ネイルサロンと脱毛サロンの受付は、求人サイトでは同じ「美容サロン受付」の枠に並ぶ。仕事内容の欄も、予約管理・電話応対・会計・カウンセリング補助と、ほぼ同じ言葉で書かれる。
それでも、入ったあとに覚える量は同じにならない。分かれ目は、その店が売っているものが1回の施術なのか、先に代金を受け取る回数券なのかというところにある。
そしてもう一つ。脱毛サロンの受付には、電話口で断定してはいけない質問がある。
脱毛サロンと医療脱毛は、法律の側で区切られている
「サロン脱毛と医療脱毛は何が違うのですか」。この問い合わせに、料金と回数の話だけで答えると、説明の順序を間違える。区切りは価格ではなく、行為そのものに置かれている。
毛乳頭を破壊する行為は医師でなければ行えない
厚生労働省医政局医事課長が発出した通知(平成13年11月8日・医政医発第105号)は、医師が行うのでなければ保健衛生上危害の生ずるおそれのある行為を3つ挙げ、医師免許を有しない者が業として行えば医師法第17条に違反するとしている。
そのひとつめが、用いる機器が医療用であるか否かを問わず、レーザー光線またはその他の強力なエネルギーを有する光線を毛根部分に照射し、毛乳頭・皮脂腺開口部等を破壊する行為である。残る2つは、針先に色素を付けて皮膚の表面に色素を入れる行為と、酸等の化学薬品を皮膚に塗布して表皮剥離を行う行為だった。
この通知は新しい規制を作ったものではない。冒頭に「保健衛生上看過し得ない状況となっている」と書かれ、前年の通知の内容を「再度徹底する」ために出されている。医師免許を持たない者による脱毛で健康被害が出ていた、という前提が先にあった。
受付が答えられる範囲は、この行為の手前で止まる
サロンの脱毛機器は、毛乳頭等を破壊する行為に当たらない範囲で運用される、という組み立てになっている。だから受付が「永久に生えなくなります」と答えた瞬間、店が説明している施術の性質と口頭の説明がずれる。
特定商取引法もエステティックの契約について誇大広告等を禁じており、著しく事実に相違する表示や、実際より著しく優良・有利と誤認させる表示が対象になる。広告の規制であって口頭説明の規制ではないが、店として何を言わない設計になっているかは、この禁止の中身に表れている。
受付が言えるのは、施術の回数と間隔、料金、そして効果の出方に個人差があるという店の説明までである。それ以上を聞かれたらカウンセリング担当に渡す。この境目を教わらないまま電話に出るのが、脱毛サロン受付でいちばん危ない状態になる。
相談件数の伸びは、いま医療脱毛の側にある
美容医療の相談は2年で2.8倍になった
国民生活センターのPIO-NETに登録された美容医療サービスの相談件数は、2022年度3,798件、2023年度6,281件、2024年度10,717件と推移している。2年で2.8倍である。
同じPIO-NETで、エステティックサービスの2024年度の相談件数は9,745件だった。2023年度の15,143件から減っている。件数の上下が逆を向いた結果、2024年度は美容医療サービスがエステティックサービスを上回った。
ただしエステティック側の件数が減ったのは、トラブルが消えたからではない。2024年度の集計でも全体の16位に残っている。減ったうえで上位に居続けている、というのが正確な状態になる。
相談件数は満足度の指標ではないし、契約数の代わりにもならない。それでも窓口に立つ側が読めることはある。争点になるのは、契約の内容と渡した書面が一致しているかどうかだ。受付が管理できるのもそこだけである。
前払いを扱う店には、書類を見せる義務がある
特定商取引法の特定継続的役務提供では、エステティックは契約期間1か月超・金額5万円超が対象になる。脱毛はこの区分に含まれる。事業者には概要書面と契約書面を別々に交付する義務があり、さらに前払方式で5万円を超える場合には、貸借対照表等の書類を閲覧させる義務が課される。
回数券を先に売る店は、この前払方式に当たる。「途中で店がなくなったらどうなるのか」と聞かれたとき、見せられる書類が制度として用意されていることを受付が知っているかどうかで、応対の落ち着きが変わる。書面の交付と解約の手続きそのものはエステ受付が扱う契約手続きで詳しく整理している。
ネイルサロンは、理美容所とは別の枠に置かれている
脱毛側が契約の話だったのに対して、ネイル側は衛生の話になる。
指針はあるが、免許制度の枠外にある
厚生労働省健康局長通知(平成22年9月15日・健発0915第4号)は、ネイルサロンにおける衛生管理に関する指針を定めている。この通知には、理容所・美容所は理容師法・美容師法によって衛生水準の確保が義務づけられるため本指針の対象ではない、と明記されている。指針そのものは地方自治法第245条の4第1項に規定する技術的な助言にあたる。
届出と免許で縛られる理美容所とは、別の場所に置かれているわけだ。健康被害が保健所に相談された際に、地域保健法に基づいてこの指針を用いた指導・助言を行う、という組み立てになっている。
指針が受付の位置に置いている作業がある
指針は施術者だけを名宛人にしていない。読むと、受付カウンターで起きることがそのまま書かれている。
- 施術前に、感染症・皮膚疾患の治療中か、アレルギー体質か、薬を服用しているか、敏感肌かを、問診票等を用いて確実に確認する(第7)
- 施術に伴う健康被害発生のリスク等を施術前に十分に説明し、説明と承諾は書面で行うことが望ましい(第7)
- 待合所を設けることが望ましく、設けられない場合は施術中の客と施術前後の客が混在しないようにする(第3)
- 作業場には、作業中の客以外の者をみだりに出入りさせない(第5)
問診票を渡して受け取るのも、来店した客を待合に留めて施術中の客と交差させないのも、動線の上では受付の担当になる。ネイルサロンの受付が予約と会計だけで終わらないのは、この指針の作りから来ている。
回転の速さは、ネイルと脱毛で逆向きに効く
どちらが忙しいかではなく、忙しさの出どころが違う。
埋める仕事と、数える仕事
ネイルは1回ごとに完結する施術が中心で、来店のたびに次の枠を埋め直す必要がある。脱毛は回数券やコースで来店回数が先に決まっているため、受付の仕事は枠を埋めることより、残回数と有効期限を数えることに寄る。
| 項目 | ネイルサロン | 脱毛サロン |
|---|---|---|
| 主な契約の形 | 1回ごとの施術・都度払い | 回数券・コース契約(前払い) |
| 受付が管理するもの | 当日の空き枠と次回予約 | 残回数・有効期限・契約書面 |
| 根拠になる決まり | ネイルサロンにおける衛生管理に関する指針(技術的助言) | 特定商取引法の特定継続的役務提供(1か月超・5万円超) |
| 受付が断定できないこと | 皮膚の異常が何によるものか | 脱毛の効果がどこまで出るか |
求人票では、「予約管理」「新規のご案内」が前に出ていればネイル寄り、「契約手続き」「カウンセリング同席」が入っていれば脱毛寄りだと見当がつく。美容・サロン受付の求人を見るときも、店の主力が単発か回数券かを先に確かめておきたい。
給料は受付・案内事務員の統計から見当をつける
ネイルサロンや脱毛サロンの受付だけを切り出した賃金統計はない。近い区分は厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査の「受付・案内事務員」になる。
正社員は年収356万円、パートは時給1,231円
| 区分 | 金額 | 平均年齢 | 勤続年数 | 労働者数 |
|---|---|---|---|---|
| 一般労働者(フルタイム) | 年収換算 約356万円 | 42.0歳 | 8.6年 | 84,880人 |
| 短時間労働者(パート) | 時給 1,231円 | 50.1歳 | 6.2年 | 84,580人 |
年収換算は「きまって支給する現金給与額256,500円 × 12か月 + 年間賞与485,800円」で算出した。
この1,231円は、平均年齢50.1歳・勤続6.2年の層を含んだ数字である。サロンの募集時給がこれを下回っていても、それだけで低いとは言えない。比べるなら、勤務地の最低賃金とその店の昇給の刻み方のほうが手がかりになる。受付という職種全体の枠組みは受付の仕事内容と職場の種類で整理している。
よくある質問
ネイルや脱毛の資格がないと受付はできませんか
受付・会計・予約管理の業務に免許の要件を定めた規定は見当たらない。ただしネイルサロンの衛生管理指針は、開設者がサロンごとに衛生管理責任者を定め、常に従業者の衛生教育に努めることを求めている。店の衛生手順は覚える対象に入る。
脱毛サロンと医療脱毛クリニックの受付は同じ仕事ですか
同じではない。医政医発第105号のとおり、レーザー光線等で毛乳頭・皮脂腺開口部等を破壊する行為は医師が行うものとされている。クリニック側の受付は医療機関の窓口業務になり、保険資格の確認や診療報酬の扱いが加わる。
回数券の解約を求められたらどう答えればよいですか
店の手順に従うのが前提になる。制度としては、期間1か月超・5万円超のエステティックは特定継続的役務提供に当たり、契約期間中であればいつでも中途解約ができる。「期限を過ぎたので解約できない」という応対は誤りになる。
ネイルサロンの受付は施術も担当しますか
店による。指針は、客1人ごとの作業前後に手指を洗浄すること、皮膚に接する器具類を客1人ごとに消毒した清潔なものにすることを求めている。受付と施術を兼ねる場合、この手順が業務時間の中に入る。
次に読む
出典
- 厚生労働省医政局医事課長通知「医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて」平成13年11月8日・医政医発第105号 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta6731&dataType=1&pageNo=1
- 厚生労働省健康局長通知「ネイルサロンにおける衛生管理に関する指針について」平成22年9月15日・健発0915第4号(第3・第5・第7)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb6459&dataType=1&pageNo=1
- 消費者庁「特定商取引法ガイド」特定継続的役務提供 https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/continuousservices/
- 国民生活センター「美容医療サービス」2025年8月1日更新(PIO-NET登録件数)https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/biyo.html
- 国民生活センター「2024年度 全国の消費生活相談の状況」2025年8月6日公表 https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20250806_3.html
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」受付・案内事務員(産業計・企業規模計10人以上・男女計)
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