受付の仕事のやりがい|評価されにくい職種で続く理由

受付の仕事のやりがい・楽しいところ

面接で「受付のやりがいは何ですか」と聞かれて、答えに詰まる人は多い。

理由は本人の側にない。受付の仕事は、うまく回った日ほど何も記録に残らない。売った金額も、処理した件数も、後から数えられる形では残らない職種である。

それでも辞めていない人が大勢いる。厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査で、受付・案内事務員の平均勤続年数は8.6年。手応えが可視化されない職種で、8年以上が平均になっている。この形のほうから見ていく。

目次

続く理由を、辞めた理由の裏側から確認する

やりがいの有無が離職に効いているなら、その痕跡は離職理由の統計に出るはずである。

仕事の内容が理由で辞めた人は3.6%しかいない

厚生労働省の令和6年雇用動向調査で、転職した女性が前職を辞めた理由の内訳はこうなっている。受付・案内事務員はフルタイム8万4,880人のうち6万7,390人が女性で、この職種は女性が79.4%を占める。

前職を辞めた理由(女性・令和6年) 割合
労働時間、休日等の労働条件が悪かった 12.8%
職場の人間関係が好ましくなかった 11.7%
給料等収入が少なかった 8.3%
会社の将来が不安だった 5.1%
能力・個性・資格を生かせなかった 3.7%
仕事の内容に興味を持てなかった 3.6%

やりがいに直結する下2つを足しても7.3%で、労働条件ひとつに届かない。この調査は全産業・全職業の転職入職者が対象で、受付職だけを抜き出したものではない。それでも順序ははっきりしている。人はやりがいの不足では辞めず、条件と関係で辞める

やりがいは、続ける理由としては後から効く

この順序は、やりがいを軽く見ろという話にはならない。条件と人間関係が耐えられる範囲にあるとき、次に効いてくるのが手応えの有無になる、という順番の話である。

面接で聞かれる「やりがい」も、実際には続けられるかどうかの確認として置かれていることが多い。答えるべきは仕事への愛着ではなく、どういう場面で手応えを感じる人間なのかという自己申告になる。

月給は事務系の下位、賞与は中位という評価のされ方

給与の水準そのものは高くない。ただ、内訳を開くと評価のかかり方が一様ではない。

賞与を月数に直すと順位が入れ替わる

年間賞与を所定内給与額で割ると、賞与が何ヶ月分に当たるかが出る。

職種 所定内給与額 年間賞与 賞与の月数換算
総合事務員 324,300円 1,075,500円 3.32ヶ月
会計事務従事者 318,300円 1,008,200円 3.17ヶ月
秘書 356,800円 1,012,000円 2.84ヶ月
その他の一般事務従事者 308,000円 843,300円 2.74ヶ月
受付・案内事務員 241,600円 485,800円 2.01ヶ月
事務用機器操作員(データ入力) 246,000円 361,700円 1.47ヶ月
電話応接事務員(コールセンター) 277,700円 393,700円 1.42ヶ月

所定内給与額では、受付は比較した7職種の中で最も低い。ところが賞与の月数では5位に上がり、データ入力とコールセンターを上回る。

2.01ヶ月が示しているのは、雇用の形のほう

賞与は、業績や個人の成果より、雇用の形に強く連動する。月数が2ヶ月を超えているということは、受付職の相当数が賞与の支給対象として扱われる雇用契約の中にいるということである。

金額で見れば年48万5,800円で、総合事務員の107万5,500円には遠く及ばない。それでも、コールセンターの39万3,700円より9万2,100円多い。待遇の低さは月給の水準から来ているのであって、評価されていないことから来ているのではない。給与の内訳は受付の年収・給料で分解した。

手応えの中身は3つに分かれる

やりがいという言葉を、受付という仕事の構造に沿って開くと3つになる。

反応が返るまでの時間が短い

受付の応対は、その場で結果が返ってくる。案内が的確なら相手はすぐ動き、外していれば戻ってくる。数ヶ月かけて成果を待つ職種と比べて、判断の正誤が確認できるまでの時間が極端に短い。

短いことには副作用もある。失敗も同じ速さで返ってくるため、一日の中で気分の上下が起きやすい。反応の早さを手応えにする人は、同時に反応の早さで消耗する人でもある。

組織の全体像が最初に見える席にいる

来客の顔ぶれ、社内の人の動き、取引の流れ。受付には、部署に配属されていたら見えない範囲の情報が集まる。総務や人事へ移る人が出るのは、この情報の集まり方が理由になっていることが多い。

日本標準職業分類が受付・案内事務員(小分類254)を秘書(255)や電話応接事務員(256)と同じ中分類に置いているのも、扱う情報の性質が近いためである。誰が誰につながるかを把握している立場は、組織の中では意外に限られる。

同じ相手が繰り返し来る

クリニックの患者、サロンの会員、常駐業者。多くの勤務先で、来る人の顔ぶれは一定の範囲に収まる。名前と用件が一致するようになると、応対の精度が上がり、相手の反応も変わる。ここまで来るのに要する時間は、来客数と勤務日数で決まる。週2日勤務なら、同じ状態に届くまでにフルタイムの倍以上かかる。

3つのうち、1つめは職種そのものに付いている。2つめは組織の規模が大きいほど強くなる。3つめは、来客が固定される勤務先でしか成立しない。自分がどれを手応えにするかで、選ぶべき勤務先が変わる

たとえば、来客が毎回入れ替わる商業施設のインフォメーションでは3つめが成立しない。逆にクリニックの受付は、来る人がほぼ固定される代わりに、組織の全体像は診療のまわりに閉じる。どちらが優れているという比較にはならない。応募先を決める前に、自分がどこで手応えを受け取るつもりなのかを決めておく話である。

やりがいが折れるのは、決まった2箇所である

給与が勤続で動かない

女性の平均は勤続7.5年で年収331万円、男性は勤続13.2年で453万円。年数を積めば上がる構造には見えるが、女性側の数字から逆算すると1年あたりの伸びは大きくない。手応えを給与で確認しようとすると、この職種では空振りしやすい。

改善が記録に残らない

来客の流れを整理して待ち時間を短くしても、改善が定着した時点で改善前を覚えている人がいなくなる。翌年の面談で説明できる材料が手元に残らない。

対策は単純で、やったことを自分で記録に残しておくしかない。1日の来客件数、取り次ぎに要した時間、変更した手順とその前後。数字にならない職種だからこそ、数字にした人だけが説明できる。

この記録は、社内の評価より転職のときに効く。受付の職務経歴書が「来客対応、電話対応、庶務」の3語で終わってしまうのは、記録が残っていないためである。きつさの側の内訳は受付の仕事はきつい理由で分けた。

続いている人の形を、そのまま条件に読み替える

平均勤続8.6年は、やりがいを感じ続けた結果ではなく、条件が生活に合った結果として読むほうが数字に合う。

短時間労働者の平均は50.1歳・勤続6.2年で、1日5.7時間・月13.7日という働き方である。フルタイムは42.0歳・勤続8.6年、超過実労働時間は月7時間で事務系の中では最も短い。どちらの枠も、生活の側を壊さずに続けられる形をしている。

やりがいを先に決めてから条件を合わせるのではなく、続く条件を先に決めてから手応えの置き場所を選ぶ。順序を逆にすると、3年目あたりで給与と手応えの両方が動かなくなる。勤務形態から求人を絞る場合は企業受付・総合受付の求人で指定できる。

よくある質問

面接でやりがいを聞かれたら何と答えればいいですか

抽象的な魅力ではなく、手応えを感じる場面の型で答えるほうが伝わる。反応が早いこと、全体が見える位置にいること、相手が固定されること。この3つのどれに反応する人間かを述べたうえで、応募先がその条件を満たしていると考えた理由まで続ける。

受付はやりがいがないと言われるのはなぜですか

成果が数量で残らないためである。ただし雇用動向調査で「仕事の内容に興味を持てなかった」を理由に辞めた女性は3.6%にとどまる。やりがいの不足が離職の主因になっている職種ではない。

未経験でもやりがいを感じられますか

3つの手応えのうち、反応の早さは初日から発生する。相手が固定されることによる手応えは、来客の顔ぶれを覚えるまで時間がかかる。最初の数ヶ月で判断すると、後者を取りこぼす。

やりがいを感じられなくなったら辞めるべきですか

離職理由の統計では、条件(12.8%)と人間関係(11.7%)が上位を占める。やりがいの不足を感じているとき、その下に条件面の不満が隠れていることは少なくない。辞めるかどうかの前に、どちらが先に来ているかを分けたほうがいい。

受付から次のキャリアにつながりますか

受付には組織全体の情報が集まるため、総務や人事への異動は起こりうる経路になる。ただし公的統計に職種間の異動実績のデータはないため、実際に道があるかどうかは応募先ごとに確認するしかない。

次に読む

出典

  • 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)/短時間労働者 職種別1時間当たり所定内給与額(企業規模計10人以上)
  • 厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」3 転職入職者の状況(表5 転職入職者が前職を辞めた理由別割合)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/index.html)
  • 総務省「日本標準職業分類(平成21年12月統計基準設定)」小分類254 受付・案内事務員/255 秘書/256 電話応接事務員(https://www.e-stat.go.jp/classifications/terms/20/02/254)

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この記事を書いた人

受付・コールセンター歴10年の編集者。企業受付・インバウンド・SV(管理者)・採用担当を経験し、現場目線で「受付キャリアナビ」編集部の記事執筆・編集を担当。

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