受付とコールセンターを職種名で比べても、働き方の違いはあまり見えてこない。違いが出るのは職種ではなく、契約に書かれる4つの数字と条件のほうである。週の所定労働時間、週の所定労働日数、勤務場所、勤務する時間帯。この4つが決まれば、扶養に収まるか、在宅にできるか、時給がいくらの水準になるかは、ほぼ自動的に決まる。
順番も決まっている。先に決めるほど後戻りしにくい。
まず、印象と統計がずれている点をひとつ。受付はパート中心、コールセンターは腰を据えて働く職場、という並びで語られることが多い。厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査で人数を数えると、短時間労働者の割合は受付・案内事務員が49.9%、電話応接事務員(コールセンターのオペレーターを含む区分)が35.2%だった。短時間で働く人の比率が高いのは、受付のほうである。
働き方を決めているのは、職種ではなく4つの変数
受付とコールセンターの人数分布は、印象と逆になっている
令和6年賃金構造基本統計調査(企業規模計10人以上・男女計)から、2職種の労働者数を並べる。
| 職種 | 一般労働者(フルタイム) | 短時間労働者 | 短時間の割合 |
|---|---|---|---|
| 受付・案内事務員 | 84,880人 | 84,580人 | 49.9% |
| 電話応接事務員 | 179,540人 | 97,730人 | 35.2% |
受付はフルタイムと短時間がほぼ同数で並ぶ。コールセンターはフルタイムが約2.1倍で、短時間は3人に1人程度にとどまる。
深夜帯まで開いている窓口があることから、コールセンターは短時間シフトの職場という印象を持たれやすい。ところが人数の重心はフルタイム側にある。逆に受付は営業時間に張り付く仕事だが、その営業時間を複数人で分けているため、短時間の枠が半分を占める。求人の見え方と、実際に働いている人の分布は一致しない。
4つの変数は、それぞれ別のものを決めている
| 変数 | 決まるもの |
|---|---|
| 週の所定労働時間 | 社会保険に加入するか(20時間の線) |
| 週の所定労働日数 | 子の看護等休暇などの対象になるか(2日以下は労使協定で除外可) |
| 勤務場所 | 在宅にできるか。ほぼ応募先の業種と委託元で決まる |
| 勤務する時間帯 | 時給の水準。深夜帯は2割5分以上の割増になる |
4つのうち、自分で動かせるのは1つめと2つめ、そして4つめの一部である。3つめは応募の段階で選ぶしかない。あとから交渉して変えられる変数と、最初に選ばないと変えられない変数が混ざっている。この区別が、求人を絞る順番を決める。
なお、フルタイムを選んだ場合でも労働時間そのものは長くない。同じ調査の一般労働者は、受付・案内事務員が所定内実労働160時間・超過7時間、電話応接事務員が154時間・超過8時間である。残業は月1桁時間にとどまる。時間を長くする方向の選択肢が、青天井に伸びる職種ではない。
いちばん太い線は、週20時間のところにある
パートの平均は、週18.0時間と19.1時間
短時間労働者の平均像を、月の労働時間に直す。受付・案内事務員は1日5.7時間・月13.7日で78.1時間、電話応接事務員は1日5.9時間・月14.0日で82.6時間になる。週あたりでは18.0時間と19.1時間である。
どちらも20時間の手前で止まっている。社会保険の加入要件のひとつが「週の所定労働時間が20時間以上」であることを考えると、偶然そうなったとは考えにくい。平均年齢50.1歳・50.2歳、勤続6.2年・5.7年という平均像とあわせて読むと、加入しない側に寄せたシフトが長く続いた結果がこの数字に出ている、と見るほうが自然だろう。
2026年10月からは、時給では調整できなくなる
社会保険の加入要件は、所定内賃金が月額8.8万円以上、週の所定労働時間が20時間以上、勤め先の従業員数51人以上、学生ではないことの4つである。このうち賃金要件は2026年10月に撤廃される予定で、理由は最低賃金の上昇にある。企業規模要件も2027年10月に36人以上へ下がり、その後さらに引き下げられる。
撤廃後は、週20時間の一点で決まる。時給が上がったから勤務時間を減らして調整する、という手が使えなくなる。金額の境界と手取りの動きは扶養内で働く受付・コールセンターで実額を出して整理した。
在宅で働けるかは、応募先の事情で決まる
実施は60%、実施しない理由の8割はセキュリティ
日本コンタクトセンター協会が2025年6月から7月に実施したコンタクトセンター企業実態調査(対象109社・回答68社)では、在宅オペレーションを「既に実施している」と答えた企業が非公開を除く65社中39社で60%だった。
実施しないと答えた22社に理由を聞くと、「セキュリティ上の問題」が18社で81.8%と最も多く、「クライアントの要望」が12社で54.5%、「労務管理上の問題」が11社で50.0%と続く。
在宅にできるかどうかは、扱う情報の種類と委託元の意向で決まっている。応募者の事情で動く変数ではない。在宅で働きたいなら、入社後に相談するのではなく、最初から在宅の募集を選ぶことになる。
伸び方も鈍っている。同調査で2024年度と比較できる54社を見ると、「すでに実施」は31社から30社へ、「実施予定なし」は20社から19社へと、ほぼ横ばいで推移した。増えたのは「実施予定あり」の2社から4社だけである。在宅枠が今後どんどん広がる前提で職場を選ぶのは、いまの数字からは支持されない。
在宅は育児支援として始まったわけではない
実施している39社が挙げた理由は、「働き方の多様化のため」が33社で84.6%、「BCP対策のため」が24社で61.5%、「採用が容易である」が15社で38.5%だった。
人が採れないことと、災害時に窓口を止めないこと。この2つが先にあり、結果として自宅から働ける枠ができた、という順番である。だからこそ、在宅の求人は募集の条件が固い場合がある。必要な通信環境や、勤務時間中の在席の扱いは職場ごとに違う。準備するものと採用の流れは在宅コールセンターの始め方にまとめた。
時間帯を動かすと、時給の水準と労働時間の計算が変わる
深夜は2割5分以上の割増になる
労働基準法は、午後10時から午前5時までの間に労働させた場合、通常の労働時間の賃金の2割5分以上の割増賃金を支払うよう定めている。短時間労働者の平均時給1,363円で計算すれば、深夜帯は約1,704円になる。
夜間のコールセンター求人の時給が日中より高いのは、この割増が乗っているためである。深夜手当を含んだ金額を「時給」として表示している求人もあるため、日中の求人と並べるときは割増前の額に戻して比べたい。夜勤のシフトの組み方と体への負担は夜勤・深夜のコールセンターの働き方で扱っている。
掛け持ちをすると、時間は足し算される
もうひとつ、時間帯を分散させる働き方には計算上の制約がある。労働基準法38条1項は、労働時間は事業場を異にする場合においても通算すると定めており、事業主が違う場合も含まれる。昼に別の仕事で5時間働いてから夜に4時間入れば、その日は9時間として扱われる。
通算して1日8時間・週40時間を超えた分は法定外労働になり、割増賃金の対象になる。負担するのは、原則としてあとから労働契約を結んだ勤務先である。掛け持ちを前提に応募するときは、本業の所定労働時間を先に伝えたほうが話が早い。この計算の詳細はコールセンターのバイト・Wワークで追った。
雇用形態は、時間とは別の軸で決まっている
直接雇用が多数派だが、88.1%が派遣も使う
同じ実態調査で、オペレーターの雇用状況を答えた67社のうち「直接雇用の方が派遣より多い」が52社で77.6%を占めた。一方で「直接雇用のみ」は8社にとどまり、派遣を何らかの形で活用している企業は59社、88.1%に達する。派遣のみという企業はない。
派遣活用の理由の最多は「一時的な人材不足の解消」で88.1%、次いで「受託案件への柔軟な対応」が55.9%だった。派遣枠は案件の増減を吸収するために置かれている。同じ現場で同じ電話を取っていても、直接雇用か派遣かで、時給の高低ではなく契約が続く見通しのほうが変わる。
不足しているのは、オペレーターよりスーパーバイザー
職種ごとの過不足を答えた66社では、スーパーバイザーに不足感があると答えた企業が58社で87.9%、コミュニケーター・オペレーターが48社で72.7%だった。過剰気味と答えた企業はどちらの職種にもない。
同じ調査によると、スーパーバイザー1人あたりが受け持つコミュニケーターの数は平均8.93人で、2023年度8.54人、2024年度8.83人と3年続けて増えている。管理者の補充が現場の増員に追いついていない状態が続いている、と読める数字である。
不足の度合いは管理者側のほうが強い。時間を短くして働き続けるか、時間を伸ばして役職に進むかで、伸びしろの向き先が変わる。4つの変数を決めるとき、いまの生活に合わせるだけでなく、数年後にどちらへ動かしたいかも一緒に考えておきたい。
決める順番は、時間・日数・場所・時間帯
求人票では、この順で確認する
ここまでの4つを、求人票で確認する順に並べ直す。
- 週の所定労働時間。20時間以上かどうかで社会保険の扱いが分かれる
- 契約上の週の所定労働日数。2日以下だと子の看護等休暇などから外れる場合がある
- 勤務場所。在宅可否は応募後の交渉では動きにくい
- 勤務する時間帯。深夜帯を含むかどうかで、同じ職種でも時給の見え方が変わる
上の2つは契約時に決める数字で、下の2つは応募先を選んだ時点でほぼ決まる。順番としては、下の2つで応募先を絞り、上の2つを面接で詰めるほうが手戻りが少ない。
求人を並べて見るときは受付・コールセンターの求人を探すページで、勤務地と勤務時間帯を先に指定してから時給を見ると、比較の条件が揃う。時給から入ると、割増込みの表示と割増前の表示が混ざったまま並ぶ。
40代・50代から始める人が主流になっている
短時間労働者の平均年齢は50歳前後
賃金構造基本統計調査の短時間労働者の平均年齢は、受付・案内事務員が50.1歳、電話応接事務員が50.2歳である。勤続年数は6.2年と5.7年。40代・50代で入って数年続けている人が、この職種の平均像を作っている。
年齢を理由に入り口が狭いと考える必要は薄い。同じ実態調査で、採用活動に「苦労している」26社と「やや苦労している」29社を合わせた45社が、非公開を除く67社の82.1%を占めている。
シニアの雇用は、35.3%が積極的と答えた
60歳以上の雇用・採用について、「積極的である」12社と「やや積極的である」12社を合わせた24社が35.3%、「どちらとも言えない」が31社で45.6%、消極的が13社で19.1%だった。
積極と消極では積極が上回るが、半数近くは態度を決めていない。年齢そのものより、週に何日・何時間確実に入れるかで判断される場面が多い、と読むほうが実際に近いだろう。この点でも、先に決めるべきは4つの変数のほうになる。
よくある質問
受付とコールセンター、短時間で働きやすいのはどちらですか
人数の分布では受付である。短時間労働者の割合は受付・案内事務員が49.9%、電話応接事務員が35.2%だった。ただし在宅の選択肢はコールセンター側にあり、企業の60%が在宅オペレーションを実施している。勤務地を動かしたくないなら受付、通勤をなくしたいならコールセンターという分かれ方になる。
扶養の範囲で働きたい場合、何から決めればいいですか
週の所定労働時間から決める。社会保険の加入要件は週20時間以上で、賃金要件は2026年10月に撤廃される予定である。時給の高低で年収を調整する方法は使えなくなるため、契約時間そのものを先に決めることになる。
在宅勤務の求人は、あとから在宅に変えてもらえますか
変えにくい。在宅を実施しない企業が挙げた理由は「セキュリティ上の問題」が81.8%、「クライアントの要望」が54.5%で、いずれも個人の事情で動く条件ではない。最初から在宅の募集を選ぶほうが確実である。
夜勤にすると、時給はどのくらい上がりますか
午後10時から午前5時の労働には2割5分以上の割増賃金が必要になる。短時間労働者の平均時給1,363円なら約1,704円が目安になる。ただし求人票の表示額に割増が含まれている場合があるため、日中の求人と比べるときは内訳を確認したい。
未経験でも入れますか
コンタクトセンター企業の82.1%が採用に苦労していると答え、オペレーターの不足感は72.7%にのぼる。過剰と答えた企業はない。短時間労働者の平均勤続年数が6年前後であることも踏まえると、入り口は狭くない。
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出典
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別きまって支給する現金給与額・所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)/短時間労働者 職種別1時間当たり所定内給与額(企業規模計10人以上・男女計)
- 一般社団法人日本コンタクトセンター協会「2025年度 コンタクトセンター企業 実態調査」(対象109社・回答68社・回収率62.4%・2025年6月16日〜7月23日実施)
- 厚生労働省「短時間労働者の社会保険の加入拡大のポイント」(令和8年1月作成)(週20時間以上・月額8.8万円以上・従業員51人以上・学生ではないこと/賃金要件は2026年10月に撤廃予定)
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」深夜割増に関するQ&A(午後10時から午前5時までの労働は2割5分以上の割増賃金)
- 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説」(2025年3月)(労働基準法38条1項による労働時間の通算)
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