献血ルームの受付でやることは、来場者の本人確認、献血申込の受付、問診票の案内、待ち時間の調整、記録の入力。窓口の作業としては、他の受付と重なる部分が多い。
重ならないのは雇い主のほうだ。献血ルームは病院でも企業の店舗でもなく、日本赤十字社の施設である。そして受付に来た人の9%は、採血に至らないまま帰る。
この2つが、求人票を読むときにいちばん効く差になる。
献血ルームを運営しているのは、医療機関でも企業でもない
営利目的の採血は、法律が許可しない
安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(血液法)の第13条は、血液製剤の原料とする目的で業として人体から採血しようとする者に、厚生労働大臣の許可を義務づけている。
同条第3項は、許可を与えないことができる場合を挙げており、その3号が「申請者が営利を目的として採血しようとする者であるとき」である。採血を事業にすることが、営利であるという理由で拒める構造になっている。
だから献血ルームは、コンビニやクリニックのように事業者が自由に開けるものではない。開いているのは許可を受けた採血事業者だけである。
日本赤十字社の施設として115か所ある
日本赤十字社が公表している組織概要(令和8年4月1日現在)によると、血液事業の施設は地域血液センター47、その附属施設167で、附属施設には献血ルーム115が含まれる。ほかにブロック血液センターが7、その附属施設(製造所)が4ある。血液事業に従事する職員は225施設で5,743人である。
日本赤十字社そのものは、昭和27年8月14日に制定された日本赤十字社法に基づく法人だ。つまり応募先は、医療法人でも株式会社でもない。
実際の募集の形も違う。東京都赤十字血液センターが出している職員採用の案内は「常勤嘱託職員(事務職)」という枠である。クリニックの「受付パート募集」とは、職種名も雇用形態の呼び名も揃っていない。求人サイトで「献血ルーム 受付」と検索して出てこないときは、各都道府県の血液センターの採用ページ側を見るほうが早い。
窓口に来た人の9%は、採血に至らない
令和7年度、申込549万人に対して献血者は500万人
日本赤十字社の血液事業年度報(令和7年度)によると、献血申込者数は5,497,779人、実際の献血者数は5,001,234人だった。申込に対する比率は91.0%。差の496,545人、申込者の9.0%が献血できずに帰っている。
理由の半分近くは、その場で測って初めてわかる
同じ年度報が、できなかった理由の内訳を出している。
| 理由 | 人数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 血色素(ヘモグロビン)が基準に届かない | 224,881人 | 45.3% |
| その他(体重不足・本人都合の辞退など) | 88,859人 | 17.9% |
| 問診該当②(海外旅行の直後など。期間を置けば可) | 82,974人 | 16.7% |
| 服薬 | 36,988人 | 7.4% |
| 血圧 | 26,456人 | 5.3% |
| 事前検査(血算・心電図) | 25,119人 | 5.1% |
| 問診該当①(輸血歴やウイルスの持続保有など) | 11,268人 | 2.3% |
最も多い血色素は、来場して測定するまで本人にもわからない。問診該当②の8万人も、旅行の日付を聞いて初めて判明する。
つまりこの窓口では、断る場面が例外ではなく手順の一部として組み込まれている。医療機関の受付が「受け入れて次へ通す」ことを前提に作られているのに対し、献血の受付は通す人と、その日は通せない人を分ける工程を持っている。断り方の設計そのものが業務に含まれる受付は、他にあまりない。
本人確認で辞退してもらう基準まで決まっている
顔写真つきの証明書が要る
日本赤十字社が示す献血の手順によると、2018年4月1日以降、初めて献血する人と、前回の献血時に本人確認の証明書を提示できなかった人には、①氏名②生年月日③顔写真の3項目が確認できる証明書の提示を求めている。1種類で3項目が揃わない場合は、複数の証明書の提示を依頼する。
そして「2回連続して証明書などが提示いただけない場合は、献血を辞退いただきます」と明記されている。判断の基準が公表されている以上、窓口はその場の裁量で通すことができない。
受付の方法が令和8年に切り替わった
献血カードと献血手帳の新規発行・更新は、令和8年1月4日で終了した。翌1月5日から、献血の受付方法は献血Web会員サービス「ラブラッド」に統一されている。
長く使われてきたカードが窓口から消えた直後である。カードを持って来場する人への案内が、当面は毎日発生する。医療受付に共通する保険資格確認や会計の話はクリニック・病院受付の仕事内容に整理してあるが、献血ルームにはそもそも会計がない。窓口の手順は別系統で組まれている。
1日約69人。ただし1人あたりの滞在時間が4倍違う
献血ルームが献血者の54.8%を受け入れている
血液事業年度報で受入施設別の内訳を見ると、令和7年度の献血ルームの献血者数は2,741,085人で全体の54.8%。開設日数39,570日で割ると、1日あたり69.3人になる。献血バスは1,914,737人(38.3%)、血液センターは263,905人(5.3%)、事業所や学校で行うオープン献血は81,507人(1.6%)だった。
全血は10〜15分、成分献血は40〜90分
献血の手順によると、採血時間は全血献血で10〜15分程度、成分献血は採血量に応じて40〜90分程度かかる。献血後は少なくとも10分以上の休憩を求めている。
同じ69人でも、成分献血の比率が高い日はベッドが埋まったまま動かない。令和7年度の献血者500万人の内訳は、400mL献血330万人、成分献血157万人、200mL献血13万人である。3人に1人が成分献血だと考えると、待ち時間の読み方は人数だけでは組めない。
受付が見ているのは列の長さではなく、ベッドの空く時刻である。加えて、令和5年5月1日から献血ルームなどの固定施設では献血前の体重測定が必須になっており、受付から採血までの間に通る工程も増えている。
給料と、応募先の探し方
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査に「献血ルームの受付」という職種区分はない。窓口業務は担当範囲に応じて集計されるため、比較できるのは事務職の区分だけである。
| 統計上の職種 | 正社員の年収換算 | パートの時給 | 平均勤続 |
|---|---|---|---|
| 受付・案内事務員 | 356万円 | 1,231円 | 8.6年 |
| その他の保健医療サービス職業従事者 | 323万円 | 1,281円 | 6.4年 |
いずれも全産業の平均で、血液センターに限った数字ではない。日本赤十字社の職員としての処遇は各センターの規程によるため、公的統計から水準を推定するのは難しい。
応募先の探し方のほうが、この職種では重要になる。全国115か所の献血ルームは47の地域血液センターに属しており、募集は各センターの単位で出る。医療系の受付求人を広く見たい場合は医療・クリニック受付の求人カテゴリから条件で絞り込めるが、献血ルームに限って探すなら、都道府県の血液センターの採用情報を直接確認するのが確実である。
よくある質問
資格がなくても働けますか
受付・案内の範囲であれば資格要件はない。問診は医師、採血は看護師などの有資格者が担当する。受付が担当するのは本人確認、申込の受付、問診票の案内、待ち時間の調整、記録の入力になる。
採血の場面に立ち会うことはありますか
採血そのものには関わらない。ただし献血後は少なくとも10分以上の休憩が求められており、体調が変化する人が出る場所でもある。異変に気づいたら職員に知らせる動きは、窓口担当にも共通して求められる。
献血ルームの受付はきついですか
人数の多さより、断る場面の多さが特徴になる。全国の申込者のうち9.0%、年間で約50万人が献血に至らずに帰っている。理由の45.3%は血色素が基準に届かないもので、本人が予期していないことが多い。説明の負荷はここに集中する。
医療機関の受付経験は活かせますか
来場者対応と記録入力は共通する。一方で保険資格の確認も会計もないため、覚え直しになる部分は大きい。健診機関との共通点のほうが多く、手順の性格は健康診断・人間ドック受付の仕事内容に近い。
求人はいつ出ますか
各都道府県の赤十字血液センターが個別に出すため、時期は一定しない。東京都赤十字血液センターの例では「常勤嘱託職員(事務職)」という枠で募集が掲載されている。センターの採用情報ページを定期的に見るのが現実的な探し方になる。
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出典
- 日本赤十字社「組織概要」(令和8年4月1日現在/地域血液センター47・附属施設167(献血ルーム115を含む)・ブロック血液センター7・血液事業の職員5,743人・日本赤十字社法は昭和27年8月14日制定)https://www.jrc.or.jp/about/organization_summary/
- 日本赤十字社「血液事業年度報(令和7年度)」(令和7年4月〜令和8年3月累計/献血申込者数5,497,779人・献血者数5,001,234人・献血ができなかった人数496,545人とその内訳/受入施設別献血者数)https://www.jrc.or.jp/donation/pdf/20260610_R7nendoho.pdf
- 日本赤十字社「献血の手順」(本人確認の3項目・2回連続して提示がない場合の辞退・採血時間・休憩10分以上・令和8年1月5日からのラブラッドへの統一・令和5年5月1日からの体重測定必須化)https://www.jrc.or.jp/donation/about/process/
- 安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(昭和31年法律第160号)第13条 https://laws.e-gov.go.jp/law/331AC0000000160
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別の給与額/短時間労働者 職種別1時間当たり所定内給与額(企業規模計10人以上・産業計)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html
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