結論から書く。コールセンターで働く人の給料は、厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、正社員クラスで年収394万円、パート・アルバイトで時給1,363円である。
ただしこの2つの数字を並べても、たいていの人が知りたいことには答えられない。
同じ調査の中で、男性は464万円、女性は358万円と100万円以上の開きがある。パートの平均年齢は50.2歳で、想像されがちな学生や若手の層ではない。「平均」という言葉が、実際にはかなり性質の違う働き方を一つに丸めてしまっている。
この記事では、その丸めを解いていく。
コールセンターの給料は「2つの相場」でできている
コールセンターの求人を見ていると、月給制と時給制がほぼ同じ数だけ出てくる。この2つは同じ仕事の別表記ではなく、統計上も別の集団として集計されている。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、コールセンターのオペレーターは「電話応接事務員」(電話交換手を含む職種区分)として集計される。この職種を、フルタイム勤務の「一般労働者」と、それより短い時間で働く「短時間労働者」に分けた数字が次の通りである。
フルタイム(正社員・契約社員クラス)の実額
| 区分 | きまって支給する現金給与額 | 年間賞与 | 年収換算 | 平均年齢 | 勤続年数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 男女計 | 295,200円 | 393,700円 | 約394万円 | 43.6歳 | 7.8年 |
| 男性 | 342,400円 | 526,900円 | 約464万円 | 43.7歳 | 8.5年 |
| 女性 | 271,500円 | 326,600円 | 約358万円 | 43.6歳 | 7.5年 |
年収換算は「きまって支給する現金給与額 × 12ヶ月 + 年間賞与」で計算した。「きまって支給する現金給与額」には残業代が含まれている点に注意してほしい。
パート・アルバイトの実額
| 区分 | 1時間当たり所定内給与額 | 月の実労働日数 | 1日の所定内労働時間 | 月収換算 |
|---|---|---|---|---|
| 電話応接事務員 | 1,363円 | 14.0日 | 5.9時間 | 約11.3万円 |
平均年齢50.2歳、勤続5.7年。この層の労働者数は9万7,730人で、フルタイム17万9,540人と合わせると、コールセンターで働く人の3人に1人が短時間勤務という計算になる。
なぜ男女で100万円以上の差がつくのか
男性464万円、女性358万円。同じ職種でこれだけの差がつく理由は、統計の内訳を開くと見当がつく。
人数構成が偏っている
フルタイム17万9,540人の内訳は、男性6万190人に対して女性11万9,350人。女性が66.5%を占める。
そして所定内実労働時間を見ると、男性156時間・女性153時間とほぼ同じである。労働時間の差では説明がつかない。
差は「賞与」に集中している
| 区分 | 所定内給与額 | 年間賞与 | 賞与の月数換算 |
|---|---|---|---|
| 男性 | 322,300円 | 526,900円 | 約1.6ヶ月 |
| 女性 | 255,200円 | 326,600円 | 約1.3ヶ月 |
毎月の所定内給与で6万7,100円、年間賞与で20万300円の差がある。勤続年数は男性8.5年・女性7.5年とわずか1年しか変わらないので、勤続だけでは埋まらない差だ。
考えられるのは役職の分布である。コールセンターにはオペレーターの上にスーパーバイザー(SV)やセンター長といった役職があり、ここに男性が多く配置されていれば、この形の差が生まれる。統計そのものは役職別の内訳を持たないため断定はできないが、後述するSVの人数構造と突き合わせると、説明としては自然に見える。
つまり女性が358万円で頭打ちになる職種、という読み方は正確ではない。役職に上がれるかどうかで分かれている、と読むほうが実態に近い。
同じことを逆から見ると、役職に就かないまま在籍を続けた場合、勤続年数が伸びても年収はあまり動かないということでもある。勤続7.5年と8.5年で100万円の差がついている以上、時間が解決してくれる構造にはなっていない。
正社員とパートの時給を並べると、差は440円
フルタイムの給料を時給に直すと、比較の見通しがよくなる。
所定内給与額277,700円 ÷ 所定内実労働時間154時間 = 時給換算1,803円。
パートの1,363円との差は440円である。1日6時間・月14日なら、この差は月額約3万7,000円になる。
440円の差が意味するもの
この440円には、賞与39万3,700円と社会保険、そして雇用の安定が乗っている。パート側の年間賞与は2万100円で、フルタイムの20分の1にとどまる。
一方で、フルタイムの所定内実労働時間は154時間、超過実労働時間は8時間。残業は月8時間しかない。給与を時間で割ったときに、この職種が意外に不利ではないことがわかる。長時間労働で年収を積み上げている職種ではない。
働く時間を短くしたい人にとって、この職種の時給1,363円という水準は、勤務時間の柔軟さと引き換えに払っているコストが小さいほうだと言える。
受付の仕事と比べるとどうか
同じ調査で「受付・案内事務員」を見ると、パートの時給は1,231円、フルタイムの年収は約356万円である。
| 職種 | パート時給 | フルタイム年収 | フルタイム労働者数 |
|---|---|---|---|
| 電話応接事務員(コールセンター) | 1,363円 | 約394万円 | 179,540人 |
| 受付・案内事務員 | 1,231円 | 約356万円 | 84,880人 |
時給で132円、年収で38万円ほどコールセンターが上回る。電話対応というストレス要因への上乗せ分、と解釈できる範囲の差である。
ただし、この2職種は年収の差より人の集まり方の差のほうが大きい。
受付・案内事務員の男性は平均48.4歳・勤続13.2年で年収約453万円、女性は平均40.3歳・勤続7.5年で約331万円。男性の勤続年数が女性のほぼ2倍あり、年齢も8歳上である。人数は男性1万7,490人に対して女性6万7,390人。長く残った少数の男性と、入れ替わりのある多数の女性という構成になっている。
コールセンター側は男性43.7歳・勤続8.5年、女性43.6歳・勤続7.5年で、年齢も勤続もほぼ揃っている。年収差は100万円以上あるのに、在籍のしかたは男女で似ている。
同じ「窓口の仕事」でも、受付は年齢と勤続で層が分かれ、コールセンターは同じ層の中で役職によって分かれる。入ったあとに何で差がつくのかが違う。受付の仕事内容そのものは受付の仕事とはで詳しく整理している。
年収が上がる条件は、業界側のデータから逆算できる
平均値だけを見ていても、自分の年収がどう動くかはわからない。ここからは業界側の統計を使う。
日本コンタクトセンター協会(CCAJ)が2025年度に実施したコンタクトセンター企業実態調査は、コールセンターの受託企業109社を対象に68社が回答したものである。この調査に、給与が動く条件が読み取れる数字がいくつかある。
スーパーバイザーの不足は深刻
回答企業のうち、職種ごとの過不足を答えた66社の内訳がこうなっている。
- スーパーバイザー:87.9%が不足感あり
- コミュニケーター・オペレーター:72.7%が不足感あり
- どちらの職種でも「過剰気味である」と答えた企業はゼロ
オペレーター不足も相当だが、SV不足のほうがさらに強い。そして同じ調査によると、SV1人あたりが受け持つコミュニケーターの数は平均8.93人で、2023年度8.54人、2024年度8.83人と3年連続で増えている。
一人のSVが見る人数が増え続けているのは、SVの補充が現場の増員に追いついていないことを示している。数字の動きとしては、SVになれる人材の価値が上がっていく方向だ。
採用そのものが難しくなっている
同調査で採用活動の状況を答えた67社のうち、「苦労している」26社と「やや苦労している」29社を合わせた45社(82.1%)が採用難を訴えている。
採用が難しい職種の賃金は、上がるか、条件が緩むかのどちらかで調整される。実際、この業界では在宅勤務の導入が進んでおり、在宅オペレーションを「既に実施している」企業は非公開を除く65社中39社で60%に達した。実施理由の最多は「働き方の多様化のため」で39社中33社(84.6%)だった。
賃金だけでなく、働き方の側で条件が改善している段階と見るのが妥当だろう。在宅勤務の実態は在宅コールセンターの始め方にまとめている。
ただし業界全体の売上は減っている
一方で、楽観だけでは済まない数字もある。同調査で売上高を公開した47社の合計は1兆5,260億3,400万円で、前年度と比べて765億8,200万円、4.8%の減少だった。
人手は足りないが、業界全体のパイは縮んでいる。この2つが同時に起きているとき、賃金が全体として押し上げられる展開にはなりにくい。上がるのは、不足している役割に就いた人の分だけ、という読みのほうが現実的である。
雇用形態で給料はどう変わるか
CCAJ調査には、雇用形態の構成についての数字もある。
直接雇用と派遣の状況を答えた67社のうち、「直接雇用の方が派遣より多い」が52社で77.6%を占めた。ただし「直接雇用のみ」は8社にとどまり、派遣を何らかの形で活用している企業は59社(88.1%)に達する。派遣のみという企業はなかった。
派遣が使われる理由
派遣活用の理由は次の通りだった(複数回答)。
- 一時的な人材不足の解消:88.1%
- 受託案件への柔軟な対応:55.9%
- 採用業務の効率化:39.0%
- 即戦力の補填:30.5%
上位2つが示しているのは、派遣が「案件の増減を吸収する枠」として使われているということである。裏を返せば、案件が終われば契約も終わる可能性が織り込まれた枠だ。
「採用業務の効率化」が39.0%、「即戦力の補填」が30.5%と、この2つが下位に来ている点も見ておきたい。派遣を人材の質を上げる手段として使っている企業は3割程度で、多数派は量の調整に使っている。時給が高めに設定されていても、それが技能への評価とは限らない。
直接雇用の割合はセンターによって大きく違う
同調査で直接雇用の割合を答えた企業の分布を見ると、「61%以上70%」が17社で最も多く、次いで「81%以上90%」が10社、「71%以上80%」が9社と続く。一方で「直接雇用のみ(100%)」も8社ある。
つまり、直接雇用が6割台のセンターと10割のセンターが同じ業界内に併存している。求人の時給だけを見て会社を比較しても、この違いは見えない。
同じ現場で同じ電話を取っていても、直接雇用か派遣かで、年収の期待値ではなく継続の見通しが変わる。求人票を見るときに時給の数字だけを比べると、この差が視野から落ちる。雇用形態ごとの違いはコールセンターの派遣と正社員で整理した。
求人票のどこを見れば、平均値とのズレがわかるか
ここまでの数字は全国平均である。目の前の求人が平均より上か下かを判断するには、次の4点を確認すれば足りる。
- 賞与の実績が月数で書かれているか。フルタイムの平均は年39万3,700円で、所定内給与額に対して約1.4ヶ月分にあたる。「賞与あり」だけで月数の記載がない場合は、この水準を下回る可能性を見ておく。
- みなし残業が含まれていないか。この職種の超過実労働時間は月8時間である。20時間や30時間のみなし残業が設定されている求人は、実態から離れている。
- 昇給の条件がSVへの登用と結びついているか。男女差が賞与に集中していた構造から考えて、年収を動かすのは役職である。
- 在宅勤務の可否。60%の企業が実施済みという水準なので、通勤前提の求人はその分だけ条件面で見劣りする。
このうち2番目は特に効く。時給1,500円と書かれていても、みなし残業込みの実働で割り戻すと1,363円の平均を下回る、という求人は珍しくない。求人票の時給は、割り戻して初めて比較可能な数字になる。
月給制の求人でも同じ計算をしておきたい。月給25万円と書かれていれば平均の29万5,200円を下回るが、そこに賞与1.4ヶ月分が付けば年収は約335万円になり、賞与なしの月給27万円(年収324万円)を上回る。月給の額面だけで並べると順序が入れ替わるので、賞与の月数まで揃えてから比べたほうがいい。
条件から絞り込みたい場合はカスタマーサポート(受信)の求人から、勤務時間や雇用形態で並べ替えて確認できる。
よくある質問
コールセンターの年収は他の職種と比べて低いですか
令和6年賃金構造基本統計調査で電話応接事務員の年収換算は約394万円。同じ調査の受付・案内事務員は約356万円で、それより38万円高い。所定内実労働時間が154時間、超過が8時間と労働時間が短めであることを考えると、時間あたりの水準は低くない。
未経験でも同じ給料をもらえますか
平均値の勤続年数は7.8年なので、この394万円は未経験の初年度の数字ではない。ただしCCAJ調査で採用に苦労している企業が82.1%に達していることから、未経験者への門戸自体は広い状態にある。未経験の入り口についてはコールセンター未経験デビューを参照してほしい。
在宅コールセンターの時給は下がりますか
CCAJ調査では、在宅を実施している39社のうち「採用が容易である」を理由に挙げた企業が38.5%あり、採用手段として位置づけられている。時給を下げるための施策としては扱われていない。この割合は2023年度35.5%、2024年度31.4%と推移しており、直近で最も高い。
スーパーバイザーになると年収はどのくらい上がりますか
賃金構造基本統計調査は役職別の内訳を持たないため、SVの平均年収を直接示すデータはない。ただし男女差の構造(毎月6万7,100円、賞与20万300円の差)と、SVの不足感が87.9%であることを合わせると、役職が年収の主要な変数になっていることは読み取れる。
パートから正社員になれますか
CCAJ調査では直接雇用の割合が高い企業が多数を占め、「直接雇用のみ」の企業も8社ある。制度としての登用ルートは存在する。ただし調査には登用実績の項目がないため、企業ごとに確認するしかない。
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出典
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)/短時間労働者 職種別1時間当たり所定内給与額(企業規模計10人以上)
- 一般社団法人日本コンタクトセンター協会「2025年度 コンタクトセンター企業 実態調査」(対象109社・回答68社・回収率62.4%・2025年6月16日〜7月23日実施)
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