日本コンタクトセンター協会(CCAJ)が2025年度に実施したコンタクトセンター企業実態調査では、コールセンターの受託企業68社のうち、「直接雇用の方が派遣より多い」と答えた企業が52社あった。非公開の1社を除いた67社の77.6%にあたる。
数字だけ見れば、直接雇用が多数派である。ところが同じ設問で、派遣を何らかの形で使っている企業は59社、88.1%に達した。「派遣のみ」の企業はゼロだった。
つまり業界の標準形は、直接雇用が主で派遣が従、という混在である。派遣と正社員は別々の会社にあるのではなく、たいてい同じセンターの中に並んでいる。だとすると選ぶべきものは会社ではなく、同じ現場に用意された2つの枠のどちらか、ということになる。受付・コールセンターの働き方の全体像を押さえたうえで、ここでは枠の性質の差を見る。
同じセンターに、直接雇用と派遣がどんな比率で並んでいるのか
直接雇用の割合はセンターごとに大きく違う
同調査で直接雇用の割合を答えた企業の分布は次の通りだった。
| 直接雇用の割合 | 企業数 |
|---|---|
| 100%(直接雇用のみ) | 8社 |
| 91%以上100%未満 | 5社 |
| 81%以上90% | 10社 |
| 71%以上80% | 9社 |
| 61%以上70% | 17社 |
| 51%以上60% | 5社 |
| 41%以上50% | 3社 |
| 21%以上30% | 1社 |
| 11%以上20% | 1社 |
| 1%以上10% | 1社 |
| 非公開・未回答 | 8社 |
最も多いのは61%以上70%の17社で、直接雇用が10割の企業も8社ある。一方で、直接雇用が1割台以下という企業も2社あった。
同じ業界内で、オペレーターのほぼ全員が自社の社員という会社と、大半が派遣という会社が併存している。求人票の時給を並べても、この差は見えない。
「派遣のみ」がゼロであることの意味
派遣だけで現場を回している企業は1社もなかった。裏を返せば、どのセンターにも直接雇用のオペレーターが必ずいる。
派遣で入った人が「この会社に直接雇用の枠はあるのか」と考えるとき、答えは基本的にある。問題は枠の有無ではなく、そこへ移る条件が示されているかどうかに移る。
企業が派遣を使う理由は、派遣枠の性質をそのまま説明している
上位2つは、どちらも量の調整である
派遣を活用していると答えた59社に、その理由を複数回答で聞いた結果がこうなっている。
- 一時的な人材不足の解消:88.1%
- 受託案件への柔軟な対応:55.9%
- 採用業務の効率化:39.0%
- 即戦力の補填:30.5%
- 専門性の高い人材確保:18.6%
- 雇用リスク(解雇)の回避:15.3%
- コスト削減:5.1%
- 給与計算・社会保険の負担の軽減:3.4%
上位2つは、いずれも人数の増減を吸収する用途である。案件が増えれば人を足し、終われば戻す。派遣枠がこの機能を担っているなら、契約の終わりは案件の終わりに連動する。
「専門性」と「コスト削減」は下位に沈んでいる
見落としやすいのは下のほうである。「専門性の高い人材確保」は18.6%、「コスト削減」は5.1%にとどまった。
派遣を技能の調達手段として使っている企業は2割に満たない。そして、安く済ませるために使っているという回答はほとんどない。派遣の時給が直接雇用より高く設定されている求人は珍しくないが、その高さは技能への評価ではなく、期間が限られていることの対価だと読むほうが実態に近い。
給料の差はどこに出るのか
フルタイムの年収394万円と、短時間の時給1,363円
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査では、コールセンターのオペレーターは「電話応接事務員」(電話交換手を含む職種区分)として集計される。
| 区分 | 金額 | 平均年齢 | 勤続年数 | 労働者数 |
|---|---|---|---|---|
| 一般労働者(フルタイム)年収換算 | 約394万円 | 43.6歳 | 7.8年 | 179,540人 |
| 一般労働者の時給換算 | 1,803円 | ー | ー | ー |
| 短時間労働者の1時間当たり所定内給与額 | 1,363円 | 50.2歳 | 5.7年 | 97,730人 |
年収換算は「きまって支給する現金給与額295,200円×12ヶ月+年間賞与393,700円」、時給換算は「所定内給与額277,700円÷所定内実労働時間154時間」で計算した。
この調査はフルタイムと短時間の区分であり、正社員と派遣を直接比べた数字ではない。それでも差の出どころは分かる。フルタイムの年間賞与393,700円に対し、短時間労働者の年間賞与は20,100円である。時給の差440円より、賞与の差のほうが大きい。
時給の高さだけでは埋まらないもの
フルタイムの所定内実労働時間は月154時間、超過実労働時間は8時間。残業で年収を積み上げている職種ではない。
だとすれば、直接雇用の側が持っている優位は労働時間ではなく、賞与と昇給の経路にある。給料の全体像はコールセンターの年収・給料の実額で細かく分解した。
派遣にだけ付いてくる期限は、法律で決まっている
3年の制限は2種類ある
労働者派遣法には期間制限が2つある。ひとつは事業所単位で、派遣先の同一事業所が派遣を受け入れられるのは原則3年が限度である。延長するには、その事業所の過半数労働組合などから意見を聴く手続きが要る。
もうひとつは個人単位で、同じ派遣労働者を派遣先の同一組織単位(課など)で受け入れられるのは3年が上限になる。事業所単位の期間を延長しても、この3年は動かない。
「同じ席に3年」という上限が最初から設定されている点が、直接雇用との最大の違いである。
期間制限の対象にならない派遣もある
次の場合は期間制限がかからない。
- 派遣元事業主に無期雇用されている派遣労働者
- 60歳以上の派遣労働者
- 事業の開始・転換などに伴う有期プロジェクト業務
- 日数限定業務(1ヶ月の勤務日数が通常の労働者の半分以下かつ10日以下)
- 産前産後休業・育児休業・介護休業などを取得する労働者の代替
このうち求職者が自分で選べるのは、無期雇用派遣という契約形態である。派遣元と期間の定めのない雇用契約を結ぶ形で、3年で席を空ける必要がなくなる。同じ「派遣」でも登録型とは別物として扱われる。
3年で終わるとき、派遣元には義務がある
期間制限で就業が終わる派遣労働者に対し、派遣元は雇用安定措置を講じる必要がある(労働者派遣法第30条)。内容は、派遣先への直接雇用の依頼、新たな派遣先の提供、派遣元による無期雇用、その他雇用の安定を図るために必要な措置の4つである。
同一組織単位への派遣が継続1年以上なら努力義務、3年に達する見込みなら義務になる。3年目に入る前に「このあとどうしますか」と聞かれるのは、担当者の親切ではなく制度上の手続きである。
派遣から直接雇用へ移る道は、制度として敷かれている
派遣先にも努力義務と情報提供の義務がある
派遣先の側にも規定がある。同一の組織単位の同一業務に1年以上従事した有期雇用派遣労働者について、本人が継続就業を希望し、派遣元から直接雇用の依頼があるなどの条件を満たす場合、派遣先は直接雇い入れるよう努める必要がある(同法第40条の4)。
加えて、その事業所で正社員を募集するときは、継続して1年以上受け入れている派遣労働者にも募集情報を知らせなければならない。求人サイトに出す前に、まず現場の派遣スタッフに情報が回る仕組みになっている。
制度があることと、枠が空いていることは別である
ここで数字に戻る。CCAJ調査で2024年度と比較できた50社の総従業員数は269,560人から264,151人へ5,409人減った。一方、比較できた47社の正規社員数は38,916人から40,977人へ2,061人増えている。
全体の頭数は減り、正規社員だけが増えた。直接雇用の枠が閉じていく局面ではない。ただし総従業員数に占める正規社員が5割未満という企業は、非公開12社を除いた56社中38社(67.9%)を占める。正規は増えているが、依然として少数派である。
採用の側も緩んではいない。採用活動に「苦労している」「やや苦労している」と答えた企業は45社で、非公開1社を除く67社の82.1%にのぼった。未経験からの入り口は広い一方、入ったあとの枠の移動は自動では進まない。未経験歓迎の受付・コールセンター求人特集で入り口を見る場合も、雇用形態の欄は最初に確認したい。
求人票のどこを見て決めるか
見るべきは時給ではなく、終わり方と移り方
派遣と直接雇用のどちらで応募するかは、次の4点で判断がつく。
- 契約期間の記載。有期なら更新の上限が書かれているか
- 派遣の場合、派遣元との契約が有期か無期か。無期なら3年の期間制限はかからない
- 直接雇用への登用制度の有無と、その実績年数
- 賞与の月数。短時間労働者の年間賞与は平均20,100円で、記載がなければこの水準を想定しておく
4点のうち最も差が出るのは2番目である。同じ派遣でも、無期雇用派遣かどうかで3年後の景色が変わる。
元の勤務先へ派遣で戻ることはできない
見落とされやすい規定がひとつある。企業は、自社で直接雇用していた労働者を、離職後1年以内に派遣として受け入れられない(60歳以上の定年退職者は除外)。
正社員やアルバイトとして働いた会社を辞め、時間の融通が利く派遣として同じ職場に戻る、という選択は1年間できない。辞める順番を決めるときに効いてくる制限である。
よくある質問
コールセンターは派遣と正社員のどちらが多いですか
CCAJの2025年度調査では、「直接雇用の方が派遣より多い」が52社で、非公開1社を除いた67社の77.6%を占めた。ただし派遣を活用している企業も59社(88.1%)あり、「派遣のみ」はゼロだった。多数派は直接雇用だが、派遣を使わない会社はほとんどない。
派遣の時給が高いのはなぜですか
CCAJ調査で派遣活用の理由を見ると、「コスト削減」は5.1%、「専門性の高い人材確保」は18.6%と低い。上位は「一時的な人材不足の解消」88.1%と「受託案件への柔軟な対応」55.9%で、いずれも人数の調整が目的である。時給の高さは技能への評価というより、期間が限られていることに対応していると読める。
派遣は3年で必ず辞めることになりますか
同一組織単位への派遣は3年が上限だが、派遣元に無期雇用されている場合や60歳以上の場合は期間制限の対象外になる。また期間満了で就業が終わる場合、派遣元には雇用安定措置(派遣先への直接雇用の依頼・新たな派遣先の提供・派遣元での無期雇用など)の義務がある。
派遣から正社員になれますか
制度上の経路はある。1年以上同じ組織単位で働いた有期雇用派遣労働者について派遣先には直接雇用の努力義務があり、正社員募集時には情報を知らせる義務もある。ただしCCAJ調査では正規社員が5割未満の企業が67.9%を占めており、枠が広いとは言えない。応募時に登用実績を聞いておきたい。
未経験でも直接雇用で入れますか
同調査で採用に苦労していると答えた企業は82.1%にのぼる。人手が足りない状態が続いているため、未経験の入り口は狭くない。ただし直接雇用の割合はセンターによって1割台から10割まで開きがあるので、応募先ごとに確認するしかない。求人票に雇用形態が「派遣・直接雇用いずれも可」と併記されている場合は、どちらの枠で採用されるのかを応募前に確認しておいたほうがいい。
次に読む
出典
- 一般社団法人日本コンタクトセンター協会「2025年度 コンタクトセンター企業 実態調査」(対象109社・回答68社・回収率62.4%・2025年6月16日〜7月23日実施)
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別きまって支給する現金給与額・所定内給与額・年間賞与その他特別給与額(産業計)/短時間労働者 職種別1時間当たり所定内給与額(企業規模計10人以上)
- 厚生労働省「派遣労働者を受け入れるときの主なポイント」(期間制限・離職後1年以内の受入禁止・募集情報の提供)
- 宮城労働局「労働者派遣『3年期間制限』早わかりQ&A」(雇用安定措置の4類型と努力義務・義務の区分)
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