税理士・法律事務所の受付の仕事内容|守秘義務と繁忙期

税理士・法律事務所の受付の仕事内容|1日の流れ・向いている人・未経験の始め方

税理士事務所と法律事務所の受付は、来客対応と電話の取次、書類の受け渡し、日程の調整を担う。ここまでは一般のオフィス受付と変わらない。

変わるのは、受付台に座った瞬間に何を知ってしまうかである。誰がこの事務所に相談に来たのか。それ自体が、外に出せない情報になる。

そして同じ「士業事務所の受付」でも、税理士事務所と法律事務所では守秘義務の掛かり方が逆になっている。片方は法律が受付を名指しし、もう片方は名指ししていない。

目次

士業事務所の受付が最初に覚えるのは、来客対応ではない

来訪の事実そのものが情報になる

一般企業の受付では、来訪者の社名と担当者名を復唱して取り次ぐ動作が基本になる。士業事務所では、この復唱が問題になる場面がある。待合に他の相談者がいるとき、名前を声に出せば、その人が誰の相談で来ているかが同席者に伝わる。

だから多くの事務所では、来訪者を番号や整理票で扱うか、待合を分ける運用を取る。受付が最初に覚えるのは、この「名前を出さない取次」の型である。

電話の取次でも同じ制約がかかる

電話も同様で、相手が名乗った社名や個人名を、事務所内で大声で復唱する運用は取りにくい。取り次ぐ先が在席していない場合の折り返しも、誰から誰への電話かをメモに残す時点で情報が形になる。

一般オフィスの受付マナーをそのまま持ち込むと、この点でずれる。基本の型は受付のビジネスマナーの基本で整理しているが、士業事務所では「正確に伝える」より「必要な相手にだけ伝わる」を優先する場面がある。

税理士事務所の受付は、法律が直接名指ししている

税理士法54条は「使用人その他の従業者」を対象にしている

税理士本人の守秘義務は税理士法38条にある。ただし受付職に関係するのは、その先の条文である。

税理士法54条は「税理士又は税理士法人の使用人その他の従業者は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、又は盗用してはならない」と定めている。さらに「使用人その他の従業者でなくなつた後においても、また同様とする」と続く。退職後も義務が残るという意味だ。

受付として採用された人も、税理士業務を行う事務所の従業者である以上、この条文の対象になる。事務所の就業規則ではなく、法律が直接かかっている。

罰則は2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金

同法59条1項3号は、38条または54条の規定に違反した場合、その違反行為をした者を2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処すると定める。同条2項で、この罪は告訴がなければ公訴を提起できないとされている。

面接で「守秘義務は守れますか」と聞かれたとき、それが事務所独自のルールではなく条文の話だと分かっていれば、答え方が変わる。

法律事務所は、義務が弁護士の側から降りてくる

弁護士法23条の対象は弁護士本人である

同じ士業でも、弁護士法の構造は違う。弁護士法23条は「弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う」と定めており、対象は弁護士本人と、かつて弁護士だった者に限られている。事務職員を名指しした規定は置かれていない。

税理士法54条のような「使用人その他の従業者」という文言が、弁護士法には無い。ここが2つの士業の分かれ目である。

代わりに、弁護士が指導監督の義務を負う

では法律事務所の受付は自由かというと、そうではない。日本弁護士連合会の弁護士職務基本規程19条は、弁護士に対して「事務職員、司法修習生その他の自らの職務に関与させた者が、その者の業務に関し違法若しくは不当な行為に及び、又はその法律事務所の業務に関して知り得た秘密を漏らし、若しくは利用することのないように指導及び監督をしなければならない」と課している。

つまり法律事務所では、受付が秘密を漏らせば、監督責任が弁護士側に返る構造になっている。税理士事務所は本人に、法律事務所は雇う側に、義務の重心が置かれている

この違いは、入所時の教育の濃さに出る。法律事務所のほうが、着任時に事務所内のルールを細かく説明される傾向があるのは、監督義務がそこにあるからだと読める。

繁忙期の形が、税理士事務所と法律事務所で違う

確定申告期は法律で日付が決まっている

税理士事務所の繁忙は、暦の上にあらかじめ書かれている。所得税法120条は、確定申告書の提出期間を「その年の翌年2月16日から3月15日まで」と定めている。全国の個人の申告がこの1か月に集まる以上、顧問先を抱える事務所の負荷もここに集中する。

法人側にも山がある。法人税法74条は、確定申告書を各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に提出すると定めている。3月決算の法人が多い日本では、5月がもう一つの山になる。

受付の業務量も連動する。来客と電話が増え、資料の受け渡しと返却が重なり、税理士本人の在席時間が読みにくくなる。この時期に短期のパート求人が出るのは、季節要因が法律で固定されているからである。

法律事務所の山は案件ごとに立つ

法律事務所には、全国一斉の締切がない。忙しさは期日と案件の進み方で決まるため、事務所ごと・月ごとにばらつく。裁判の期日が重なれば書面の準備が集中し、そうでない週は落ち着く。

求人を比べるときに効くのはこの差である。税理士事務所は繁忙期を前提にした募集が読み取りやすく、法律事務所は入ってみないと波形が分からない。面接で「1年で最も忙しいのはいつか」を聞いたときの答えの具体性が、そのまま事務所の実態を映す。

求人の母数と待遇は、どこを見て判断するか

税理士のほうが人数は多い

士業 登録者数・会員数 法人数 時点
税理士 82,297名 5,304件 令和8年6月末
弁護士 48,124人 1,896法人 2026年7月1日

税理士は弁護士の約1.7倍いる。事務所の数もそれに応じて多く、受付・事務の募集が出る母数は税理士側のほうが大きい。地方で探す場合、この差は選択肢の数に直結する。

待遇は「受付単体か、会計・書類作成まで含むか」で分かれる

職種区分 フルタイム年収換算 パート時給 平均勤続
受付・案内事務員 約356万円 1,231円 8.6年
会計事務従事者 約509万円 1,593円 12.7年

公的統計は士業事務所の受付を独立した職種として集計していない。使えるのは、業務範囲の近い2つの区分である。年収換算は「きまって支給する現金給与額 × 12ヶ月 + 年間賞与」で計算した。

受付と来客対応だけの募集なら受付・案内事務員の水準、記帳補助や申告書類の作成補助まで含むなら会計事務従事者の水準に近づく。差は153万円あり、時給では362円になる。求人票の職種名ではなく、業務欄に会計処理が入っているかどうかで見当をつけたほうがいい。事務側に寄った働き方は受付事務の業務範囲で整理している。

未経験から入るときに確認したい3点

  • 待合と受付の配置(相談者同士が顔を合わせる構造かどうか)
  • 繁忙期の残業の実績(税理士事務所なら2月から3月、3月決算法人が多ければ5月)
  • 担当業務に記帳・書類作成が含まれるか

3点とも、面接で答えが具体的に返ってくるかどうかが判断材料になる。1つ目に即答できる事務所は、情報の扱いを設計している。3つ目が曖昧なまま採用されると、入所後に業務が広がっても待遇が受付水準のまま据え置かれやすい。条件から絞り込む段階なら事務所受付を含む企業受付の求人で勤務時間と業務範囲を指定できる。

よくある質問

簿記や法律の資格は必要ですか

受付の募集要件に置かれることは多くない。ただし業務範囲が記帳補助まで広がる事務所では、簿記の知識があると担当できる範囲が変わる。統計上も、会計事務従事者の年収換算は約509万円で受付・案内事務員の約356万円を153万円上回っている。

受付でも守秘義務違反で罰せられますか

税理士事務所の場合、税理士法54条の対象は「使用人その他の従業者」なので受付も含まれる。同法59条1項3号により2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められ、同条2項で告訴を要する罪とされている。法律事務所には事務職員を名指しした法律上の規定はなく、弁護士職務基本規程19条により弁護士が指導監督の義務を負う形になっている。

家族や友人に仕事の話をしてもいいですか

事務所名を出して「忙しかった」と話す程度と、誰が相談に来たかを話すことの間には明確な差がある。税理士法54条が禁じているのは「税理士業務に関して知り得た秘密」を漏らすことで、退職後も義務は続く。相談者が特定できる情報は、事務所の外に出さないという線で考えるのが安全である。

確定申告期はどのくらい忙しくなりますか

所得税の確定申告書の提出期間は所得税法120条で2月16日から3月15日と定められており、顧問先の申告がこの期間に集中する。事務所の規模と顧問先数で負荷は変わるため、面接ではこの期間の残業実績と、短期スタッフを入れるかどうかを確認しておきたい。

法律事務所と税理士事務所ではどちらが未経験向きですか

母数では税理士側が広い。税理士は82,297名、弁護士は48,124人で、事務所数の差がそのまま募集数の差になる。一方で法律事務所は監督義務の関係から着任時の教育が手厚くなりやすい。求人の見つけやすさを取るか、教育の厚さを取るかの選択になる。

次に読む

出典

  • 税理士法(昭和26年法律第237号)第38条・第54条・第59条第1項第3号及び第2項(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000237 )
  • 弁護士法(昭和24年法律第205号)第23条(e-Gov法令検索)/日本弁護士連合会「弁護士職務基本規程」(平成16年11月10日会規第70号)第19条 事務職員等の指導監督(https://www.nichibenren.or.jp/)
  • 所得税法(昭和40年法律第33号)第120条(確定所得申告・提出期間は翌年2月16日から3月15日)/法人税法(昭和40年法律第34号)第74条(各事業年度終了の日の翌日から2か月以内)
  • 日本税理士会連合会「税理士登録者数」令和8年6月末日現在(税理士82,297名・税理士法人5,304件)(https://www.nichizeiren.or.jp/cpta/about/enrollment/)/日本弁護士連合会 会員数 2026年7月1日現在(弁護士48,124人・弁護士法人1,896)
  • 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別・企業規模計10人以上・産業計。受付・案内事務員(一般労働者84,880人)、会計事務従事者(一般労働者482,860人)

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この記事を書いた人

受付・コールセンター歴10年の編集者。企業受付・インバウンド・SV(管理者)・採用担当を経験し、現場目線で「受付キャリアナビ」編集部の記事執筆・編集を担当。

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