結論から書く。受付の給料は、厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、フルタイムで年収356万円、パート・アルバイトで時給1,231円である。
ただし、この2つを並べただけでは判断材料にならない。
同じ調査の中で、男性は453万円、女性は331万円と122万円の開きがある。そしてパートの1,231円という数字は、いま全国の最低賃金の加重平均を110円上回っているにすぎない。平均値が、性質のかなり違う働き方をひとつに丸めている。
受付の給料は「2つの相場」でできている
受付の求人は、月給制と時給制がほぼ同じ数だけ出てくる。統計の側でも、この2つは別の集団として集計されている。
フルタイム(正社員・契約社員クラス)の実額
| 区分 | きまって支給する現金給与額 | 年間賞与 | 年収換算 | 平均年齢 | 勤続年数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 男女計 | 256,500円 | 485,800円 | 約356万円 | 42.0歳 | 8.6年 |
| 男性 | 316,900円 | 730,400円 | 約453万円 | 48.4歳 | 13.2年 |
| 女性 | 240,900円 | 422,300円 | 約331万円 | 40.3歳 | 7.5年 |
年収換算は「きまって支給する現金給与額 × 12ヶ月 + 年間賞与」で計算した。この現金給与額には残業代が含まれる。ただし受付・案内事務員の超過実労働時間は月7時間しかないため、残業代が押し上げている分は小さい。
パート・アルバイトの実額
| 区分 | 1時間当たり所定内給与額 | 月の実労働日数 | 1日の所定内労働時間 | 月収換算 |
|---|---|---|---|---|
| 受付・案内事務員 | 1,231円 | 13.7日 | 5.7時間 | 約9.6万円 |
平均年齢50.1歳、勤続6.2年。年間賞与は3万4,200円で、月収換算と合わせた年間の見込みは約119万円になる。
労働者数はフルタイム8万4,880人に対してパート8万4,580人。受付職の49.9%が短時間勤務で、この職種では「相場」が二重になっている。
最低賃金と並べると、1,231円の位置が見える
時給1,231円を高いと見るか低いと見るかは、比較対象を決めないと答えが出ない。最も現実的な比較対象は、最低賃金である。
全国加重平均との差は110円
厚生労働省が公表した令和7年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,121円。前年度の1,055円から66円、6.3%の引き上げだった。
受付パートの平均時給1,231円との差は110円。時給の平均が、最低賃金の1割増しの位置にあるということになる。
東京では最低賃金とほぼ同額になる
地域別に見ると、この距離はさらに縮む。最も高い東京都の最低賃金は1,226円で、受付パートの全国平均1,231円との差はわずか5円しかない。
つまり東京で「時給1,250円」と書かれた受付の求人は、全国平均を上回っているように見えて、その地域の最低賃金を24円上回っているだけである。逆に最も低い1,023円の県(高知・宮崎・沖縄)では、同じ1,250円が最低賃金より227円高い。時給の数字は、都道府県の最低賃金で割り戻して初めて比較可能になる。
なお賃金構造基本統計調査の調査時点は令和6年6月で、当時有効だったのは令和5年度の最低賃金である。その後2度の改定を経て1,121円まで上がっているため、両者の差は今後さらに縮む可能性がある。
男女差122万円の中身は、年齢と勤続の差に出ている
男性453万円、女性331万円。この差は、同じ仕事に対する評価の差というより、集団の構成の差として現れている。
差は賞与に集中している
| 区分 | 所定内給与額 | 年間賞与 | 時給換算 | 労働者数 |
|---|---|---|---|---|
| 男性 | 291,900円 | 730,400円 | 1,813円 | 17,490人 |
| 女性 | 228,500円 | 422,300円 | 1,428円 | 67,390人 |
毎月の所定内給与で6万3,400円、年間賞与で30万8,100円の差がある。時給換算(所定内給与額 ÷ 所定内実労働時間)に直すと385円の差になる。
男性は平均48.4歳・勤続13.2年という別の層である
注目したいのは、男性の平均年齢が48.4歳、勤続が13.2年という点だ。女性は40.3歳・7.5年で、年齢で8歳、勤続で5.7年離れている。人数も男性1万7,490人に対して女性6万7,390人で、男性は全体の1割に届かない。
長く残った少数の層と、入れ替わりのある多数の層。受付職の男女差は、性別そのものより在籍年数の差として説明したほうが数字に合う。
裏を返せば、勤続を13年積めば年収453万円に届くという読み方もできる。ただし女性側の勤続7.5年で331万円という水準から逆算すると、1年あたりの伸びは決して大きくない。年収を大きく動かしたい場合、受付職の内部で年数を積むより、業務範囲を広げる方向を考えたほうが速い。受付という職種の位置づけは受付の仕事とはで整理している。
給料が上がりにくい理由は、求人側の需給にある
なぜこの水準で止まるのか。答えは求人市場の側にある。
厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年3月・常用/パート含む・全国計)によると、受付・案内事務員が属する一般事務従事者の有効求人倍率は0.37倍だった。有効求人14万9,809件に対し、有効求職者は40万9,937人。求人1件あたり2.7人が応募先を探している。
接客職と比べると需給が逆になっている
| 職業分類 | 有効求人倍率 |
|---|---|
| 職業計 | 1.10倍 |
| 事務従事者 | 0.44倍 |
| うち一般事務従事者(受付を含む) | 0.37倍 |
| サービス職業従事者 | 2.59倍 |
| うち接客・給仕職業従事者 | 2.40倍 |
同じ「人と接する仕事」でも、接客・給仕は2.40倍で人手が足りていない。事務側の受付は0.37倍で、応募する側が余っている。人が余っている職種の賃金は、上がる圧力がかからない。
事務系の中でも下位に位置する
| 職種 | フルタイム年収換算 | パート時給 | 平均勤続 |
|---|---|---|---|
| 総合事務員 | 530万円 | 1,509円 | 13.0年 |
| 電話応接事務員(コールセンター) | 394万円 | 1,363円 | 7.8年 |
| 受付・案内事務員 | 356万円 | 1,231円 | 8.6年 |
| 事務用機器操作員(データ入力) | 356万円 | 1,241円 | 7.5年 |
受付とデータ入力が同水準の356万円で並ぶ。総合事務員とは174万円、コールセンターとは38万円の差がある。コールセンターとの比較は受付とコールセンターの違いで分解した。
給与だけを基準にするなら、受付は事務系の入り口であって到達点ではない。
求人票で平均とのズレを判断する4点
全国平均に対して、目の前の求人が上か下かを見るには次を確認すれば足りる。
- 賞与の月数が書かれているか。フルタイムの平均は年48万5,800円で、所定内給与額の約2.0ヶ月分にあたる。「賞与あり」だけの記載はこの水準を下回る可能性を見ておく。
- 時給を都道府県の最低賃金で割り戻したか。全国平均の1,231円は、地域によって最低賃金ぎりぎりにも大幅超過にもなる。
- みなし残業の有無。この職種の超過実労働時間は月7時間である。20時間分のみなし残業が付いている求人は、業務内容が受付以外に広がっている可能性が高い。
- 業務範囲がどこまでか。受付単体では356万円が上限に近い。会計や庶務まで含む募集なら、事務職側の水準に近づく。
このうち4番目が最も効く。同じ「受付」の求人票でも、レセプトや経理補助まで含むものと、来客対応だけのものでは、そもそも比較対象が違う。募集要項の業務内容を読まずに時給や月給だけを並べると、順序が入れ替わる。
勤務形態や勤務時間から絞り込む場合は企業受付・総合受付の求人で条件を指定できる。
よくある質問
受付の初任給はいくらくらいですか
賃金構造基本統計調査は年齢別の初任給を職種単位では公表していない。平均勤続8.6年での月額25万6,500円が全体の平均なので、未経験の入職時はこれを下回ると考えるのが自然である。
企業受付とクリニック受付では給料が違いますか
公的統計は受付・案内事務員を勤務先別に分けていないため、統計としての比較はできない。判断材料になるのは業務範囲で、レセプトや会計を含む募集は、来客対応のみの募集より高く設定されやすい。
パートで扶養内に収まりますか
平均的な働き方(時給1,231円・1日5.7時間・月13.7日)なら月収は約9万6,000円、年間で約119万円になる。勤務日数を増やせばこの額は動くため、契約時に月あたりの上限日数を確認しておきたい。
受付は昇給しますか
男性の勤続13.2年で年収453万円、女性の勤続7.5年で331万円という差から、勤続に応じた昇給は存在する。ただし1年あたりの伸びは大きくない。短期間で年収を上げる手段としては期待しにくい。
受付で年収400万円を超えられますか
フルタイムの男女計が356万円、男性が453万円なので、超えている層は実在する。条件は勤続の長さと業務範囲の広さで、受付業務のみの求人で400万円を提示しているものは平均を大きく上回る水準だと考えたほうがいい。
次に読む
出典
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)/短時間労働者 職種別1時間当たり所定内給与額(企業規模計10人以上)
- 厚生労働省「令和7年度 地域別最低賃金 全国一覧」(全国加重平均1,121円・改定前1,055円・引上げ額66円)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/index.html)
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」参考統計表6(令和8年3月・全国計・常用/パート含む)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/114-1.html)
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