図書館の受付は、貸出と返却の処理、利用者カードの発行、予約資料の取り置き、書架の整理、そして窓口での問い合わせ対応を担う。
ただ、この説明だけでは求人票を読めない。図書館のカウンターには、司書という法律で定められた専門職が同じように立っているからだ。募集が「受付」なのか「司書」なのかで、任される範囲も雇用の枠も変わる。
先に数字を一つ置く。文部科学省の令和6年度社会教育統計によれば、全国3,400館の図書館で働く司書は2万2,405人。同じ資料で、図書館の職員総数に占める司書の割合は49.4%だった。カウンターの内側の半分は、司書ではない人が占めている。
受付と司書は、図書館法のどこで分かれるのか
資格の有無が仕事の中身をきれいに分けている、という前提から始めると読み違える。
司書は法律が定める「専門的職員」
図書館法(昭和25年法律第118号)第4条第1項は、図書館に置かれる専門的職員を司書及び司書補と称すると定め、第2項で司書は図書館の専門的事務に従事するとしている。さらに第13条第1項は、公立図書館に館長のほか、教育委員会が必要と認める専門的職員・事務職員・技術職員を置くと書く。専門的職員と事務職員は、条文の段階ですでに別の枠として並んでいる。
貸出・返却は司書の職務にも入っている
ところが、文部科学省が示す司書の主な職務内容を見ると話が変わる。資料の選択・発注・受入、分類と蔵書目録の作成、目録からの検索と資料の貸出及び返却、レファレンスサービスと読書案内、読書活動推進のための事業の企画・立案と実施、自動車文庫による館外奉仕。全6項目のうち、貸出返却は3番目、レファレンスは4番目に置かれている。
つまり「カウンター業務は司書ではない人の仕事」という切り分けは、法令にも文部科学省の説明にも存在しない。同じ作業を、資格のある人もない人も担っている。
分かれているのは資格ではなく発令
では何が違うのか。文部科学省は、司書として職務に就くには資格を持ったうえで都道府県または市町村の教育委員会から「司書」として発令される必要があると説明している。資格を取っても発令がなければ司書ではない。逆に、受付の枠で採用された人が貸出返却を担当することは制度上ふつうに起こる。
読むべきは資格要件の欄より業務内容の欄である。そこに「レファレンス」「選書」「目録作成」が入っているかどうかが、実際の線引きになる。
カウンターの一日は、貸出の量が決めている
1館あたり年間4万9千人が借りていく
令和5年度間の貸出冊数は5億9,389万5,145冊、実際に借りた人(帯出者数)は1億6,623万2,784人だった。3,400館で割ると、1館あたり年間およそ17万5千冊、約4万9千人になる。国民1人当たりでは4.8冊で、令和2年度間の4.2冊から戻している。
窓口の作業量はこの数に比例する。貸出、返却、延滞の連絡、予約資料の確保、書架への戻し。1件あたりの所要時間は短く、代わりに件数が多い。事務職の窓口というより、処理の速さで回る持ち場に近い。
レファレンスは即答しない仕事
問い合わせのほうは性質がまったく違う。「昭和30年代のこの町の地図はあるか」「子どもの自由研究に使える資料がほしい」。聞かれた言葉のままでは資料にたどりつかないことが多く、何を知りたいのかを聞き直すところから始まる。
文部科学省の整理では、レファレンスサービスと読書案内は司書の専門的職務に位置づけられている。受付の枠でどこまで担当するかは館ごとに違うため、募集要項の業務欄で確かめておきたい。
雇用主が自治体とは限らない
公立図書館だから公務員として働く、とは限らない。ここが図書館の受付を探すときの最大の分岐になる。
公立図書館の22.2%が指定管理者
令和6年10月1日現在、公立図書館3,380館のうち750館が指定管理者制度を導入している。割合にして22.2%で、令和3年度の20.9%(3,372館中704館)から増えた。指定管理者制度は地方自治法第244条の2第3項に基づき、法人その他の団体に公の施設の管理を代行させる仕組みである。
指定管理者の8割は会社
内訳を開くと、750館のうち会社が605館で80.7%を占めた。一般社団法人・一般財団法人が63館、NPOが38館、その他が42館と続く。指定管理の館で出る受付の募集は、自治体の職員としてではなく民間企業の従業員として働く形になる。
給与も休暇も評価も、その会社の制度で決まる。同じ図書館の同じカウンターに立っていても、直営館か指定管理館かで応募先も契約の相手も別になる。自治体そのものの窓口で働く場合の枠組みは市役所・区役所の受付・窓口の仕事で整理している。
給料はどのくらいか
自治体が直接任用する場合は、待遇が公表されている。総務省の令和6年度調査(令和6年4月1日時点)によれば、会計年度任用職員のうち「図書館職員」の区分は1万8,430人で、1時間当たりの平均給料は1,163円だった。1,385団体を単純平均した額である。
| 区分 | 金額 | 母数 |
|---|---|---|
| 図書館職員(会計年度任用職員) | 時給1,163円 | 1,385団体の単純平均 |
| 受付・案内事務員(短時間労働者) | 時給1,231円 | 84,580人 |
| 受付・案内事務員(フルタイム年収換算) | 約356万円 | 84,880人 |
フルタイムは6.7%しかない
図書館職員1万8,430人の内訳は、フルタイム1,237人に対してパートタイムが1万7,193人。フルタイムは6.7%にとどまる。時給が民間の受付(1,231円)を68円下回るうえ、勤務時間の枠そのものが狭い。
年収は勤務日数で決まる
時給が近くても、週3日の枠と週5日の枠では年間の収入が大きく変わる。9割超がパートタイムである以上、募集要項で先に見るべきは時給ではなく週あたりの勤務時間の上限になる。上限がそのまま年収の天井として効いてくる。
向いているのはどんな人か
本が好きという動機は入口としては自然だが、窓口の適性とは別の話になる。
質問を言い換えられる人
利用者は探している資料の名前を知らないまま来る。断片的な記憶から見当をつけ、確認の質問を重ねて絞り込む。この往復を面倒がらない人が向く。
処理の反復に耐えられる人
貸出返却は1件あたり数十秒の作業が延々と続く。年間4万9千人という数字は、1館あたりの利用者を1年で均した値である。混む時間帯には、この平均よりずっと速い流れになる。
資格を後から取る道を選べる人
司書資格は、大学で図書館に関する科目を履修して卒業する道のほか、大学・短期大学・高等専門学校の卒業者が司書講習を修了する道がある(図書館法第5条第1項)。司書講習は毎年7月から9月にかけて、全国5大学程度で集中して開かれる。年齢制限はない。働きながら目指すなら、この夏の期間をどう空けるかが最初の関門になる。
未経験から図書館の受付を始めるには
司書資格がなくても応募できる枠はある。ただし、どこに応募するかで話が変わる。
応募先は自治体か会社か
自治体の会計年度任用職員として募集される枠は、市区町村の採用情報のページに出る。指定管理者である会社の募集は、その会社の採用ページや求人サイトに出る。同じ館の同じ業務でも、募集元によって選考の方法も契約の形も別になる。
窓口の募集でありながら雇い主が一般の会社ではない、という構図は図書館に限らない。宗教法人が募集元になる寺院・神社の受付・寺務所の仕事も同じ形をしている。
求人票で確認したい4点
- 募集元が自治体か、指定管理者である会社か
- 業務欄にレファレンス・選書・目録作成が含まれるか
- 週の勤務時間の上限と、任用(契約)の期間
- 司書資格が必須なのか、あれば優遇なのか
4点のうち効くのは2番目である。レファレンスまで含む募集は、資格保有者と同じ選考に並ぶ可能性がある。貸出返却と書架整理に限定された募集なら、接客と事務の経験で通る余地が大きい。オフィス系の受付と条件を並べるなら企業受付・総合受付の求人を探すが近い比較対象になる。
よくある質問
司書の資格がないと図書館で働けませんか
働ける。文部科学省の令和6年度社会教育統計では、図書館の職員総数に占める司書の割合は49.4%だった。残りの半分は司書以外の職員である。ただしレファレンスや選書を担当する枠は、資格保有者が優先される場合がある。
司書の資格は働きながら取れますか
取れる。図書館法第5条第1項は、大学・短期大学・高等専門学校の卒業者が司書講習を修了する道を認めている。講習は毎年7月から9月に全国5大学程度で実施される集中講習で、受講に年齢制限はない。
図書館の受付は公務員ですか
館による。令和6年10月1日現在、公立図書館3,380館のうち750館(22.2%)が指定管理者制度を導入しており、その750館の80.7%にあたる605館は会社が管理者になっている。指定管理の館で採用されれば、雇用主はその会社である。
図書館の受付の時給はどのくらいですか
自治体が任用する会計年度任用職員の「図書館職員」区分では、1時間当たりの平均給料が1,163円(1,385団体の単純平均)。厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査が示す受付・案内事務員のパート時給1,231円を68円下回る。
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出典
- 文部科学省「令和6年度社会教育統計(社会教育調査の結果)」確定値(令和8年3月27日公表/施設数・職員数は令和6年10月1日現在、活動状況は令和5年度間)。図書館3,400館、司書22,405人、職員総数に占める司書の割合49.4%、公立図書館3,380館中の指定管理者導入750館(22.2%・うち会社605館、一般社団法人等63館、NPO38館)、貸出冊数593,895,145冊、帯出者数166,232,784人
- 図書館法(昭和25年法律第118号)第4条・第5条・第13条/文部科学省「司書について」(司書の主な職務内容6項目、司書講習は毎年7〜9月に全国5大学程度、教育委員会による司書の発令)
- 総務省「令和6年度 会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査結果(任用件数等)」(令和6年4月1日時点)。図書館職員18,430人(フルタイム1,237人・パートタイム17,193人)、1時間当たり平均給料1,163円(1,385団体の単純平均)
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」受付・案内事務員(産業計・企業規模計10人以上)。短時間労働者84,580人・時給1,231円、一般労働者84,880人・年収換算約356万円
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