インバウンドとアウトバウンドの違い|コールセンターで比較

コールセンターのインバウンドとアウトバウンドの違い|仕事内容・向き不向き

インバウンドは、かかってきた電話を受ける仕事。アウトバウンドは、こちらから電話をかける仕事である。コールセンターの求人票では「受信」「発信」と書かれることも多い。

定義としてはこれで足りる。ただし、電話の向きだけを覚えても求人は選べない。

実際に働き方を分けているのは、次の3点である。用件を持っているのが顧客側か自分側か。何で評価されるか。法律の規制がかかるかどうか。この3つで見ると、同じ「コールセンター」でも別の職業に近いことがわかる。

目次

2つの違いを一枚の表にする

まず全体を並べる。

比較軸 インバウンド(受信) アウトバウンド(発信)
電話の向き 顧客からかかってくる こちらからかける
用件を持っているのは 顧客(困りごと・注文) 自分(案内・調査・督促)
代表的な業務 カスタマーサポート、問い合わせ受付、受注 商品勧誘、市場調査、来場促進、督促
主な評価指標 応対品質、一次解決率、処理件数 架電件数、アポイント数、成約数
求められる力 想定外の用件を整理する力 断られたあとに切り替える力
法規制 一般的な消費者保護法制 特定商取引法(電話勧誘販売)の直接規制
業界内の比率 中心(85.1%の企業が受信中心) 少数(13.4%の企業が発信中心)
給与の形 時給・月給が中心 基本給+インセンティブが混ざる

表の中で最も効いてくるのが2行目である。

用件を持っているのはどちらか

インバウンドでは、顧客がすでに用件を持っている。電話をかけてきた時点で、その人には解決したい問題か、済ませたい手続きがある。オペレーターの仕事は、相手の言葉から用件を特定し、処理し、記録することになる。会話の主導権は、少なくとも最初は顧客側にある。

アウトバウンドは逆で、用件を持っているのはこちら側である。電話をかけた瞬間、相手は自分の時間を中断されている。つまり最初の数秒で「聞く価値がある話かどうか」を判断される立場から会話が始まる。

この非対称が、そのまま向き不向きの分かれ目になる。インバウンドでつらいのは予測できない用件が来ることで、アウトバウンドでつらいのは予測できるほど断られることである。同じ「電話がきつい」でも、中身が違う。

求人の母数は85%対13%でインバウンドに偏っている

どちらを選ぶかを考える前に、選べる量が違うことを知っておきたい。

日本コンタクトセンター協会(CCAJ)が2025年度に実施したコンタクトセンター企業実態調査は、コールセンターの受託企業109社を対象に68社が回答したものである。この調査に、電話業務の受信と発信の比率を売上ベースで尋ねた項目がある。

電話業務の内訳

区分 社数(N=68)
インバウンドのみ 2社
インバウンドの方が多い 55社
ほぼ同じ 1社
アウトバウンドの方が多い 8社
アウトバウンドのみ 1社
非公開 1社

非公開を除く67社のうち、インバウンド中心が57社で85.1%。アウトバウンド中心は9社で13.4%にとどまる。

企業単位の比率がそのまま募集数の比率になるわけではない。ただ、8割超の企業が受信中心で売上を立てているなら、席の数も受信側に偏る。「発信の仕事を選ぶ」というより「発信を扱っている少数の会社を探す」という作業になる。

受託内容から見ても同じ方向を指している

同調査で受託業務の内容を尋ねた結果(複数回答)も、この偏りと整合している。

受託内容 社数 割合 主な区分
カスタマーサポート 64社 94.1% 受信
問い合わせ受付 61社 89.7% 受信
受注センター 47社 69.1% 受信
事務局業務 44社 64.7% 混在
営業サポート 38社 55.9% 混在
商品勧誘等 37社 54.4% 発信
市場調査 27社 39.7% 発信
来場促進 20社 29.4% 発信

受信系の3業務がいずれも7割前後を超えているのに対し、発信系は商品勧誘の54.4%が最高で、市場調査と来場促進は4割を切る。

もう一つ見ておきたいのは、発信を扱う企業も受信をやめているわけではないことである。商品勧誘を受託している37社は、カスタマーサポートを受託している64社の内側に大きく重なる。発信専業の職場は業界の中でかなり珍しいということになる。

インバウンドの仕事の中身

受信の仕事は、電話を取るところから始まって、電話を切ったあとに終わる。

一件の流れと後処理

着信を受けて名乗り、用件を聞き、顧客情報を検索し、履歴を確認し、マニュアルを参照して回答する。自分で判断できなければSV(スーパーバイザー)に確認する。ここまでが通話中で、電話を切ったあとに応対内容をシステムへ入力する。

この最後の入力が「後処理」と呼ばれる。契約変更を伴う案件なら入力項目が多く、通話3分でも後処理に5分かかることがある。求人票の「1時間あたり○件」を読むときは、通話時間だけでなく後処理の重さも合わせて確認したい。

相手の7割は個人

CCAJ調査で電話の相手を尋ねた項目では、「B to Cのみ」4社と「B to Cの方が多い」43社の計47社が、非公開を除く67社の70.1%を占めた。「B to Bの方が多い」は12社、「B to Bのみ」は2社である。

個人が相手だと、電話口の人は商品や制度の前提知識を持っていない。専門用語をそのまま返すと会話が止まる。逆に法人相手なら、担当者は業務として電話をかけてきているので用件が整理されていることが多い。

7割が個人相手という構成は、専門知識より説明を噛み砕く力が先に要求されることを意味する。未経験歓迎の求人が受信側に多い理由の一つがここにある。

難しさは用件が選べないところにある

受信の負荷は、次に何が来るか決められない点に集中する。前の電話がクレームで、次の電話が簡単な問い合わせ、その次がまたクレーム、という順番を自分で組み替えられない。切り替えの速さが要求されるのはこの構造による。怒っている相手への対応そのものはコールセンターのクレーム対応のコツに手順としてまとまっている。

自動応答の普及がこの傾向を強めている。同調査では、チャットボットやボイスボット等の自動応答業務が「昨年度より増加した」と答えた企業が21社で最多だった。一方で電話業務は「減少した」19社が「増加した」16社を上回っている。定型的な用件から先に自動化されるため、人が取る電話の一件あたりの難易度は上がる方向にある

アウトバウンドの仕事の中身

発信の仕事は、リストと成果指標の話から始まる。

架電リストと評価指標

アウトバウンドでは、かける先のリストが用意されている。そしてリストの性質が、その仕事の難易度をほぼ決めてしまう。

既存顧客への案内なら、相手はすでにその会社と取引がある。名乗った時点で話を聞いてもらえる確率が高く、内容も契約更新や住所変更の確認といった実務が中心になる。資料請求者へのフォローなら、相手は関心を示した履歴を持っている。まったく接点のない相手への架電は、この2つとは別物で、最初の一言で切られる前提から会話を組み立てることになる。

求人票にリストの種類が明記されていることは少ない。ただ「既存顧客対応」「フォローコール」と書かれていれば前者、「新規開拓」であれば後者と読める。同じアウトバウンドの募集でも、この一語で日々の負荷は大きく変わる。

評価は架電件数、通話につながった件数、アポイントや成約の数で行われることが多い。数字が明確な分、成果が給与に反映される仕組みを持つ職場もある。求人票に「インセンティブあり」と書かれていれば、それは発信系である可能性が高い。

特定商取引法が直接かかる

ここがインバウンドとの最大の制度的な違いである。電話をかけて契約を勧誘し、申し込みを受ける取引は「電話勧誘販売」にあたり、特定商取引法の規制対象になる。消費者庁の特定商取引法ガイドによると、事業者には次の義務がある。

  • 氏名等の明示義務(法第16条):事業者の名称、勧誘を行う者の氏名、商品の種類、契約締結が目的であることを最初に告げる
  • 再勧誘の禁止(法第17条):契約を締結しない意思を示した相手への勧誘の継続と再勧誘が禁じられる
  • 書面交付義務(法第18条・第19条):商品の種類、販売価格、支払時期と方法、クーリング・オフに関する事項を記載した書面を渡す
  • 禁止行為(法第21条):虚偽の告知、事実の不告知、威迫・困惑させる行為が禁じられる

このうち再勧誘の禁止は、働く側の日常に直結する。断られたら引き下がるのが法律上の前提であり、粘って翻意させる行為は制度が想定していない。「アウトバウンド=しつこく食い下がる仕事」という印象は、この点で実態とずれている。

なお契約者側には、法定書面を受け取った日から数えて8日以内のクーリング・オフが認められる。成約後に解除される可能性が制度に組み込まれているということでもある。テレアポの具体的な進め方はテレアポ・テレマーケティングの仕事で扱っている。

勧誘ではない発信もある

発信=営業とは限らない。CCAJ調査の受託内容にある市場調査27社、来場促進20社に加え、料金の督促や契約内容の確認といった業務も発信で行われる。

これらは商品を売る電話ではないため、特定商取引法の勧誘規制の対象から外れる。断られ続ける負荷が比較的軽く、発信系に興味はあるが営業に抵抗がある人にとっては現実的な入り口になる。求人票では「調査」「確認業務」「アンケート」といった語で募集されることが多い。

給与と働き方はどちらが有利か

結論を先に書くと、公的統計で受信と発信の給与を分けて比べる方法はない

厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査では、コールセンターのオペレーターは「電話応接事務員」という一つの職種区分に集計される。受信と発信の区別はない。この区分の数字はフルタイムで年収換算約394万円、パート・アルバイトで時給1,363円である。

つまり「発信のほうが時給が高い」という話を統計で裏づけることはできない。求人票の時給差は、案件ごとの単価と募集の難しさから出ているもので、業務の種類そのものに紐づいた相場ではない。

求人票で比べるべきなのは総支給の設計

そのうえで、給与の設計には傾向の差がある。

発信系はインセンティブが乗ることがあるため、基本給が低めに設定されていても総支給が伸びる可能性がある。逆に成果が出ない月は、その分だけ落ちる。受信系は時給または月給が固定で、変動要素が少ない。

判断の順番としては、まず固定部分だけで生活が成立するかを確認し、インセンティブは上振れとして扱うのが安全である。固定給の比較を先にしないと、求人票の「月収30万円可」に引きずられる

在宅にできるかは業務ではなく案件で決まる

同調査で在宅オペレーションを「既に実施している」企業は、非公開を除く65社中39社で60%だった。実施しない22社の理由は「セキュリティ上の問題」が18社(81.8%)と突出している。

在宅の可否を分けているのは受信か発信かではなく、扱う情報の性質である。金融や個人情報を扱う案件は、受信でも在宅化しにくい。

勤務時間帯にも差が出る。受信は電話が鳴る時間に人を置く必要があるため、クライアントの受付時間がそのままシフトになる。通販や通信の窓口なら夜間や土日の枠が生まれ、法人向けの窓口なら平日日中で閉じる。発信は逆に、相手が電話に出やすい時間を狙うため、個人向けなら夕方以降、法人向けなら日中に集中する。シフトの形は業務の向きではなく、電話の相手が誰かで決まる

向き不向きは性格より状況で決まる

最後に、どちらを選ぶかの判断材料を整理する。

インバウンドが合いやすい状況

用件を選べないため、想定外の質問が来ても慌てずに調べ直せる人が続きやすい。逆に、自分のペースで作業を組み立てたい人には向きにくい。

シフトの面では、受信は電話が鳴る時間帯に人を置く必要があるため、平日日中の枠が厚い。扶養内や時短で働きたい場合、選択肢が多いのは受信側である。求人の傾向はカスタマーサポート(受信)の求人で条件別に確認できる。

アウトバウンドが合いやすい状況

断られる回数が構造的に多いため、結果を個人の評価として受け取りすぎない人が向く。成果が数字で見える環境を好むなら、受信より手応えを得やすい。

一方で、法規制を守りながら成果を出す必要があるため、トークの自由度は思ったより低い。マニュアルから外れた説明ができないことを窮屈と感じるかどうかは、事前に確認しておきたい。発信系の募集はテレアポ・テレマーケティングの求人にまとまっている。

迷ったときの順番

どちらか決めきれない場合、受信から入るほうが選択肢は広い。母数が85%対13%で偏っている以上、応募できる案件の数が違う。

そのうえで、受信の経験は発信にも持ち出せる。顧客情報の検索、システムへの入力、断られたあとの言い換えは、どちらの業務でも同じ形で使う。逆方向、つまり発信から受信へ移る場合も同様に通用するが、募集の少なさから入り口として選ぶ理由は薄い。

なお、どちらにも共通して効く適性は「電話が好きかどうか」ではない。記録を面倒がらないこと、わからないことを早く聞けることの2つで、これは受信でも発信でも変わらない。適性の判断軸はコールセンターに向いている人・向いていない人で整理している。

よくある質問

インバウンドとアウトバウンドはどちらが未経験に向いていますか

求人の母数が受信側に大きく偏っているため、応募できる案件の数では受信が有利になる。CCAJ調査では、非公開を除く67社の85.1%が受信中心と回答している。ただし業務の難易度そのものは案件によって変わるため、受信だから易しいという意味ではない。

アウトバウンドは営業ノルマがありますか

架電件数や成約数を指標に置く職場は多い。ただし特定商取引法第17条により、契約しない意思を示した相手への再勧誘は禁じられている。制度上、断られた相手を追い続けて件数を作ることは想定されていない。

インバウンドとアウトバウンドを両方やる職場はありますか

CCAJ調査では「ほぼ同じ」と答えた企業が1社あり、受信中心の企業も発信業務を受託しているケースがある。求人票では「受信メイン・一部発信あり」といった書き方になる。応募時に比率を確認しておきたい。

アウトバウンドの経験は転職で評価されますか

架電リストの管理、断られたあとの切り替え、成約までの記録は、法人営業や販売職と重なる作業である。一方で受信の経験は、顧客情報の検索と入力の速さが事務職に接続する。どちらも持ち出せるが、接続する先が違う。

時給が高いのはどちらですか

賃金構造基本統計調査は受信と発信を「電話応接事務員」として一括で集計しているため、統計上の比較はできない。求人票の時給差は案件の単価と募集の難易度から生じており、業務の種類に紐づいた相場ではない。

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出典

  • 一般社団法人日本コンタクトセンター協会「2025年度 コンタクトセンター企業 実態調査」(対象109社・回答68社・回収率62.4%・2025年6月16日〜7月23日実施) https://ccaj.or.jp/telemarketing/doc/outsourcing_research_2025.pdf
  • 消費者庁「特定商取引法ガイド」電話勧誘販売(特定商取引法第16条・第17条・第18条・第19条・第21条) https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/telemarketing/
  • 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)/短時間労働者 職種別1時間当たり所定内給与額(企業規模計10人以上) https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html

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この記事を書いた人

受付・コールセンター歴10年の編集者。企業受付・インバウンド・SV(管理者)・採用担当を経験し、現場目線で「受付キャリアナビ」編集部の記事執筆・編集を担当。

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