般診療所553.4千人で88.5%を占める。病院に行く患者のほうが少数派である。
同調査の総患者数では、耳及び乳様突起の疾患が955千人、呼吸器系の疾患が6,504千人。総患者数は平均診療間隔を用いて推計されるため、調査日の外来患者数に対する倍率が大きいほど通院の間隔が長い。耳が11.8倍、呼吸器系が10.4倍と、どちらも循環器系の26.2倍と比べれば小さい。短い間隔で来て、そのうち来なくなる患者が多い科だと読める。
同じ診療所でも、患者1人あたりの時間が逆を向く科もある。メンタルクリニック・心療内科の受付では診察が30分を挟むかどうかで点数が変わり、予約表が時間で刻まれる。
施設は5,681で、3年で102減った
令和5年医療施設(静態・動態)調査によると、一般診療所で耳鼻いんこう科を標ぼうする施設は5,681で、一般診療所総数104,894の5.4%にあたる。令和2年の5,783施設から102施設減っている。
一方、アレルギー科を標ぼうする一般診療所は7,917施設で、令和2年から193施設増えた。花粉症の患者が耳鼻科だけに集まっているわけではない。看板の掛け方が分かれている以上、求人票の科名だけで業務量を推し量ることはできない。
子どもの比率が、季節の山をさらに大きくする
小学校の鼻・副鼻腔疾患は11.36%
文部科学省の令和7年度学校保健統計によると、鼻・副鼻腔疾患を持つ者の割合は小学校11.36%、中学校10.87%だった。耳疾患は小学校5.79%、中学校5.24%である。健康状態の調査対象は全幼児・児童・生徒の25.4%にあたる3,143,588人で、抽出調査としては規模が大きい。
小学生のおよそ9人に1人が鼻・副鼻腔の疾患を指摘されている計算になる。耳鼻科の待合に子どもが多いのは、この比率が背景にある。
学校健診の結果は、期限つきで保護者に届く
学校保健安全法施行規則は、定期の健康診断を毎学年6月30日までに行うものと定め、検査の項目に視力及び聴力と耳鼻咽頭疾患の有無を挙げている。そして健康診断を行ったときは21日以内に結果を本人および保護者に通知し、必要な医療を受けるよう指示するなどの措置をとらなければならないとしている。
期限が決まっているので、受診を勧められた子どもは特定の時期にまとまって来る。花粉の季節と学校健診の後が重なると、その年の前半に山が2つ並ぶ。年間を通じて同じペースで回る科ではない。
給料は診療科ではなく、担当する範囲で動く
統計に耳鼻科の受付という区分はない
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査に「医療事務」という職種区分はなく、医療機関の窓口業務は担当範囲に応じて別の区分に振り分けられる。受付中心なら「受付・案内事務員」に含まれる。
| 統計上の職種 | 正社員の年収換算 | パートの時給 | 平均勤続 |
|---|---|---|---|
| 受付・案内事務員 | 356万円 | 1,231円 | 8.6年 |
| 会計事務従事者 | 509万円 | 1,593円 | 12.7年 |
| その他の保健医療サービス職業従事者 | 323万円 | 1,281円 | 6.4年 |
いずれも全産業の平均で、診療科別の集計は存在しない。耳鼻科だから高い、低いという裏づけはない。差がつくのは科名ではなく、レセプトや検査の受付まで持つかどうかの範囲である。条件から絞るなら耳鼻咽喉科の受付を含むクリニック受付の求人一覧で勤務時間や雇用形態を指定できる。
よくある質問
検査は受付が担当するのですか
検査そのものは医師または有資格の担当者が行う。窓口の役割は、検査の予約枠を押さえること、届出や回数の制限がある検査を把握しておくことになる。補聴器適合検査のように、施設基準の届出と月2回という上限が制度で決まっているものがある。
春だけ極端に忙しくなりますか
花粉症の有病率は2019年の全国調査で42.5%、スギ花粉症だけでも38.8%だった。10代から50代では45%以上になる。ただし国の患者調査は10月実施のため、飛散期の外来患者数を示す公的な数字はない。繁忙期の体制は医療機関ごとに確認するしかない。
子どもの対応が多い科ですか
令和7年度学校保健統計では、鼻・副鼻腔疾患を持つ者の割合が小学校で11.36%、中学校で10.87%だった。学校健診は毎学年6月30日までに行われ、結果は21日以内に保護者へ通知される。受診を勧められた子どもが来る時期は、制度の側で決まっている。
未経験でも入りやすい科ですか
耳鼻いんこう科を標ぼうする一般診療所は5,681施設あり、求人の母数としては小さくない。検査の種類は多いが、点数表の区分は12で有限である。覚える対象がはっきりしている分、手順書のある職場なら初期の負荷は読みやすい。
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出典
- 環境省「花粉症環境保健マニュアル2022」(2022年3月改訂版/鼻アレルギー全国調査1998・2008・2019年)https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/2022_full.pdf
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定 別表第一 医科診療報酬点数表」(耳鼻咽喉科学的検査D244〜D254)https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001251499.pdf
- 文部科学省「学校保健統計調査 令和7年度の結果の概要」(健康状態の抽出率25.4%・3,143,588人)https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa05/hoken/kekka/k_detail/2025.htm
- 学校保健安全法施行規則 第5条・第6条・第9条 https://laws.e-gov.go.jp/law/333M50000080018
- 厚生労働省「令和5年患者調査の概況」(令和5年10月実施)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/index.html
- 厚生労働省「令和5年医療施設(静態・動態)調査の概況」(診療科目別は重複計上)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/23/
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(企業規模計10人以上・産業計)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html
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