結論から書く。コールセンターの受託企業のうち、外国語での応対を行っているのは68社中40社(58.8%)である。そして外国語対応をしている40社のうち、英語に対応しているのは38社(95.0%)だった。日本コンタクトセンター協会(CCAJ)が2025年度に実施したコンタクトセンター企業実態調査の数字である。
英語対応の席は、半分強の会社にある。少なくはない。
ただし同じ40社のうち、中国語に対応しているのが22社、韓国語が17社ある。そして国内に住む外国人の国籍構成を開くと、上位5か国に英語圏は入っていない。英語は「外国語対応のなかで最も多い言語」ではあるが、「日本国内で最も需要のある外国語」ではない。この2つは同じことのように見えて、求人の探し方を変える。
英語で応対している会社は、多いのか少ないのか
CCAJの実態調査は、コールセンター・エージェンシー(受託運営を専門とする企業)109社を対象に、68社が回答したものである。事業会社が自社で持つセンターは含まれていない。母集団を先に押さえたうえで数字を見る。
外国語対応をしている企業は3年間ほぼ横ばい
外国語対応の有無は、次のように推移している。
| 年度 | 対応している | 回答企業数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 2023年度 | 36社 | 64社 | 56.3% |
| 2024年度 | 42社 | 70社 | 60.0% |
| 2025年度 | 40社 | 68社 | 58.8% |
3年間で6割前後を行き来しており、増えても減ってもいない。外国語対応が急拡大しているという前提で求人を探すと、期待とのずれが出る。伸びているのは対応する会社の数ではなく、後述する対応言語の幅のほうである。
対応言語は英語に集中し、そのあとが分かれる
外国語対応を行っている40社が、実際に対応している言語の内訳がこうなっている(複数回答)。
| 言語 | 対応社数 | 40社に対する割合 |
|---|---|---|
| 英語 | 38社 | 95.0% |
| 中国語 | 22社 | 55.0% |
| 韓国語 | 17社 | 42.5% |
| スペイン語 | 9社 | 22.5% |
| ポルトガル語 | 8社 | 20.0% |
| ベトナム語 | 7社 | 17.5% |
| タイ語 | 6社 | 15.0% |
英語は95.0%だから、外国語対応をしている会社にはほぼ必ず英語の席がある。一方で、2番目の中国語が55.0%、3番目の韓国語が42.5%と、半数前後の会社は英語以外の言語も同時に持っている。外国語対応のセンターは「英語センター」ではなく「多言語センター」の形をとることが多いという読み方になる。
「英語の仕事」と「英語も使う仕事」は求人票の上で区別がつかない
求人票に「英語を使う仕事」と書かれていても、業務時間の何割が英語なのかは書かれていない。ここは業務の構成から推定するしかない。
受託の主軸はカスタマーサポートと問い合わせ受付
同調査でセンター業務の受託内容を聞くと、カスタマーサポートが64社(94.1%)、問い合わせ受付が61社(89.7%)、受注センターが47社(69.1%)だった(複数回答)。上位3つはいずれも受信業務である。
外国語対応は、この受信業務の上に乗る形で存在する。つまり英語対応の求人であっても、応対の骨格はカスタマーサポートや問い合わせ受付そのものであり、英語はその応対を成立させるための手段になる。受信と発信で仕事の性質がどう変わるかはインバウンドとアウトバウンドの違いで整理している。
電話業務の7割はB to C
コールの対象を売上ベースで聞いた結果では、「B to Cのみ」と「B to Cの方が多い」を合わせて47社、非公開を除く67社の70.1%を占めた。相手は法人の担当者ではなく、個人の生活者が多数派ということになる。
生活者相手の英語応対では、契約書に出てくるような語彙よりも、症状や不具合の説明、住所や日付の聞き取り、支払い方法の確認といった、生活に密着した語彙のほうが頻度が高い。求人票が求める英語力を「ビジネス英語」という言葉だけで想像すると、実際の負荷の在りかを外す。
電話の量は減り、テキストの量が増えている
業務量の増減を聞いた設問では、電話業務は「昨年度より減少した」が19社で、「昨年度より増加した」の16社を上回った。一方でメールやチャット等のテキストによる業務は「昨年度より増加した」が28社と最も多く、テキスト業務を行っていない6社を除いた62社の45.2%を占めている。
電話が減ってテキストが増える流れは、英語対応にもそのまま効いてくる。母語でない言語では、聞き取りより読み書きのほうが処理の余地が大きいからだ。英語を使う入口としては、音声より先にメールやチャットの枠が開く可能性が高い。
必要な英語力は、応対の型がどこまで決まっているかで決まる
英語力の要件を「TOEIC何点」で示す求人はあるが、点数と業務の難易度は直結しない。難易度を決めているのは、応対の型がどこまで用意されているかである。
生成AIが入っているのは、まさに文章を書く工程
同調査で生成AIの活用状況を聞くと、実務で運用している企業が33社(48.5%)、PoCや社内検証まで含めて何らかの形で活用している企業が55社あった。その55社の活用方法がこうなっている(複数回答)。
| 活用方法 | 割合 |
|---|---|
| 応対内容の要約 | 74.5% |
| メール文章の作成 | 63.6% |
| FAQの自動生成 | 61.8% |
| コミュニケーターの回答支援(回答候補の提示等) | 58.2% |
| レポートの作成 | 56.4% |
上位に並んでいるのは、要約する、書く、候補を出すという工程である。英語のメール返信を一から作文する負荷は、この支援が入っている職場では確実に下がっている。逆に言えば、書く英語を売りにするだけでは、支援ツールと差がつきにくい位置に立つことになる。
話す英語のほうが代替されにくい
音声での応対は事情が違う。相手が言い直す、途中で話題が変わる、感情が乗る。この揺れを受け止めながら要件を確定させる作業は、定型の生成では埋まらない。
同調査ではAIボイスボットを提供している企業が35.3%(24社)まで増えているが、有人チャットの55.9%やeメールの80.9%には届いていない。音声の自動化は、テキストの自動化より一段遅れて進んでいる。英語力を武器にするなら、書く側より聞き取って確定させる側に置くほうが、当面は消耗しにくい。テキスト中心の働き方についてはメール・チャット対応の仕事で別に整理した。
英語人材の席は、日本国内だけにあるわけではない
英語対応の求人が国内で増え続けるかどうかを考えるとき、無視できない数字がある。
海外拠点を持つ企業は8社
同調査で海外にコンタクトセンター拠点を持つと答えたのは8社(11.8%)で、所在国はフィリピンが5社と最も多く、ベトナムとタイが4社、中国・韓国・インドネシア・インドが3社で続いた。
フィリピンが最多という並びは、英語対応の受け皿としての性格を示している。国内で英語のオペレーターを採用するか、英語圏に近い人件費水準の拠点に振るかは、企業にとって選択の対象になっている。8社という数はまだ少ないが、増減の方向は見ておく価値がある。
外国籍人材の雇用は3年で行き来している
外国人(外国籍人材)を雇用していると答えた企業は、2023年度が64社中41社、2024年度が70社中36社、2025年度が68社中40社だった。割合にすると64.1%、51.4%、58.8%となる。
単調に増えているわけではない。外国籍人材の採用は、業界として定着した方針というより、案件ごとに動く変数として扱われていると読むほうが実態に近い。日本語を母語とする人が英語を使って働く枠は、この変動の裏側にある。
対応言語の顔ぶれは3年間ほとんど動いていない
言語別の対応社数も並べておく。英語は2023年度36社・2024年度42社・2025年度38社、中国語は21社・21社・22社、韓国語は17社・17社・17社である。
韓国語が3年間まったく同じ17社という並びに、この領域の性格が出ている。外国語対応は、需要の波に合わせて足したり削ったりする機能ではなく、体制として持つか持たないかの選択になっている。持っている会社は続けて持ち、持っていない会社は立ち上げない。英語の求人を探すときに見るべきは「募集の有無」ではなく「その会社が外国語対応を体制として持っているか」である。求人が一時的に閉じていても、体制がある会社なら次の枠が開く。
英語で給料は上がるのか
賃金の統計から答えを出そうとすると、正直なところ壁がある。
統計に「英語対応」の区分はない
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査では、コールセンターのオペレーターは「電話応接事務員」という職種区分に集計される。この区分に外国語対応の有無による内訳はない。英語手当がいくら上乗せされているかを、公的統計から示すことはできない。
わかるのは全体の水準だけである。
| 職種 | フルタイムの年収換算 | 所定内給与の時給換算 | パート時給 |
|---|---|---|---|
| 電話応接事務員(コールセンター) | 約394万円 | 1,803円 | 1,363円 |
| 受付・案内事務員 | 約356万円 | 1,510円 | 1,231円 |
年収換算は「きまって支給する現金給与額29万5,200円 × 12ヶ月 + 年間賞与39万3,700円」で計算した。この394万円は平均年齢43.6歳・勤続7.8年の平均値であり、英語対応の有無を問わない全体像である。
パート側の1,363円も同じ性質を持つ。この層の平均年齢は50.2歳、勤続5.7年、月の実労働日数14.0日で1日5.9時間という働き方の平均値である。英語対応を条件に加えた求人がこの水準からどれだけ離れるかは、統計の側からは追えない。
求人票の時給は割り戻してから比べる
英語対応の求人が1,600円と提示していても、それが平均より高いかどうかは、そのままでは判断できない。みなし残業が含まれていれば実質は下がる。この職種の超過実労働時間は月8時間なので、20時間や30時間のみなし残業が設定されている求人は、統計上の実態から離れている。
年収の全体構造はコールセンターの年収・給料で分解した。条件を絞って探すならカスタマーサポート(受信)の求人が英語対応の受け皿として近い。
需要は英語だけに向いていない
最後に、冒頭で置いた「英語は国内で最も需要のある外国語ではない」という点に戻る。
在留外国人412万人の国籍構成
出入国在留管理庁の統計によると、2025年(令和7年)末時点の在留外国人数は412万5,395人で、前年末から35万6,418人(9.5%)増えて初めて400万人を超えた。国籍・地域別の上位は次の通りである。
| 国籍・地域 | 人数 | 前年末からの増加 |
|---|---|---|
| 中国 | 93万0,428人 | +5万7,142人 |
| ベトナム | 68万1,100人 | +4万6,739人 |
| 韓国 | 40万7,341人 | −1,897人 |
| フィリピン | 35万6,579人 | +1万5,061人 |
| ネパール | 30万0,992人 | +6万7,949人 |
上位5か国のうち、英語を公用語の一つとするのはフィリピンだけである。国内在住者への応対需要という観点では、中国語とベトナム語の伸びのほうが大きい。CCAJ調査で中国語対応が22社と2番手に付けているのは、この構成と整合している。
英語は入口として使い、そこから幅を足す
とはいえ、英語対応の席が38社と最も多いことは変わらない。訪日客への案内や海外拠点との連携を含めれば、英語の用途は在留者への応対だけではない。
現実的な組み立ては、英語を入口にして応対の型を身につけ、そのうえで扱える言語や領域を足していく順序になる。英語だけで長く優位を保つ想定は、対応言語の分散と生成AIの浸透の両方から見て、置きにくい。
よくある質問
英語コールセンターは未経験でも採用されますか
CCAJ調査で採用活動の状況を聞くと、「苦労している」26社と「やや苦労している」29社を合わせた55社が、非公開1社を除く67社の82.1%を占めた。採用の門戸そのものは広い状態にある。ただし外国語対応をしている企業は68社中40社なので、英語の席がある会社に絞ると母数は狭まる。未経験からの入り方はコールセンター未経験デビューで扱った。
TOEIC何点あれば応募できますか
CCAJ調査にも賃金構造基本統計調査にも、英語力の要件に関する項目はない。公的統計から点数の目安を示すことはできない。求人票に記載がある場合はその基準に従い、記載がない場合は応対の型(マニュアルとFAQがどこまで整備されているか)を面接で確認するほうが、点数の議論より実態に近づく。
英語対応だと時給は高くなりますか
賃金構造基本統計調査の「電話応接事務員」には外国語対応の有無による内訳がないため、統計としての上乗せ額は示せない。判断材料になるのは、外国語対応をしている企業が68社中40社にとどまるという希少性と、その40社のうち95.0%が英語に対応しているという競合の多さの両方である。
英語より中国語のほうが求人は多いですか
外国語対応をしている40社のうち、英語は38社、中国語は22社である。社数では英語が上回る。ただし在留外国人の国籍別では中国が93万0,428人で最多であり、応対件数の需要と対応企業数は一致していない。
在宅で英語コールセンターの仕事はできますか
同調査で在宅オペレーションを「既に実施している」と答えたのは、非公開を除く65社中39社(60.0%)だった。実施しない22社の理由は「セキュリティ上の問題」が18社(81.8%)で最多である。在宅の可否は言語ではなく、扱う情報の機密度で決まっている。
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出典
- 一般社団法人日本コンタクトセンター協会「2025年度 コンタクトセンター企業 実態調査」(対象109社・回答68社・回収率62.4%・2025年6月16日〜7月23日実施)https://ccaj.or.jp/telemarketing/doc/outsourcing_research_2025.pdf
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計・企業規模計10人以上)/短時間労働者 職種別1時間当たり所定内給与額 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html
- 出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」 https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00062.html
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