クリーニング店の受付は、洗濯物を預かり、料金と仕上がり日を案内し、仕上がった品を渡すまでを担う仕事である。
ただ、この説明は求人票を読むときにあまり役に立たない。同じ受付でも、洗いの設備を持つ一般クリーニング所か、預かりと引渡しだけの取次所かで、覚える範囲も一緒に働く人数も変わるからだ。
しかも「向いている人」の条件は、感覚ではなく厚生労働省の文書に書かれている。そこから逆算したほうが早い。
クリーニング店の受付の仕事内容とは何か
クリーニング業法(昭和25年法律第207号)は、クリーニング業を「溶剤又は洗剤を使用して、衣類その他の繊維製品又は皮革製品を原型のまま洗たくすること」を営業とすることと定めている。厚生労働省が示す同法の概要によれば、この「クリーニング行為」には水洗いやドライクリーニングだけでなく、受取、選別、プレス、染み抜き、乾燥、仕上げ、引渡等の一連の行為が含まれる。
受付は制度上、クリーニングの一部に数えられている
一連の行為の一部だけを行う店舗も、クリーニング所として都道府県知事への届出が要る。洗濯物の処理をせず受取と引渡しだけを行う店舗は「取次所」と呼ばれ、一般クリーニング所と区別されている。
この区別は働く側にも効く。一般クリーニング所にはクリーニング師を置く義務があり、洗濯機・脱水機の設置や使用前の検査確認も課される。取次所にその義務はない。求人票に「取次店」とあれば、洗いの工程は別の工場が担い、店舗側は受取・引渡し・会計と預かり品の仕分けが中心になる。
カウンターで手を動かす順番
預かってから渡すまでの手順は、店が変わってもおおむね同じ並びになる。
- 持ち込まれた衣類を広げ、シミ・傷み・付属品を客と一緒に確認する
- 素材や加工に応じた処理方法と料金、仕上がり日を伝える
- 預かり伝票を作り、タグを付けて仕分ける
- 仕上がり品を取り出して渡し、会計する
差が出るのは1番目である。確認を省いた店では、引渡しのときに「元から傷んでいたのか」で揉める。時間をかける店では1人あたりの応対が長くなり、混雑時に列が伸びる。どちらを取るかが、そのまま店の方針として現れる。
クリーニング店の受付の1日の流れはどのようなものか
来店は朝と夕方に寄る。出勤前に預けて帰宅時に引き取る、という利用のされ方が中心だからだ。
開店から閉店までの並び
朝は仕上がり品の並べ替えと、当日引渡し分の確認から始まる。開店後しばらくは預かりが増え、日中は落ち着く。夕方は引渡しと預かりが同時に来るため、1日で最も手が動く時間帯になる。閉店前にレジを締め、翌日の引渡し分を手前に出しておく。
空いた時間が作業時間になる
来店が途切れる日中に、タグ付け、仕分け、工場への引き渡し準備、長期間引き取られていない品の確認を進める。厚生労働省の振興指針は、仕上がり予定日から処分までの日数を各営業者が定め、受取時に契約内容を説明するよう努めることを求めている。長期未引取の管理も、受付の担当範囲に入っている店が多い。
クリーニング店の受付は大変?きついと言われるのはなぜか
理由は2つに分かれる。業態そのものの性質と、店舗の人数である。
苦情が起きやすい業態だと公的文書が明記している
厚生労働省が令和7年3月に決定したクリーニング業の振興指針は、クリーニング業を「受託した衣料の破損、仕上がりへの不満等事故や苦情が生じやすい業態である」と書いている。そのうえで、受取と引渡しの際に衣料の破損等を相互確認すること、クリーニング業法第3条の2第1項に基づいて処理方法等をあらかじめ十分に説明することを求めている。
つまり、クレームの前線に立つのが受付だという前提が、制度の側にすでに置かれている。応対がうまくいかない日があるのは個人の力量の問題ではなく、業態の設計上そうなっている。
1店舗の人数が少ない
同じ指針によれば、クリーニング業の従業者数5人未満の事業者は76.9%を占める。施設数は令和4年度末で74,083施設あり、10年前と比べて42,297施設、率にして36.3%減っている。従業クリーニング師も34,869人まで減り、10年前から31.8%の減少である。
店が小さく、人が減っている。この2つが重なると、混雑時に応援を呼べる相手がいない状態になりやすい。求人を見るときに店舗の勤務人数を確認しておくと、この負荷はかなり読める。
クリーニング店の受付に向いているのはどんな人か
明るさや手際のよさより先に、業界が挙げている条件がある。
業界が求めているのは「説明できる人」
振興指針は、利用者の苦情や事故を防ぐために「受付を行う従業員の知識や説明の水準の向上」に業界をあげて取り組むことを期待する、と名指しで書いている。人材育成の項でも、従業員が衣料の受取時に素材・色・デザイン・仕上がりについて事前説明を徹底することを求めている。
営業者側の意識もそこに向いている。同指針が引く経営状況調査では、今後の経営方針として「価格の再設定」90.4%に次いで「接客サービスの向上」が85.2%で挙がっている。値上げと接客が同じ束で語られている以上、受付の説明は店の売上の一部として扱われていると読むのが自然だろう。
向いているのは、次のような人になる。
- 衣類の状態を客の目の前で言葉にできる人
- 「落ちない可能性がある」と先に伝えられる人
- 伝票と会計を正確に扱える人
- 常連客の顔と好みを覚えられる人
4つとも、性格というより手順の話である。研修で身につく範囲にある。
逆に、合わない条件もはっきりしている
立ち仕事が続くこと、朝夕の来店が重なること、店に自分ひとりの時間帯があること。この3つが避けられない店舗は珍しくない。座って処理を進めたい人には、同じ店頭接客でも携帯ショップ・家電量販店の受付・接客の仕事のように、応対と事務の比率が違う職場のほうが合う。
クリーニング店の受付の給料の目安はどのくらいか
クリーニング店の受付だけを切り出した公的統計はない。近い区分は、厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査にある「受付・案内事務員」である。
| 区分 | 賃金 | 平均年齢 | 勤続年数 | 労働者数 |
|---|---|---|---|---|
| 短時間労働者(パート) | 時給1,231円 | 50.1歳 | 6.2年 | 84,580人 |
| 一般労働者(フルタイム) | 年収換算356万円 | 42.0歳 | 8.6年 | 84,880人 |
パートの平均は月13.7日・1日5.7時間の勤務で、月収に直すと約9万6,000円になる。平均年齢が50.1歳である点は見落としたくない。学生や若手の相場ではなく、家庭と両立しながら長く続けている層の数字である。
パートとフルタイムの人数がほぼ同数という構成も、この職種の性格を示している。半分がパート枠で回っているため、短時間から入る道がそもそも開いている。
未経験からクリーニング店の受付を始めるにはどうすればよいか
資格は要らない。クリーニング師の免許は洗いの工程を担う一般クリーニング所に必要なもので、受付として応募する条件ではない。
講習の対象になるかを先に確認する
ただし、営業者にはクリーニング所の業務に従事する者(従業員5人に1人以上)へ、開設後1年以内に都道府県知事の指定した講習会を受講させる義務がある。その後も3年を超えない期間ごとに同様の受講が要る。受付の担当者がこの枠に入るかどうかは店によって違うため、面接で聞いておくとよい。会社の費用で知識が増える機会だと考えれば、対象に入るほうが得である。
求人票で見るべき4点
- 「取次店」か、洗いの設備がある店舗か
- 受付・会計だけか、たたみや仕分けの作業まで含むか
- 朝夕の混雑時間帯と土日の勤務がどう組まれているか
- 1シフトに何人が入るか
3番目と4番目は同時に見たい。夕方のピークに1人で立つ設計になっている店は、応対の速度をかなり求められる。条件から絞り込むときは受付・コールセンターの求人を探すところから、勤務時間と勤務日数で並べ替えるのが早い。
よくある質問
クリーニング店の受付は未経験でもできますか
できる。資格要件はなく、伝票の作り方も料金体系も店ごとの研修で覚える範囲にある。むしろ採用側の課題は人手のほうにあり、振興指針が引く調査では従業員が「不足」と答えた営業者が22.4%だった。
シミが落ちなかったときの責任は受付が負いますか
負わない。ただし振興指針は、事故が生じた場合に適切かつ誠実な苦情処理と賠償責任保険等による損害の補填を営業者に求めている。受付の役割は、預かる時点で落ちない可能性を伝え、記録に残すところまでである。
高齢の経営者の店は避けたほうがいいですか
一概には言えない。振興指針が引く令和5年度の調査では、経営者の70歳以上が42.5%、60歳から69歳が21.2%で、6割を超える。この構成では事業承継の予定が働き方に直結するため、店の今後の方針を面接で確認しておく価値がある。
立ち仕事はどのくらい続きますか
店舗の規模による。従業者5人未満の事業者が76.9%を占める業態なので、日中も座れる時間が短い店舗はある。勤務人数とシフトの組み方を求人票と面接で確認するのが確実である。
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出典
- 厚生労働省「クリーニング業の振興指針」(令和7年3月厚生労働大臣決定・令和7年4月1日適用)。施設数74,083施設(令和4年度末・衛生行政報告例)、従業クリーニング師34,869人、従業者数5人未満の事業者76.9%、経営方針「接客サービスの向上」85.2%(公益財団法人全国生活衛生営業指導センター 生活衛生関係営業経営状況調査)
- 厚生労働省「クリーニング業法の概要」(クリーニング業法 昭和25年法律第207号)。クリーニング所の届出、取次所の区分、クリーニング師の設置義務、従業員5人に1人以上の講習受講義務
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」受付・案内事務員(企業規模計10人以上・産業計)。短時間労働者84,580人/一般労働者84,880人
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