企業受付・総合受付の仕事は、来客の受付と入館手続き、電話の取次、会議室と来客予定の管理、そして受付まわりの事務である。
ただ「来客対応の仕事」という説明は、求人票を読むときにあまり効かない。1社が単独で使う自社ビルの受付と、複数のテナントが入るビルの総合受付では、1日の中身がかなり変わる。取り次ぐ相手の数も、入館手続きの重さも同じではない。
もう一つ、この職種の説明で落ちやすいのが入館管理である。来客に記帳してもらい、入館証を渡し、退館時に返してもらう。この一連の作業は接客の延長ではなく、会社のセキュリティ規程から降りてきた業務だ。
企業受付の仕事内容は「取次」と「入館管理」の2本立てになっている
求人票の業務欄には来客対応・電話応対・データ入力と並ぶことが多い。実際の負荷は、この並びの順番どおりには配分されない。
来客対応は3つの動作に分かれる
来客が受付台の前に立ってから席を離れるまでに、受付が処理するのは3つである。用件と訪問先の確認、担当者への連絡、そして応接室または執務フロアへの案内。このうち時間を取るのは2番目で、担当者が席を外していた場合の代替連絡先を押さえているかどうかで、待たせる時間が変わる。
来客名簿の事前共有がある会社では、この3動作が短くなる。逆にアポイントのない訪問(営業、宅配、点検業者)は、その場で判断を求められる。企業受付の実務でつまずくのは、たいていアポイントのない側である。
入館管理はセキュリティ規程の実行にあたる
個人情報保護委員会は、個人データを取り扱う区域の管理について、常に入退室管理が求められるわけではないとしたうえで、サーバや重要な情報システムを管理する区域(管理区域)については「入退室管理の実施、承認されていない記録媒体やカメラ等の持込の制限等が有効な取組」と示している。受付で入館証を渡す運用は、この管理区域の考え方が建物の入口まで下りてきたものと見ると位置づけがはっきりする。
より具体的な線引きは、情報処理推進機構(IPA)が2022年4月に公開した「組織における内部不正防止ガイドライン」第5版に書かれている。同ガイドラインは物理的管理の項目で、出入り可能な領域を決めて領域ごとに入退出管理を行う例として「運送業者はロビーまで、取引先は応接室まで、役職員は共用エリアと業務フロアまで」という区分を挙げ、各管理ポイントで入退出の記録を取ることを求めている。
つまり受付の判断は「どこまで通すか」である。宅配業者をロビーで止めるのも、取引先を応接室から先へ通さないのも、受付が愛想の良し悪しで決めていることではない。ここを規程として理解している人は、断る場面で迷いが少ない。
受付事務との線引きは求人票に出る
来客対応に加えて備品発注、郵便物の仕分け、経費精算の一次処理まで含む募集は「受付事務」と表記される。受付台に座っている時間が半分以下になる職場もある。応募前に見るべきは職種名ではなく、業務欄に事務系の作業がいくつ並んでいるかだ。受付以外の勤務先も含めて全体像を見るなら、勤務先タイプ別の受付の仕事一覧で比較できる。
企業受付の1日の流れは来客のピークで決まる
オフィスの来客は時間帯が偏る。この偏りが、1日の組み立てをほぼ決めてしまう。
始業前から終業までの形
始業前に受付まわりを整え、当日の来客予定と会議室の予約状況を突き合わせる。午前は10時前後、午後は13時から15時にかけて来客が集中し、その谷間で事務を進める。終業前に翌日の来客予定を確認し、入館証の返却漏れを点検して引き継ぐ。
土日休み・平日日中という求人が多いのは、オフィスの営業時間に張り付く職種だからである。受付・案内事務員の超過実労働時間は月7時間(厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査)で、残業で予定が崩れる職種ではない。
複数フロア・複数テナントのビルでは取次の難度が上がる
自社ビルの受付なら、取り次ぐ先は自社の部署だけである。複数テナントが入るビルの総合受付は、この前提が崩れる。訪問先の社名を聞いてからフロアと内線を引き当てる作業が加わり、同名の担当者が別会社にいるといった衝突も起きる。
さらに、テナントごとに入館ルールが違う場合がある。A社は受付で入館証を発行、B社は担当者が下りてきて同行、というように運用が並存する。総合受付の求人に「ビル管理会社からの受託」と書かれているときは、この形を想定しておくとよい。
テレワークが定着したあと、企業受付の役割はどこへ動いたか
来客が減ったのだから受付も減る。そう読みたくなる数字が並んでいる。ただ、実際の統計を開くと、話はそこまで単純にならない。
制度導入34.1%という水準
国土交通省の令和7年度テレワーク人口実態調査(2025年10月24日から11月4日実施・有効サンプル40,000人、うち雇用型就業者36,391人)によると、勤務先にテレワーク制度等が導入されている雇用型就業者は34.1%だった。制度がある就業者のうち実際にテレワークをしたことがある人は64.8%である。
裏を返すと、雇用型就業者の3人に2人は、制度そのものが勤務先にない。オフィスに人が集まる前提は、全体としてはまだ崩れていない。雇用型テレワーカーの割合も25.2%で、前年度から増加に転じている。
減ったのは来客数ではなく「予定外の来客」
在宅勤務が入ると、担当者が社内にいる日と いない日が生まれる。結果として、アポイントなしの訪問に対する受付の回答が「本日は不在です」に寄る。取次の総量が減っても、その場での判断が要る場面は残る。
無人受付システム(タブレットで担当者を呼び出す方式)を入れた会社でも、有人受付を併置する例は多い。機械が処理できるのは訪問先が分かっている来客で、用件のあいまいな訪問は人が引き受ける。
企業受付に向いているのはどんな人か
求められるのは笑顔の質ではない。判断の速さでもない。
判断を保留して確認に回せる人
入館の可否、担当者の在席、通していい範囲。迷った場面で自分の判断を足さず、確認してから返せる人が向く。セキュリティ規程の実行を任されている以上、受付の独断は組織側のリスクになる。
名前と所属を正確に扱える人
社名の表記、担当者の部署、来訪の人数。この3つを取り違えると、その先の全員の時間が動く。文字の記録を正確に残す習慣は、来客対応より事務側の適性に近い。オフィス受付は身だしなみの基準が明確な職場が多く、受付の服装・髪型・ネイルの基準で職場ごとの幅を確認しておくと、応募先の絞り込みが早くなる。
落ち着いた時間帯に事務を進められる人
来客の谷間にデータ入力や郵便の仕分けが入る。切り替えの回数が多く、1つの作業に集中し続ける働き方とは相性が悪い。
企業受付の給料はどのくらいか
公的統計は勤務先の業種別に受付の賃金を分けていない。使えるのは職種区分としての「受付・案内事務員」の数字である。
| 区分 | 実額 | 平均年齢 | 勤続年数 | 労働者数 |
|---|---|---|---|---|
| フルタイム(年収換算) | 約356万円 | 42.0歳 | 8.6年 | 84,880人 |
| パート・アルバイト(時給) | 1,231円 | 50.1歳 | 6.2年 | 84,580人 |
年収換算は「きまって支給する現金給与額256,500円 × 12ヶ月 + 年間賞与485,800円」で計算した。フルタイムとパートの人数がほぼ半々で並ぶのが、この職種の特徴である。企業受付の求人が時給表示と月給表示の両方で出てくる理由も、この構成にある。
未経験から企業受付を始めるにはどうすればよいか
資格の要件はない。選考で見られるのは、正確さと、来客の前に立てるかどうかである。
求人票で確認する4点
- 受付専任か、受付事務かの業務範囲
- 自社受付か、ビル管理会社や人材会社からの受託か
- 入館管理の運用(入館証の発行を受付が行うか)
- 勤務時間とシフトの固定度合い
このうち2番目が待遇に直結する。受託の場合、勤務先は取引先企業のビルで、雇用契約は受託会社と結ぶ。就業規則も評価も受託会社側の基準になるため、同じ「企業受付」でも制度の中身が変わる。条件から絞り込む段階なら企業受付・総合受付の求人一覧で勤務時間と雇用形態を指定して比べられる。
応募時に効くもの
接客経験より、来客名簿や予約表のような「記録を扱った経験」のほうが評価されやすい。販売職からの転職なら、レジ締めや在庫管理の正確さを職務経歴に残しておくと、受付事務側の適性として読まれる。
よくある質問
企業受付に資格は必要ですか
必須の資格はない。受付・案内事務員は平均勤続8.6年、平均年齢42.0歳という構成で、資格ではなく在籍で層が作られている職種である。秘書検定などは選考の補助材料にはなるが、応募要件に置かれることは少ない。
総合受付と企業受付は違う仕事ですか
同じ職種として募集されることが多い。区別があるとすれば取り次ぐ相手の範囲で、自社の部署だけを扱うのが企業受付、複数テナントを扱うのが総合受付という使い分けになる。求人票では建物の使い方(自社ビルか賃貸オフィスか)を見ると判断できる。
テレワークが増えて受付の仕事は減っていますか
勤務先にテレワーク制度等が導入されている雇用型就業者は34.1%で、残る約3分の2には制度自体がない。オフィスへの出社を前提とする会社が多数を占める状況は続いている。
受付から他の職種に移れますか
受付事務として備品発注や経費精算を担当していた場合、一般事務や営業事務への移行が現実的な選択になる。受付専任のまま長く在籍するより、事務の業務範囲を広げるほうが年収は動きやすい。
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出典
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別・企業規模計10人以上・産業計。受付・案内事務員(一般労働者84,880人/短時間労働者84,580人)
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」関連FAQ「個人データを取り扱う区域の管理」(https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q10-15/)
- 独立行政法人情報処理推進機構「組織における内部不正防止ガイドライン」第5版(2022年4月公開)4-3 物理的管理(8)物理的な保護と入退管理(https://www.ipa.go.jp/security/guide/insider.html)
- 国土交通省「令和7年度 テレワーク人口実態調査」(2025年10月24日〜11月4日実施・有効サンプル40,000人・雇用型就業者36,391人)(https://www.mlit.go.jp/toshi/kankyo/telework_index.html)
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