シェアオフィスやコワーキングスペースの受付は、会員の入退館管理、来客の取次、会議室と座席の予約、郵便物と宅配便の受け渡し、内覧の案内を担う。
企業受付との違いは、取り次ぐ先が1社ではないことにある。ワンフロアに20社入っていれば、受付は20社分の来客対応を引き受けている。相手の顔ぶれも、社名も、ルールも、来客ごとに切り替わる。
そしてもうひとつ。会員企業は自社のビルを持たないから、来客を迎える窓口そのものを運営側に預けている。受付は会員企業の受付を代行しているという言い方が、この仕事の実態に最も近い。
シェアオフィスの受付は、何十社分の受付を1人で兼ねている
取り次ぐ先が来客ごとに変わる
企業受付なら、取り次ぐ相手は自社の部署に限られる。名簿は1つで、内線表も1枚で足りる。
シェアオフィスでは、この前提が成り立たない。来客が名乗る社名を聞いてから、その会社が何階のどのブースにいるかを引き当てる。次に在館を確認し、その会社が指定している取次方法に従う。会社ごとに「来たら内線」「チャットで通知」「来客は会議室へ直接通す」と運用が違うため、社数の分だけルールが並存する。
覚えるのは人の顔ではなく、会社ごとの手順である。この点で、シェアオフィス受付は接客というより運用管理の仕事に近い。
会員企業の窓口を運営側が引き受けている
小規模な会社が自社で受付を置くのは費用に合わない。シェアオフィスに入る理由の一つがここにあり、来客対応・郵便物の受領・電話の一次応対といった窓口機能を、月額の利用料に含めて運営側から買っている。
だから受付の応対品質は、そのまま会員企業の対外的な印象になる。取次を1回間違えると、影響が出るのは運営会社ではなく会員企業のほうだ。企業受付が担う入館管理の考え方は企業受付の入館管理と取次で整理しているが、シェアオフィスではその責任の宛先が自社ではないという点が違う。
会員管理が業務の重心にある
入退館の権限は契約プランで決まる
シェアオフィスの利用契約は一律ではない。フリーアドレスの席だけを使うプラン、固定席、個室、法人登記や郵便物の受け取りだけを使うプラン。プランごとに入館できる時間帯と使える設備が違う。
受付が管理するのは、この対応表である。24時間利用が可能な会員と、平日9時から18時までの会員が同じエントランスを通る。ICカードやアプリで制御していても、カードを忘れた人、契約更新中の人、体験利用の人が毎日発生する。判断が必要になるのは、システムが弾いた側の人への対応になる。
契約と実態のズレは受付台に出る
1名分の契約で2人が常駐している。登記だけの契約なのに毎日来ている。会議室の予約枠を超えて使い続けている。こうしたズレは、どれも受付台から見える。
受付がその場で判断して止めることはできない。運営側の営業担当に上げて、契約の側で処理する。ここで求められるのは注意する強さではなく、事実を記録して正確に渡す習慣である。誰が、いつ、どの設備を、どれだけ使ったか。記録が残っていない指摘は、契約の話にできない。
共用スペースは「オフィスに近いのに不特定多数がいる」
総務省のガイドラインが指摘している落とし穴
総務省の「テレワークセキュリティガイドライン(第5版)」(令和3年5月)は、シェアオフィスやコワーキングスペースを「サテライトオフィス勤務」の場所として位置づけている。そのうえで、情報漏えいについて次のように注意を促している。コワーキングスペース等で紙資料を用いて作業や打合せを行う場合、「カフェなどと比べてオフィスに近い環境のため、つい気が緩んで紙資料を置き忘れる例があります」。
同ガイドラインはテレワーク勤務者に対して、第三者からののぞき見(ショルダーハッキング)や大声でのオンライン会議による情報漏えい、機器の盗難が起きないよう、テレワークに適した環境で作業することも求めている。
受付の判断は座席と会議室の割り当てに及ぶ
この指摘は、そのまま受付の業務設計につながる。会議室に通す来客と、共用ラウンジで待ってもらう来客を分けるのは、体裁の問題ではない。同業他社の会員が隣の席にいる可能性がある空間で、商談の中身が聞こえる状態を作らないためである。
置き忘れた紙資料が出てきたとき、中身を読まずに保管して持ち主を特定する手順も要る。落とし物として扱うか、機密として扱うかで、その後の連絡の仕方が変わる。受付が「オフィスの人」ではなく「共用空間の管理者」として動く場面が、ここに集中している。
会員の業種は偏っている
情報通信業74.1%、宿泊・飲食業6.0%
| 業種 | 雇用型テレワーカーの割合 |
|---|---|
| 情報通信業 | 74.1% |
| 学術研究、専門・技術サービス業 | 54.0% |
| 医療、福祉 | 6.4% |
| 宿泊業・飲食業 | 6.0% |
国土交通省の令和7年度テレワーク人口実態調査(2025年10月24日から11月4日実施・有効サンプル40,000人、うち雇用型就業者36,391人)による。テレワーカーの割合は業種で12倍以上の開きがある。
シェアオフィスを使う人はテレワーク可能な業種に偏るから、受付が日々接する会員も上位2業種に寄る。IT系のフリーランス、士業、コンサルタント、そこに小規模なスタートアップが混ざる構成になりやすい。
相手の働き方に合わせた対応が要る
会員の多くは、オンライン会議を1日に何本も入れている。受付への問い合わせも、対面より先にチャットやアプリで来る。電話の取次より、通知の見落としを防ぐほうが業務としては重い。
一方で、来館の時間帯は読みにくい。決まった始業時刻がない会員が多く、朝の一斉入館という波が立たない。企業受付のように来客のピークで1日を組み立てる働き方とは、リズムが違う。
待遇と求人の見方
賃金の参照値は受付・案内事務員になる
| 区分 | 実額 | 平均年齢 | 勤続年数 | 労働者数 |
|---|---|---|---|---|
| フルタイム(年収換算) | 約356万円 | 42.0歳 | 8.6年 | 84,880人 |
| パート・アルバイト(時給) | 1,231円 | 50.1歳 | 6.2年 | 84,580人 |
公的統計はシェアオフィスの受付を独立した職種として集計していない。厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査で最も近いのが受付・案内事務員で、年収換算は「きまって支給する現金給与額256,500円 × 12ヶ月 + 年間賞与485,800円」で計算した。
フルタイムとパートの人数がほぼ半々という構成は、この業態にも当てはまる。24時間利用の施設では時間帯別のシフトが組まれ、朝夕だけの短時間募集が出る。
応募前に確認したい3点
- 会員企業の数と、契約プランの種類
- コミュニティ運営(イベント企画・会員紹介)が業務に含まれるか
- 内覧対応と契約手続きの補助まで担当するか
3点はいずれも業務の重心を測るためのものである。2つ目が含まれる場合、募集は「コミュニティマネージャー」の名で出ることが多く、受付業務は全体の一部になる。3つ目まで含むなら営業補助に近い。受付台に座る時間の割合を先に聞いておくと、入社後の想定が合う。勤務時間帯から絞り込む段階ならオフィス系の受付・総合受付の募集で条件を指定できる。
なお、居住者向けの取次業務という点ではマンションコンシェルジュの取次業務と共通する部分がある。相手が会員企業か居住者かで、扱う情報の性質は変わる。
よくある質問
シェアオフィスの受付に資格は必要ですか
必須の資格はない。受付・案内事務員は平均勤続8.6年・平均年齢42.0歳という構成で、資格ではなく実務で層ができている職種である。会員管理でシステムを使う場面が多いため、予約管理ツールや表計算の操作経験のほうが選考では読まれやすい。
コミュニティマネージャーとは何が違いますか
受付業務に加えて、会員同士をつなぐイベント企画や入会促進を担当するのがコミュニティマネージャーである。募集要項に「イベント企画」「会員コミュニティの活性化」が入っていれば、受付台に座る時間は業務の一部にとどまる。
英語は必要ですか
外資系企業や海外からの短期利用者を受け入れる施設では求められることがある。ただし全施設に共通する要件ではない。募集要項に語学要件の記載がない場合、日常の取次で使う定型のやり取りが中心になる。
会員のトラブルにはどう対応しますか
契約プランを超えた利用や騒音の申し出は、受付が判断して止める性質のものではない。事実を記録して運営側に上げ、契約の側で処理するのが基本の流れになる。記録の粒度をそろえておくことが、受付側の実務になる。
一人で対応する時間帯はありますか
24時間利用の施設では、夜間や早朝を1名体制にしている例がある。応募前に、常時何名で回すのか、夜間の緊急連絡先がどこかを確認しておくと、想定の差が小さくなる。
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出典
- 総務省「テレワークセキュリティガイドライン(第5版)」令和3年5月。サテライトオフィス勤務の定義(シェアオフィス・コワーキングスペースを含む)、コラム「情報漏えい」および勤務者が実施すべき対策(https://www.soumu.go.jp/main_content/000752925.pdf)
- 国土交通省「令和7年度 テレワーク人口実態調査」(2025年10月24日〜11月4日実施・有効サンプル40,000人・うち雇用型就業者36,391人)業種別 雇用型テレワーカーの割合(https://www.mlit.go.jp/toshi/kankyo/telework_index.html)
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別・企業規模計10人以上・産業計。受付・案内事務員(一般労働者84,880人/短時間労働者84,580人)
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