メンタルクリニック・心療内科の受付でやることは、来院受付、保険資格の確認、会計、月初のレセプト。作業の種類だけを並べれば、内科でも皮膚科でも同じである。
違うのは、その作業が1日に何回、どういう間隔で来るかのほうだ。この科では診察に何分かけたかが診療報酬の点数を分けるため、予約表が時間で刻まれている。そして自立支援医療を使う患者は、保険証のほかに2種類の書類を毎回窓口に出す。
求人票の「クリニック受付」という一語が、この科でだけ指している中身がある。
診察の長さで点数が変わるから、予約表が時間で刻まれる
30分未満・30分以上・60分以上で点数が分かれている
厚生労働省の令和6年度診療報酬改定資料によると、通院精神療法の点数は診療時間の区分で決まる。改定後の点数はこうなっている。
| 診療時間の区分 | 精神保健指定医による場合 | それ以外の場合 |
|---|---|---|
| 初診日に60分以上 | 600点 | 550点 |
| 30分以上 | 410点 | 390点 |
| 30分未満 | 315点 | 290点 |
同じ再診でも、30分を挟むかどうかで100点前後、金額にして1,000円前後の差がつく。
この区分は、受付から見ると予約の入れ方そのものを規定する。1人15分で機械的に枠を並べる運用は成り立たず、初診に60分を割り当てる枠と再診を30分未満で詰める枠が、同じ予約表の上に混在する。
初診の枠をどこに空けておくかが、窓口の判断になる
令和6年度改定では早期診療体制充実加算が新設された。その施設基準には、過去6か月間の30分以上または60分以上の通院・在宅精神療法の算定回数が、通院・在宅精神療法の算定回数の5%以上であること、という条件が入っている。診療所ではこれに加えて、「初診日に60分以上」の算定回数の合計を勤務する医師数で割った値が60以上であることが求められる。
長い診察を一定の割合で確保できているかどうかが、医療機関の収入に直結する形になっている。だから初診の予約を受ける電話は、空いている時間を読み上げる作業ではない。埋まりかけた予約表のどこを初診用に残すかという判断が、受付の手元にある。
受付が毎回あずかる書類は、保険証だけではない
受給者証と自己負担上限額管理票の2枚が窓口を往復する
厚生労働省の資料によると、自立支援医療(精神通院医療)は、精神疾患で通院治療を続ける必要がある人の医療費の自己負担を、公的医療保険の3割から1割に軽減する制度である。対象は統合失調症、うつ病・躁うつ病などの気分障害、不安障害、てんかんなど、精神疾患の全般にわたる。
この制度で医療を受けるときは、交付された「自立支援医療受給者証」と「自己負担上限額管理票」を、受診のたびに医療機関に示すことになっている。窓口で預かり、会計で記入し、返す。この一往復が、精神科・心療内科の受付にだけ毎回加わる。
上限額は世帯の所得で分かれ、月の途中で0円になる
1割の負担が過大にならないよう、1か月あたりの負担には上限が設けられている。生活保護受給世帯は0円、市町村民税非課税世帯で受給者の収入が80万円以下なら2,500円、80万円を超える場合は5,000円。市町村民税235,000円未満の世帯は医療保険の自己負担限度額が上限となり、235,000円以上は制度の対象外になる。「重度かつ継続」に該当する場合は、市町村民税33,000円未満で5,000円、33,000円以上235,000円未満で10,000円という上限が別に設定される。
管理票には、その月にすでに支払った額が積み上がっている。上限に達していれば、その日の窓口負担は0円になる。会計はレジ打ちではなく、残額を見てから金額を出す計算になる。
有効期間は1年で、更新の声かけも窓口から出る
受給者証の有効期限は原則として1年で、1年ごとに更新が必要になる。更新の申請は、おおむね有効期間終了の3か月前から受け付けが始まる。
期限が切れれば、その日から負担は3割に戻る。患者が気づかないまま来院する事態を防げるのは、受給者証を毎回見ている窓口だけである。保険証の確認はオンライン資格確認で自動化が進んだが、この2枚は今も紙で回っている。医療受付に共通する基本業務のほうはクリニック・病院受付の仕事内容に整理してある。
1日に会う人数は少なく、そのぶん1件が長い
外来患者244.6千人の内訳
厚生労働省の令和5年患者調査によると、令和5年10月の調査日に外来を受けた推計患者数は7,275.0千人。このうち「精神及び行動の障害」は244.6千人で、全体の3.4%にあたる。
内訳は、気分[感情]障害76.8千人、その他の精神及び行動の障害65.4千人、神経症性障害・ストレス関連障害及び身体表現性障害52.9千人、統合失調症・統合失調症型障害及び妄想性障害49.5千人。年齢別では35〜64歳が117.0千人で47.8%を占め、65歳以上は66.2千人にとどまる。
働く世代が半分近くを占めると、埋まる時間帯が偏る
同じ患者調査で、一般診療所全体の外来推計患者数は4,494.3千人。医療施設調査の一般診療所104,894施設で割ると、1施設あたり約43人になる。診察1件に30分から60分を使う科であれば、1施設あたりの人数はこの43人を下回る側に来ると考えるのが自然だろう。当日受付の列を捌く科ではなく、予約表の上で1件ずつを動かす科である。
そして通院する人の半分近くが働いている年代であれば、夕方と土曜の枠から先に埋まる。窓口が電話で扱うのは空き時間の提示ではなく、希望と空きが合わないときの調整のほうになる。
この科のクリニックは、全体より速く増えている
精神科7,761施設・心療内科5,314施設
令和5年医療施設(静態・動態)調査によると、一般診療所が標ぼうする診療科目別の施設数(重複計上)は次の通りである。
| 診療科 | 令和5年 | 令和2年 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 内科 | 64,747 | 64,143 | +0.9% |
| 小児科 | 17,778 | 18,798 | -5.4% |
| 精神科 | 7,761 | 7,223 | +7.4% |
| 心療内科 | 5,314 | 5,063 | +5.0% |
| 一般診療所 総数 | 104,894 | 102,612 | +2.2% |
一般診療所の総数が3年で2.2%しか増えていないなかで、精神科は7.4%増えている。小児科が5.4%減っているのと対照的である。
対象者の側も増えている
令和5年度衛生行政報告例によると、令和5年度末現在の精神障害者保健福祉手帳交付台帳登載数(有効期限切れを除く)は1,448,917人で、前年度から103,449人(7.7%)増えた。
施設が増え、対象者も増えている。窓口の求人という意味では、この科は縮む方向に動いていない。ただし1施設あたりの規模は小さい。一般診療所104,894施設のうち94.6%にあたる99,253施設が無床で、受付が1人か2人で回る職場が中心になる。分業された持ち場ではなく、受付から会計まで全部を持つ働き方になる。
給料は診療科では動かない。動くのは業務範囲
統計上の職種は「受付・案内事務員」
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査に「医療事務」という職種区分はない。医療機関の窓口業務は担当範囲に応じて別の区分に振り分けられ、受付中心なら「受付・案内事務員」として集計される。
| 統計上の職種 | 正社員の年収換算 | パートの時給 | 平均勤続 |
|---|---|---|---|
| 受付・案内事務員 | 356万円 | 1,231円 | 8.6年 |
| 会計事務従事者 | 509万円 | 1,593円 | 12.7年 |
| その他の保健医療サービス職業従事者 | 323万円 | 1,281円 | 6.4年 |
いずれも全産業の平均で、診療科別の集計は存在しない。メンタルクリニックだから水準が高いという裏づけはない。読み取れるのは、窓口で閉じる範囲より会計・請求まで持つ範囲のほうが評価が高く出る、という方向性だけである。求人票で見るのは科名ではなく、レセプトまで含むかどうかになる。
条件から絞り込むなら、メンタルクリニックを含む医療・クリニック受付の求人で勤務形態や時間帯から並べ替えられる。
よくある質問
精神科の知識がないと応募できませんか
制度上の要件はない。受付・案内事務員は国家資格でも法定の職種でもなく、令和6年賃金構造基本統計調査にも「医療事務」という区分自体が存在しない。ただし自立支援医療の受給者証と自己負担上限額管理票の扱いは制度で決まっているため、入職後に覚える範囲には確実に入る。
心療内科と精神科では、受付の仕事が違いますか
標ぼう科名の違いで、令和5年医療施設調査では一般診療所の精神科7,761施設、心療内科5,314施設と別々に集計されている。同じ医療機関が両方を標ぼうすることもあるため、施設数は重複計上である。受付の実務としては、通院精神療法の時間区分も自立支援医療も共通で、区別する必要は小さい。
レセプトも担当することになりますか
求人による。窓口対応だけの募集と、月初のレセプトまで含む募集の両方がある。職種名からは判別できないので、募集要項の業務内容欄で確認するしかない。呼び名と業務範囲の対応は医療事務・医療クラーク・医療秘書・受付の違いで整理している。
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出典
- 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定 Ⅲ-4-5 質の高い精神医療の評価」通院・在宅精神療法の点数・早期診療体制充実加算の施設基準 https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001473986.pdf
- 厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)について」自己負担1割・所得別の負担上限月額・受給者証の有効期間1年 https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/dl/03.pdf
- 厚生労働省「令和5年患者調査の概況」令和5年10月/推計外来患者数7,275.0千人 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/index.html
- 厚生労働省「令和5年医療施設(静態・動態)調査の概況」令和5年10月1日現在/一般診療所104,894施設 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/23/
- 厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例の概況」令和5年度末/手帳登載数1,448,917人 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/23/
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種小分類別・企業規模計10人以上 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html
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