電話が苦手な人に向く仕事|職場選びと減らし方

電話が苦手な人向けの仕事と克服のコツ

結論から書く。電話が苦手なのは、話すのが下手だからではない。電話が相手も用件も時間も選べない通信手段だからである。3つ同時に選べない連絡手段は、日常でほぼ電話しか残っていない。

ただし、ここから「電話のない仕事を探せばいい」と進むと行き詰まる。事務職も受付も、電話がゼロの求人はほとんど出てこない。

現実的なのは、電話の量が職種でどう違うかを知って選ぶことと、1本あたりの負担を下げることの2つになる。どちらも感覚ではなく数字で当たりが付く。

目次

「電話が苦手」の正体は、3つ同時に選べないところにある

苦手意識を「あがり症」や「滑舌」に還元すると、対処が練習だけになる。実際に効くのは、何が選べないのかを分けて見ることのほうだ。

相手が選べない

かかってきた電話は、誰からかを見てから出るかどうかを決められない。代表電話ならなおさらで、取引先も営業も苦情も同じ番号から来る。メールなら差出人を見て順番を決められる。この差は準備の可否に直結する。

用件が選べない

第一声を聞くまで内容が分からない。答えられる用件かどうかも分からない。「分かりません」と言えない立場で受けると、この不確実性が丸ごと負荷になる。

時間が選べない

着信は自分の作業の切れ目を待ってくれない。書類を作りかけの状態で中断され、電話が終わったあと、どこまで進めていたかを思い出すところから再開する。この中断のコストは、通話時間そのものより長いことがある。

3つを並べると、苦手の中身が「話す技術」から離れていくのが分かる。減らすべきは話す量ではなく、選べなさのほうだ。以降の話はすべてここに戻ってくる。

家に固定電話がない世帯が45%ある。慣れていないのは自分だけではない

総務省の令和6年通信利用動向調査(令和6年8月末時点・有効回収15,304世帯)は、世帯の固定電話保有率を継続して集計している。

20年で36ポイント落ちた

固定電話の世帯保有率
2005年 90.7%
2013年 79.1%
2019年 69.0%
2024年 54.9%

2024年時点で、固定電話のない世帯が45.1%ある。知らない相手からの電話を家族が取り、取り次ぐという場面を一度も経験しないまま社会に出る人が、それだけの割合で存在する計算になる。

苦手意識を個人の資質として引き受けている人は多い。数字を見る限り、そう扱う根拠は薄い。

連絡の主戦場はテキストに移った

同じ調査で、インターネットの利用目的として最も多かったのは「SNS(無料通話機能を含む)の利用」で81.9%だった。50歳以上の各年齢階層では「電子メールの送受信」が最多である。

日常の連絡は、相手も用件も時間も選べる手段で回っている。職場に入った瞬間に、選べない手段が標準に戻る。この落差が苦手意識の実体に近い。

電話の量は職種で決まる。統計は3層に分かれている

厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査は、事務系を職種ごとに分けて集計している。電話の比重は、この区分にそのまま出る。

4職種の位置づけ

職種 電話の比重 年収換算 パート時給 労働者数
電話応接事務員 専業 約394万円 1,363円 179,540人
受付・案内事務員 来客と併走 約356万円 1,231円 84,880人
総合事務員 業務の一部 約530万円 1,509円 1,195,030人
事務用機器操作員 少ない 約356万円 1,241円 94,110人

電話応接事務員は、電話の呼び出し・交換・取次ぎや電話による照会対応を専業とする区分である。事務用機器操作員はデータ入力を指し、作業の主体は端末の操作にある。

注目したいのは、電話を専業にする職種の時給が1,363円と最も高く、データ入力の1,241円との差が122円ある点だ。電話に出る量は、賃金の側で値段が付いている。逆に言えば、電話を避けると時給で122円ぶん譲ることになる。避けるかどうかは、この交換条件を見てから決めたほうがいい。

求人票で電話の量を読む

職種名だけでは量が分からない。効く手がかりは3つある。代表電話を受けるのか個別の内線かで、前者は誰からかかってくるか読めない。次に、電話対応が業務欄の何番目に書かれているかで、上位にあるほど比重が高い。最後に、同じ島に何人いるかで、人数が多いほど1人あたりの着信は減る。

面接では「1日にどのくらい電話を取りますか」と直接聞いてかまわない。答えられない職場は、量を把握していないという情報になる。データ入力の実務内容は一般事務とデータ入力の違いで分解した。

業界側でも、電話は減りテキストと自動応答が増えている

電話を扱う量が最も多いコールセンター業界でも、チャネルの構成は動いている。日本コンタクトセンター協会(CCAJ)が2025年度に実施したコンタクトセンター企業実態調査(対象109社・回答68社)の数字がそれを示している。

提供チャネルの内訳

チャネル 対応している企業(N=68) 2023年度
電話 95.6% 96.9%
eメール 80.9% 87.5%
Webフォーム 69.1% 76.6%
有人チャット 55.9% 46.9%
チャットボット 48.5% 46.9%
AIボイスボット 35.3% 28.1%

有人チャットは3年で9.0ポイント、AIボイスボットは7.2ポイント上がった。上がっているのは、人が声で話さないチャネルのほうである。

業務量の増減

同じ調査で、電話業務は「昨年度より減少した」が19社で、「増加した」16社を上回った。テキストによる業務は「増加した」が28社で最多、自動応答による業務も「増加した」が21社で最多だった。

ただし、この調査の回答企業はコールセンターの受託会社である。事業会社の自社受付や事務職にそのまま当てはまるわけではない。読み取れるのは方向であって、水準ではない。

残る電話は難しくなる

電話が減り、自動応答が増える。この2つが同時に起きているとき、人のところに回ってくるのは自動で処理しきれなかった用件になる。定型的な問い合わせほど先に自動化されるからだ。

電話の本数が減っても、1本あたりの重さは下がらない。量を避ける戦略には期限があると見ておいたほうがいい。だからこそ、次の節の話が効いてくる。

1本あたりの負担は、準備の側から下げられる

選べなさは消せないが、選べない範囲を狭めることはできる。

型を手元に置く

名乗り、聞き取る項目、取り次げないときの言い回し。この3つを紙に書いて電話機の横に置く。読み上げても相手には分からない。即興で組み立てる負荷が消えるだけで、体感はかなり変わる。

聞き取る項目は、会社名・氏名・電話番号・用件・都合のよい時間帯の5つで足りる。工程ごとの型は電話対応のマナーにまとめた。

記録が残らない不安には、後から記録を作る

電話は言った言わないが残らない。この不安が強い人は、通話後にメモを短くメールで送る運用に切り替えると軽くなる。「先ほどお電話でうかがった内容を確認いたします」の一文と箇条書きで足りる。

相手にとっても確認になるため、断られる性質のものではない。社内向けの伝言も同じで、口頭で伝えるよりチャットに残したほうが取りこぼしが減る。

出られなかった電話の扱いを先に決める

鳴っている電話に出られない状態は、それ自体が負荷になる。手が離せないときは誰が取るか、留守番電話に回してよいのか、折り返しは誰の担当か。この3点を職場で確認しておく。

決まっていない職場では、鳴り続ける電話を全員が見ている状態が起きる。取れなかった責任が個人に寄る構造になっていないかは、入る前に見ておきたい。電話以外のチャネルで働く選択肢はカスタマーサポート(メール・チャット対応)の仕事で扱っている。

よくある質問

電話がまったくない仕事はありますか

賃金構造基本統計調査の職種区分で電話の比重が最も低いのは事務用機器操作員(データ入力)ですが、電話ゼロを保証する区分ではありません。求人票で確認できるのは、代表電話を受けるかどうか、業務欄で電話対応が何番目に書かれているか、同じ部署に何人いるかの3点です。

電話が苦手なのは慣れれば直りますか

慣れで下がるのは、用件と時間が選べないことによる負荷です。相手が選べない部分は慣れでは変わりません。だから型を手元に置く、出られないときの扱いを決めるといった、選べなさを狭める工夫のほうが再現性があります。

電話が苦手でもコールセンターで働けますか

CCAJの2025年度調査では、有人チャットに対応している企業が55.9%、eメールが80.9%あり、テキスト対応の枠は実在します。ただし調査は企業単位の実施状況で、テキスト専任の求人がその割合で存在するという意味ではありません。募集要項でチャネルの指定を確認する必要があります。

電話を避けると給料は下がりますか

同じ調査年の賃金統計で、電話応接事務員のパート時給は1,363円、事務用機器操作員は1,241円で、差は122円です。フルタイムの年収換算では394万円と356万円で38万円の差があります。電話の量と賃金は連動しているため、避ける判断には金額の裏付けを持っておいたほうが後悔が少なくなります。

次に読む

出典

  • 総務省「令和6年通信利用動向調査」(令和6年8月末時点・世帯有効回収15,304世帯・回収率38.9%) https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/250530_1.pdf
  • 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別・企業規模計10人以上 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html
  • 一般社団法人日本コンタクトセンター協会「2025年度 コンタクトセンター企業 実態調査」(対象109社・回答68社・回収率62.4%) https://ccaj.or.jp/telemarketing/doc/outsourcing_research_2025.pdf

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この記事を書いた人

受付・コールセンター歴10年の編集者。企業受付・インバウンド・SV(管理者)・採用担当を経験し、現場目線で「受付キャリアナビ」編集部の記事執筆・編集を担当。

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