テレビ局の受付は、来訪者の受付と入館手続き、代表電話の取り次ぎ、応接室の案内を担う。業務そのものは企業受付と大きく変わらない。
変わるのは、その席が全国にいくつあるかである。総務省が令和7年10月に公表した令和6年度の民間放送事業者の収支状況によれば、キー局・準キー局は13社、ローカルテレビ局は114社。合わせて127社しかない。
この数字を先に置いておくと、あとの話が読みやすくなる。
テレビ局・放送局の受付の仕事内容とは何か
受付が置かれるのは、放送局の本社ビルや支社の入口である。
来訪者を通す手続き
来訪の目的と訪問先を確認し、入館証を発行し、担当部署へ取り次ぐ。局舎はスタジオと編集設備を抱えているため、入館の管理は一般のオフィスビルより細かく設計されていることが多い。
電話と問い合わせの一次対応
代表番号にかかってくる電話を受け、内容に応じて部署へ回す。放送内容に関する意見や問い合わせが混じる点が、他業種の代表電話との違いになる。判断が必要なものは所定の窓口へ引き継ぐ形が取られる。
局舎の顔として立つ時間
来訪者には出演者、制作会社、広告主、取材の相手が含まれる。誰が来ても同じ手順で通すことが求められる一方、相手によって扱いを変えないという原則そのものが、受付の負荷になる場面もある。
テレビ局・放送局の受付は他の企業受付とどう違うのか
違いは、局の規模の落差に出る。
キー局とローカル局では会社の大きさが20倍違う
令和6年度の売上高は、キー局・準キー局13社の合計が1兆4,515億100万円、ローカルテレビ局114社の合計が6,279億5,000万円だった。1社あたりに直すと、キー局・準キー局が約1,116億円、ローカル局が約55億円になる。
| 区分 | 社数 | 売上高合計(令和6年度) | 1社あたり |
|---|---|---|---|
| キー局・準キー局 | 13社 | 1兆4,515億100万円 | 約1,116億円 |
| ローカルテレビ局 | 114社 | 6,279億5,000万円 | 約55億円 |
同じ「テレビ局の受付」でも、この2つはまったく別の職場になる。前者は来訪者が絶えず、受付が複数名で並ぶ。後者は総務や庶務との兼務になりやすい。
求人票の会社名を先に確認する理由
したがって、応募する前に見るべきは職種名ではなく会社の区分である。キー局の受付を想像して応募し、実際は地方局の総務兼務だったという食い違いは、この構造から生じる。
テレビ局・放送局の受付の1日の流れはどのようなものか
来訪の波は、放送の時間帯ではなく打ち合わせの時間帯に沿う。
午前から夕方までの並び
始業前に受付台と入館証を整え、朝礼で当日の来訪予定を確認する。午前は打ち合わせの来訪が多く、昼をはさんで午後も同様に続く。夕方は退館の対応と、翌日の来訪予定の確認に移る。
放送の時間帯とはずれる
番組の制作と放送は深夜まで動くが、受付が置かれるのは来訪者を通す時間帯に限られる。局の稼働時間と受付の勤務時間は一致しない。この点は、テレビ局という言葉から想像される不規則さとは違う。
予定表が業務の骨格になる
来訪者の受付は、事前に共有された予定表と照らして進む。予定にない来訪をどう扱うか、予定はあるが担当者が席を外している場合にどこへ回すか。日々の判断はこの2つに集約される。局舎は制作の進行に合わせて人が動く場所なので、担当者の在席が読みにくい時間帯が生じやすく、取り次ぎ先の代替を持っておく必要がある。
テレビ局・放送局の受付がきついと言われるのはなぜか
きつさは業務量よりも、席の少なさと業界の収益構造から来る。
席の数が構造的に限られている
全国のテレビ局は127社。1社あたりの受付席は多くても数名で、離職が出なければ募集は発生しない。応募のタイミングを選べる職種ではない。
ローカル局の収益が細っている
同じ資料によれば、ローカルテレビ局の営業利益は10年前と比べて約57%減少している。令和6年度は広告収入の増加で増益に転じたものの、114社のうち14社が赤字だった。ラジオ単営社に至っては67社中32社、全体の48%が赤字である。
収益が細るとき、間接部門の人員は先に見直される。テレビ局の受付という職種が安定しているとは言いにくい。この判断は求人の待遇欄からは読み取れないため、業界側の数字で補うしかない。
見られる仕事であること
局舎の入口は、出演者も広告主も通る場所である。立ち居振る舞いへの視線が常にある。それを張り合いと感じる人と、消耗と感じる人に分かれる。
テレビ局・放送局の受付に向いているのはどんな人か
華やかさへの憧れだけでは続かない。
相手によって態度を変えない人
来訪者の顔ぶれが広い職場では、誰に対しても同じ手順を踏めることが最大の資質になる。顔を知っている相手にも手続きを省かない。この一貫性が、局舎の管理そのものを支える。
情報を漏らさない人
来訪者の名前と時刻は、それ自体が外部に出てはいけない情報になる。誰が来たかを話題にしない習慣が要る。同種の緊張感を持つ職場としては企業受付の仕事内容が近い。
募集を待てる人
席が少ない以上、応募の機会は限られる。関連する職場で経験を積みながら、募集が出たときに動ける状態を保つ。この構えを持てるかどうかが、実際には最も効く条件かもしれない。
テレビ局・放送局の受付の給料の目安はどのくらいか
放送局の受付だけを切り出した賃金統計はない。厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査で最も近い区分は「受付・案内事務員」である。
| 区分 | 賃金 | 平均年齢 | 勤続年数 | 労働者数 |
|---|---|---|---|---|
| 短時間労働者(パート) | 時給1,231円 | 50.1歳 | 6.2年 | 84,580人 |
| 一般労働者(フルタイム) | 年収換算356万円 | 42.0歳 | 8.6年 | 84,880人 |
フルタイムの年収換算356万円は、きまって支給する現金給与額25万6,500円を12倍し、年間賞与48万5,800円を足した額である。全産業の平均なので、放送局に限った水準ではない。
参考として、同じ調査の「秘書」は年収換算555万円、パート時給1,859円と、受付・案内事務員を大きく上回る。来訪者の対応から特定の役員付きの業務へ範囲を広げると、統計上の水準はこちらに近づく。
未経験からテレビ局・放送局の受付を始めるにはどうすればよいか
新卒でも中途でも、直接この席を狙うのは現実的ではない。母数が127社しかないためである。
現実的な入り口を先に決める
来訪者の受付と入館管理という業務は、テレビ局に限らない。オフィスビルや大企業の本社受付で同じ手順を経験してから、募集が出たときに応募する順序のほうが確度が高い。
求人票で見るべき3点
- 募集元が放送局そのものか、局舎の管理を担う別の会社か
- 受付専任か、総務や庶務との兼務か
- 勤務地が本社局舎か、支社か
1番目は待遇と勤務の実態を左右する。オフィス系の受付から経験を積むなら企業受付・総合受付の求人から、勤務地と勤務形態で絞り込むのが早い。
よくある質問
テレビ局の受付になるには学歴が必要ですか
受付という職種に共通の学歴要件はない。ただし募集の母数がテレビ127社と限られるため、応募者が集まりやすく、結果として選考の条件が厳しくなる状況は起こりうる。
アナウンサーへの道につながりますか
別の職種であり、別の採用枠になる。受付の実務と放送業務は接点が少ない。
地方の放送局にも受付はありますか
ローカルテレビ局は114社ある。ただし1社あたりの売上高は約55億円で、キー局・準キー局の約1,116億円とは規模が違う。受付が専任で置かれるとは限らず、総務との兼務になっている場合がある。
放送業界は先細りではありませんか
令和6年度はキー局・準キー局13社の売上高が1兆4,515億100万円と前年度を上回り、ローカルテレビ局も増益に転じた。ただしローカル局の営業利益は10年前比で約57%減の水準にとどまる。回復と縮小が同時に進んでいる、という読み方が実態に近い。
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出典
- 総務省 情報流通行政局放送業務課「令和6年度 民間放送事業者の収支状況」(令和7年10月3日公表)。キー局・準キー局13社の売上高1兆4,515億100万円、ローカルテレビ局114社(ラジオ兼営社31社含む)の売上高6,279億5,000万円、ローカルテレビ局の営業利益は10年前比約57%減、赤字社数はローカルテレビ局14社・ラジオ単営社32社(67社中48%)
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」受付・案内事務員/秘書(企業規模計10人以上・産業計)。受付・案内事務員は短時間労働者84,580人/一般労働者84,880人
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