小児科クリニックの受付がやることは、来院受付、保険資格の確認、会計、月初のレセプト。名前だけを並べれば内科でも皮膚科でも変わらない。共通する4つの流れはクリニック・病院受付の基本業務に整理してある。
この科でだけ形が変わるのは、4つに登場する人物の数だ。診察を受ける人と、説明を聞く人と、支払う人が別々にいる。そのうえ予約表の一部は予防接種で埋まっていて、接種の予約は前回の接種日から逆算しないと日程が決まらない。
「小児科の受付は大変」と言われるとき、中身はこの2つを指している。
窓口で向き合う相手は、診察を受ける本人ではない
子どもの外来は、7割以上が診療所に来ている
厚生労働省の令和5年患者調査によると、調査日に外来を受けた0〜14歳の推計患者数は703.0千人だった。内訳は0歳49.0千人、1〜4歳209.5千人、5〜9歳251.4千人、10〜14歳193.1千人。
施設の種類別では一般診療所が518.2千人で、0〜14歳の外来患者の73.7%を占める。病院は84.2千人にとどまる。子どもの受診は、街のクリニックの窓口に集まっている。
そして0歳から14歳までの患者は、自分で保険証を出さず、会計もしない。窓口の説明は付き添いの保護者へ向かう。同じ「患者対応」でも、成人の科とは相手の位置が違う。
症状を話す人と支払う人が本人でないという構図は、動物病院の受付の仕事内容にも共通する。ただしそちらは公的医療保険の給付対象が人に限られるため、会計に「3割」という区切りがない。
母子健康手帳の提示は、制度で決まっている
保護者に確認するものが1つ多い。厚生労働省の定期接種実施要領は、乳幼児・小児に定期接種を行う場合、接種前に母子健康手帳の提示を保護者に求めることと定めている。個別接種は原則として保護者の同伴が必要とされ、副反応等を説明したうえで文書により同意を得た場合に限り接種を行うものとされている。
保険証・受給者証・母子健康手帳・予診票の4点が揃わないと接種の枠には入れない。受付が扱うのは、このうち手帳と予診票の受け渡しである。
予防接種の予約は、空いている枠を埋める作業ではない
前回の接種日を聞かないと、次の日程が決まらない
予防接種の間隔には、2020年10月1日から新しいルールが適用されている。厚生労働省の案内では決まりが3つに整理されている。
- 注射生ワクチンから次の注射生ワクチンの接種を受けるまでは27日以上の間隔をおくこと
- 同じ種類のワクチンの接種を複数回受ける場合は、ワクチンごとに決められた間隔を守ること
- 発熱や接種部位の腫脹がないこと、体調が良いことを確認したうえで接種を受けること
3つを守っていれば、それ以外の組み合わせに間隔の制限はない。2020年9月末までは不活化ワクチンの接種後6日以上、生ワクチンの接種後27日以上という一律の制限があったので、予約は組みやすくなった側の変更である。
ただし窓口の手間は減っていない。同じ種類を複数回受ける場合の間隔が残るからだ。4種混合ワクチンの1期初回は接種と接種のあいだに20日以上、1期追加はその後6か月以上をあける。電話で予約を受けるとき、最初に聞くのは希望日ではなく「前回はいつ、何を接種したか」になる。
予診票と同意が揃わなければ、その日は打てない
定期接種実施要領は、予診の結果、予防接種を受けることが適当でない者に該当する疑いがあると判断されれば、当日は接種を行わないとしている。発熱していれば、その枠は空く。
接種の枠は、診察の予約と違って代わりの患者をその場で入れにくい。間隔の条件を満たす子でなければ入らないからだ。空いた枠の組み直しは、そのまま受付の判断になる。
こども医療費の助成が、窓口負担をゼロにする
全1,741市区町村が助成を実施している
こども家庭庁が令和7年12月に公表した「こどもに係る医療費の助成についての調査」によると、令和7年4月1日時点で全都道府県・全市区町村が助成を実施していた。市区町村1,741の内訳はこうなっている。
| 通院の区分 | 市区町村数 |
|---|---|
| 対象年齢が18歳年度末まで | 1,576 |
| 対象年齢が15歳年度末まで | 145 |
| 所得制限なし | 1,692 |
| 一部自己負担なし | 1,319 |
| 一部自己負担あり | 422 |
通院で18歳年度末まで助成する市区町村が90.5%を占め、一部自己負担があるのは422市区町村(24.2%)。多数派は、窓口で払う金額がゼロになる自治体である。
会計は二段階になる
国は医療保険制度のなかで、就学前児童の自己負担を3割から2割に軽減している。そのうえに自治体の助成が乗る。受付の会計は、まず保険の割合で窓口負担を出し、次に受給者証の内容で助成分を差し引く順序になる。差し引いた結果が0円でも、請求は保険者と自治体の両方へ向かうため、入力は通常どおり必要になる。
助成の中身は自治体ごとに違い、所得制限のある自治体も49ある。同じクリニックの窓口に、負担ゼロの子と数百円を払う子が並ぶ。受給者証を毎回確認するのは、この差を取り違えないためである。
待合を分ける理由は、診察の都合ではない
出席停止の期間は、省令で決まっている
保護者から窓口に来る質問で多いのが、いつから登園・登校できるかという問いだ。答えの枠組みは学校保健安全法施行規則にある。同規則第18条は感染症を第一種から第三種に分け、第19条が出席停止の期間の基準を置く。第二種の主なものはこうなっている。
| 感染症 | 出席停止の期間の基準 |
|---|---|
| インフルエンザ | 発症後5日を経過し、かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまで |
| 麻しん | 解熱した後3日を経過するまで |
| 流行性耳下腺炎 | 耳下腺等の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで |
| 水痘 | すべての発しんが痂皮化するまで |
| 新型コロナウイルス感染症 | 発症後5日を経過し、かつ症状が軽快した後1日を経過するまで |
いずれにも、病状により学校医その他の医師が感染のおそれがないと認めたときはこの限りでない、という但し書きが付く。受付が保護者に伝えられるのは基準の存在までで、その子が該当するかどうかではない。線引きがはっきりしている分、覚えれば迷わない部分でもある。
入口で分けるかどうかが、待合の設計を決める
発しんや発熱の申し出は、診察室ではなく受付で最初に出る。別室に通すか通常の待合に案内するかを決める場面が、1日に何度も来る。院内の運用は医療機関ごとに違っても、判断の入口が窓口にある点は共通する。
施設は減っているのに、子どもの受診は減っていない
3年で1,020施設減った
令和5年医療施設(静態・動態)調査によると、一般診療所で小児科を標ぼうする施設は17,778で、総数104,894の16.9%にあたる。令和2年の18,798施設と比べると1,020施設減り、減少率は5.4%になる。一般診療所の総数が2.2%増えているなかでの減少で、皮膚科(775施設増)や精神科(538施設増)とは逆を向いている。
受療率のほうは過去最高水準にある
この数字だけを見ると、需要が縮んで施設が減ったように読める。ところが患者側の統計は逆を示す。
令和5年患者調査の外来受療率(人口10万対)は、総数5,850に対して0歳6,467、1〜4歳6,291、5〜9歳5,196。同調査の概況は、外来の受療率について「0〜14歳」で令和5年が昭和59年以降最も高くなっていると記している。施設が減り、受診は増えている。1施設あたりに流れ込む人数は、その分だけ増える計算になる。
給料が動くのは診療科ではなく、担当する範囲
統計に診療科別の区分はない
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査に「医療事務」という職種はなく、医療機関の窓口業務は担当範囲に応じて別の区分に振り分けられる。受付中心なら「受付・案内事務員」に含まれる。
| 統計上の職種 | 正社員の年収換算 | パートの時給 | 平均勤続 |
|---|---|---|---|
| 受付・案内事務員 | 356万円 | 1,231円 | 8.6年 |
| 会計事務従事者 | 509万円 | 1,593円 | 12.7年 |
| その他の保健医療サービス職業従事者 | 323万円 | 1,281円 | 6.4年 |
いずれも全産業の平均で、診療科別の集計は存在しない。小児科だから高い、低いという裏づけはない。読み取れるのは、窓口で閉じる範囲より会計・請求まで持つ範囲のほうが評価が高く出る方向性だけである。求人票で見るのは科名ではなく、レセプトを含むかどうかだ。条件を絞るなら小児科を含む医療・クリニック受付の求人から勤務時間や雇用形態で並べ替えられる。
よくある質問
予防接種の予約は受付が全部組むのですか
日程の候補を出すところまでが窓口の役割になる。接種間隔のルールは2020年10月に整理されたが、注射生ワクチン同士の27日以上と、同じ種類を複数回受ける場合のワクチンごとの間隔は残っている。前回の接種内容を確認しないと候補が出せない。
登園許可証は受付が書けますか
書けない。学校保健安全法施行規則第19条の但し書きは、感染のおそれがないと認める主体を学校医その他の医師としている。受付が保護者に伝えられるのは、出席停止の期間の基準までである。
小児科の受付は他の科より忙しいですか
診療科別に業務量を比べた公的統計はない。ただし小児科を標ぼうする一般診療所は3年で1,020施設減り、0〜14歳の外来受療率は昭和59年以降で最も高い水準にある。
次に読む
出典
- 厚生労働省「定期接種実施要領」 https://www.mhlw.go.jp/content/001238891.pdf
- 厚生労働省「異なる種類のワクチンを接種する際の接種間隔のルールが一部変更されます」(2020年10月1日) https://www.mhlw.go.jp/content/000674724.pdf
- こども家庭庁「令和7年度こどもに係る医療費の助成についての調査」(令和7年4月1日現在/1,741市区町村) https://www.cfa.go.jp/press/2a8699a3-eb02-4f7a-b838-1561a0004476
- 学校保健安全法施行規則 第18条・第19条 https://laws.e-gov.go.jp/law/333M50000080018
- 厚生労働省「令和5年医療施設(静態・動態)調査の概況」(診療科目別は重複計上)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/23/
- 厚生労働省「令和5年患者調査の概況」(令和5年10月実施)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/index.html
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(企業規模計10人以上・産業計)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html
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