受付秘書・秘書の仕事内容|受付との違いと年収199万円差

受付秘書・秘書の仕事内容と受付との違い|1日の流れ・向いている人・未経験の始め方

秘書は、特定の役員や士業の専門家に付いて、その人の予定と連絡と移動を預かる仕事である。受付は建物や店舗の入口に立ち、誰が来るか決まっていない来客を受ける。

ただ、この区別は求人票の前ではあまり効かない。「受付秘書」という職種名で、2つがまとめて募集されるからだ。

先に数字を置く。厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査で、秘書のフルタイム年収は555万円、受付・案内事務員は356万円だった。差は199万円ある。同じ調査で200万円近く離れた2つの職種が、1枚の求人票に同居している。

そして秘書は、全国に1万9,480人しかいない。

目次

秘書と受付は「誰の予定を預かるか」で分かれる

受付は不特定の来客を、秘書は1人の予定表を受け持つ

受付の仕事は、来た人の側から始まる。誰が何時に来るかは相手が決め、受付はそれを受けて取り次ぐ。1日の組み立ては来客のピークに従う。

秘書の仕事は、付いている人の側から始まる。会議、来訪、出張、会食を予定表の上で並べ替え、移動時間と資料の準備を逆算して埋める。来客の取次はその一部にすぎない。この順序の違いが、そのまま業務の性質を分けている。

「受付秘書」の募集は2つの職種を1人に載せている

役員フロアに受付台があり、そこに座る人が役員のスケジュールも見る。中小企業や士業の事務所では、この形が珍しくない。求人票の業務欄に「来客対応、電話応対、スケジュール調整、出張手配」と4つ並んでいれば、前2つが受付、後ろ2つが秘書の仕事である。

応募前に確かめたいのは、後ろ2つの比重だ。ここが「補助」なのか「担当」なのかで、身につく経験と、次に応募できる求人の範囲が変わる。士業の事務所がこの形を取ったときに何が乗るかは税理士・法律事務所の受付の仕事内容にまとめた。来客の名前を復唱してよいかどうかから運用が変わる。

秘書555万円と受付356万円、199万円の差はどこから出るのか

同じ調査の中で、この2職種はここまで離れている。

区分 秘書 受付・案内事務員
きまって支給する現金給与額 378,000円 256,500円 121,500円
年間賞与 1,012,000円 485,800円 526,200円
年収換算 約555万円 約356万円 約199万円
平均年齢 44.9歳 42.0歳 2.9歳
勤続年数 9.8年 8.6年 1.2年
所定内実労働時間 152時間 160時間 8時間

年収換算は「きまって支給する現金給与額 × 12ヶ月 + 年間賞与」で計算した。

差の半分以上は賞与で開いている

毎月の支給額の差は12万1,500円で、年間にすると145万8,000円。ここに賞与の差52万6,200円が乗って199万円になる。賞与だけで受付側の年間賞与(48万5,800円)を超える差がついている計算だ。

勤続年数は1.2年しか違わない。年齢差も2.9歳。在籍の長さでは説明がつかない差である。

労働時間はむしろ秘書のほうが短い

役員に付く仕事だから拘束が長い、という予想は統計と合わない。秘書の所定内実労働時間は月152時間で、受付の160時間より8時間短い。超過実労働時間は秘書8時間・受付7時間とほぼ同じである。

時給に直すと差はさらにはっきりする。所定内給与額を所定内実労働時間で割ると、秘書2,347円・受付1,510円で、837円の開きになる。同じ時間働いたときの単価が違う職種だと読むほうが実態に近い。

パート・アルバイトでも628円の差がある

区分 1時間当たり所定内給与額 月の実労働日数 1日の所定内労働時間 月収換算
秘書 1,859円 14.6日 6.2時間 約16.8万円
受付・案内事務員 1,231円 13.7日 5.7時間 約9.6万円

短時間勤務でも628円離れている。しかも秘書のほうが勤務日数も1日の時間も長いため、月収では7万円以上の差になる。給与だけを見れば、秘書は受付の上位互換に見える。

秘書という職種は全国に1万9,480人しかない

ところが、母集団を開くと話が変わる。

受付の4分の1以下という規模

職種 フルタイム パート・アルバイト 合計
秘書 19,480人 2,350人 21,830人
受付・案内事務員 84,880人 84,580人 169,460人

フルタイムで比べると、秘書は受付の23.0%。受付職が4.36人いる横に、秘書は1人しかいない。

パート側の差はさらに極端で、受付8万4,580人に対して秘書は2,350人。36倍の開きがある。短時間勤務で秘書を探すという選択肢は、統計上ほとんど存在しない。

高い時給は、席が空かないことの裏返しでもある

1,859円という秘書のパート時給は、受付の1,231円より628円高い。ただし全国で2,350人分の席しかないなら、その時給に応募できる機会は年に何度も回ってこない。

数字の読み方としては、こうなる。秘書の賃金水準は、受付職から目指す先としては現実的な目標である。一方で「受付が埋まっているから秘書で探す」という置き換えは、母数の側が許さない。受付職との賃金の位置関係は受付の年収と給料の実額で分解した。

会食の手配は、店を押さえて終わる仕事ではない

秘書の業務でスケジュール管理と並んで挙がるのが会食の手配である。この2つは、実は同じ作業の表と裏になっている。

予定表は本人より先に動く

役員の予定は、本人の意思だけで決まらない。相手企業の都合、社内会議、移動時間、そして会食の枠。秘書は確定していない予定を仮で押さえ、確定した順に埋め直す。予定表の上では、常に何本かの仮予約が並んでいる状態になる。

この作業に必要なのは判断の速さではなく、動かしたときに何が壊れるかを先に把握していることだ。会議の30分の後ろ倒しが、移動時間を割り、会食の開始に届かなくなる。

会食の手配には税務側の基準が付いている

会食の予約には、経理処理の基準が絡む。国税庁のタックスアンサーNo.5265によると、飲食その他これに類する行為のための費用のうち、支出額を参加者の数で割った金額が1人当たり1万円以下であるものは、交際費等の範囲から除かれる。この金額基準は令和6年4月1日以後に支出する飲食費から、それまでの5,000円以下より引き上げられた。

そして適用には書類の保存が要る。国税庁が挙げている記載事項は、飲食等のあった年月日、参加した得意先など事業関係者の氏名または名称とその関係、参加した者の数、費用の額と飲食店等の名称・所在地である。

つまり会食の手配とは、店に電話を入れる作業ではない。参加者と人数と単価を、あとから経理が処理できる形で記録に残す作業である。秘書の求人票に「出張・会食手配」と1行で書かれているとき、その裏にはこの記録が付いている。受付業務との性質の違いが最も出るのがこの部分だ。

未経験から秘書に入る経路は、受付側から伸びている

秘書に必須の資格はない。選考で見られるのは、記録の正確さと、予定を動かしたときの影響を読めるかどうかである。

勤続9.8年という数字の読み方

秘書の平均勤続は9.8年、平均年齢は44.9歳。新卒でいきなり配属される職種というより、社内で経験を積んだ人が就いている構成に見える。年収555万円という水準も、この勤続の上に乗った数字である。未経験の初年度がこの額になるわけではない。

入口として現実的なのは、企業受付や受付事務として入り、スケジュール調整や来客名簿の管理を担当範囲に加えていく経路だ。役員フロアの受付を任されている人が、そのまま予定表の管理に回るという順序である。

求人票で確認したい3点

  • 誰に付くのか(役員個人か、部門全体か、社長室のような組織か)
  • スケジュール調整の権限(仮押さえまでか、確定まで任されるか)
  • 出張・会食手配の有無と、経費精算まで含むかどうか

3つとも「秘書業務の比重」を測るための質問である。1つ目が「部門全体」で、2つ目が「日程候補の一覧を作るまで」なら、実態は受付事務に近い。逆に会食手配と経費精算まで含むなら、経理処理の知識が要る職種として構えたほうがいい。条件を絞り込む段階なら秘書業務を含むオフィス受付の求人で勤務形態と業務範囲を指定して比べられる。

よくある質問

秘書検定は必要ですか

応募要件に置かれることは多くない。秘書の平均勤続は9.8年で、資格ではなく在籍と実務で層ができている職種である。検定は言葉遣いや文書形式の共通知識を示す材料にはなるが、スケジュール調整や会食手配の経験に置き換わるものではない。

受付秘書と秘書は給料が違いますか

賃金構造基本統計調査は「受付秘書」という区分を持たない。集計は秘書(年収約555万円)と受付・案内事務員(約356万円)に分かれている。求人票が「受付秘書」となっている場合、待遇がどちらの水準に近いかは業務欄の配分で判断するしかない。

未経験でも秘書になれますか

必須の資格がない以上、制度上の壁はない。ただしフルタイムの秘書は全国で1万9,480人と、受付・案内事務員8万4,880人の23.0%にとどまる。募集の絶対数が少ないため、受付や事務で実務を積んでから応募するほうが確率は高い。

パートで秘書として働けますか

短時間勤務の秘書は全国で2,350人。受付・案内事務員の8万4,580人と比べて36分の1である。時給は1,859円と高いが、席そのものが少ない。扶養内や時短で働きたい場合、受付側で探すほうが選択肢は広い。

秘書の残業は多いですか

秘書の超過実労働時間は月8時間、受付・案内事務員は7時間で、差は1時間である。所定内実労働時間はむしろ秘書のほうが8時間短い。役員に合わせて長時間働く職種というイメージは、全国平均の数字とは一致しない。

次に読む

出典

  • 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計・企業規模計10人以上)/短時間労働者 職種別1時間当たり所定内給与額。秘書(一般労働者19,480人・短時間労働者2,350人)、受付・案内事務員(一般労働者84,880人・短時間労働者84,580人)
  • 国税庁 タックスアンサーNo.5265「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」(令和6年4月1日以後に支出する飲食費に係る金額基準1人当たり10,000円以下/保存書類の記載事項)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm)

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この記事を書いた人

受付・コールセンター歴10年の編集者。企業受付・インバウンド・SV(管理者)・採用担当を経験し、現場目線で「受付キャリアナビ」編集部の記事執筆・編集を担当。

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