産婦人科・レディースクリニックの受付|妊婦健診の公費と配慮

産婦人科・レディースクリニックの受付の仕事内容|1日の流れ・向いている人・未経験の始め方

産婦人科・レディースクリニックの受付は、来院受付、保険資格の確認、会計、月初のレセプトを担当する。共通部分は病院とクリニックで違う受付の仕事内容にまとめてある。

この科でだけ形が変わるのは2点ある。ひとつは、窓口で受け取る券が保険証だけではないこと。妊婦健診の費用は市町村の公費で賄われ、その券の中身は自治体ごとに違う。もうひとつは、名前を呼ぶという当たり前の作業に判断が入ることだ。

どちらも「クリニック受付」という求人票の一語からは見えない。

目次

妊婦健診で動くのは保険ではなく、市町村の公費

全1,741市区町村が14回以上を助成し、平均は109,730円

母子保健法第13条は、市町村が必要に応じて妊産婦に健康診査を行い、または健康診査を受けることを勧奨しなければならないと定めている。同条第2項は、妊婦に対する健康診査についての望ましい基準を内閣総理大臣が定めるものとしている。

こども家庭庁が令和7年4月に公表した調査によると、令和6年4月1日現在、全1,741市区町村が14回以上の妊婦健診を助成していた。妊婦1人当たりの公費負担額は全国平均109,730円で、前年の108,481円から1,249円増えている。公費負担額が明示されていない93市区町村を除く1,648市区町村での集計値である。

保険証を出して3割を払う形とは、金の流れがまるごと違う。窓口が確認するのは負担割合ではなく、その券で何が公費になるかになる。

都道府県平均で56,000円近い開きがある

金額は全国一律ではない。同調査の都道府県別平均を見ると、最も低い神奈川県が80,159円、最も高い福島県が136,147円で、55,988円の差がある。秋田県135,113円、徳島県133,108円、岐阜県130,717円が続く。

この差は、患者が窓口で払う自己負担にそのまま出る。公費負担額を超えた分は妊婦の支払いになるためだ。同調査で、望ましい基準の項目について妊婦の自己負担が発生しないよう公費負担額を設定していると答えたのは1,139市区町村だった。残りの自治体から来た妊婦には、健診のたびに差額が出る。

受付が見る券は、自治体ごとに中身が違う

92.3%が受診券方式、7.7%が補助券方式等

こども家庭庁の同調査によると、妊婦に対する受診券の交付方法は2通りある。毎回の検査項目が示された券を渡す「受診券方式」が1,607市区町村(92.3%)、補助額が記載された券を渡す「補助券方式」等が134市区町村(7.7%)である。

受診券方式のうち、望ましい基準に定める検査項目を全て実施している市区町村は1,477で91.9%。項目別に見ると、実施率にばらつきがある。

検査項目 公費負担を実施する市区町村数 割合
血液型等・B型肝炎抗原・HIV抗体・梅毒血清反応・風疹ウイルス抗体・性器クラミジア 1,607 100.0%
B群溶血性レンサ球菌検査 1,606 99.9%
血糖検査(2回) 1,600 99.6%
血算検査(3回) 1,599 99.5%
超音波検査(4回) 1,509 93.9%
子宮頸がん検診 1,508 93.8%

超音波検査は98、子宮頸がん検診は99の自治体で、1回も公費負担が実施されていない。券を出した妊婦がどの自治体の住民かによって、同じ検査でも公費か自己負担かが変わる。券の中身を読むのが会計の前提になる。

里帰り出産は、償還払いになることが多い

居住地以外の医療機関で健診を受けた場合の扱いも、自治体ごとに分かれる。同調査では1,741市区町村すべてが公費負担ありと答えた一方、その方法は複数だった。償還払いで対応するのが970市区町村(55.7%)、受診した施設と契約するのが342市区町村(19.6%)、契約と償還払いを併用するのが1,043市区町村(59.9%)である。

償還払いの場合、妊婦はいったん全額を窓口で払い、あとから自治体に請求する。受付が渡すのは領収証と、自治体に出す書類の説明になる。契約している自治体の妊婦なら券がそのまま使える。同じ日に来た2人の妊婦で、会計の手順が別物になるということでもある。

名前を呼ぶという作業に、判断が入る

ガイダンスが「患者の希望に応じて一定の配慮」を求めている

個人情報保護委員会と厚生労働省が定める「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」は、受付での呼び出しについてこう記している。受付での呼び出しや病室における患者の名札の掲示などは、患者の取り違え防止など業務を適切に実施するうえで必要と考えられるが、医療におけるプライバシー保護の重要性に鑑み、患者の希望に応じて一定の配慮をすることが望ましい、と。

取り違え防止と、プライバシー保護。両方が同時に立っていて、どちらかを選べとは書かれていない。書かれているのは、患者の希望に応じて配慮することが望ましいという線だけである。

判断の場所は窓口にある。番号で呼ぶ運用にするか、氏名で呼ぶか、初診時に希望を聞くか。医療機関ごとに答えが違うのは、ガイダンスが答えを一つに決めていないからだ。

同じ待合に、来院の理由が違う患者が並ぶ

配慮が求められる背景には、この科の患者構成がある。

令和5年患者調査によると、調査日に「妊娠,分娩及び産じょく」で外来を受けた推計患者数は12.1千人(病院6.0千人・一般診療所6.1千人)で、総患者数は142千人。一方、婦人科系の疾患を含む「腎尿路生殖器系の疾患」の外来は337.1千人ある。

妊婦健診で来た人と、疾患の治療で来た人が同じ待合に座る。呼び出し方の配慮が他科より切実に効くのは、来院の理由がその場で推測できてしまう構造があるためである。

産科の看板は減り、婦人科は増えている

一般診療所で産婦人科2,784・産科308・婦人科1,908

令和5年医療施設(静態・動態)調査によると、一般診療所が標ぼうする診療科目別の施設数は、産婦人科2,784、産科308、婦人科1,908だった。令和2年と比べると産婦人科は42施設減(-1.5%)、産科は9施設減(-2.8%)、婦人科は69施設増(+3.8%)である。

分娩を扱う側が縮み、婦人科だけを掲げる診療所が増えている。求人票の科名を読むときに、分娩の有無で職場の性格が変わる点は押さえておきたい。

分娩を扱う一般病院は1,254施設

病院側の数字も見ておく。同調査で、一般病院において産婦人科を標ぼうする施設は1,061で一般病院総数の15.0%、産科は193で2.7%。産婦人科と産科を合計すると1,254施設、17.7%になる。

一般病院の8割以上は、産科の看板を持たない。夜間の分娩対応がある職場は、この1,254施設と、分娩を扱う診療所に限られる。日勤だけで働きたい場合、婦人科中心のクリニックのほうが条件は合いやすい。

給料は診療科ではなく、担当する範囲で動く

統計に産婦人科の受付という区分はない

厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査に「医療事務」という職種区分はなく、医療機関の窓口業務は担当範囲に応じて別の区分に振り分けられる。

統計上の職種 正社員の年収換算 パートの時給 平均勤続
受付・案内事務員 356万円 1,231円 8.6年
会計事務従事者 509万円 1,593円 12.7年
その他の保健医療サービス職業従事者 323万円 1,281円 6.4年

いずれも全産業の平均で、診療科別の集計は存在しない。産婦人科だから高いという裏づけはない。差がつくのは科名ではなく、公費の請求やレセプトまで持つかどうかの範囲である。条件から絞るなら産婦人科・レディースクリニックを含む医療受付の求人を探すで勤務形態を指定できる。

よくある質問

出産や育児の経験がないと務まりませんか

要件として置いている根拠はない。受付・案内事務員は国家資格でも法定の職種でもない。窓口で求められるのは経験の共有ではなく、公費の券の読み分けと、呼び出し方の配慮という手順のほうになる。

妊婦健診の会計は保険診療と何が違いますか

保険証で負担割合を出す形ではなく、市町村の公費負担を券で確認する形になる。全1,741市区町村が14回以上を助成し、公費負担額の全国平均は109,730円。ただし都道府県平均で80,159円から136,147円まで開きがあり、超えた分は妊婦の自己負担になる。

里帰り出産の患者が来たらどうしますか

自治体によって扱いが分かれる。償還払いで対応する市区町村が970(55.7%)、受診した施設と契約する市区町村が342(19.6%)ある。償還払いなら窓口でいったん全額を受け取り、自治体への請求方法を案内する流れになる。

名前を呼ばれたくないという希望には応じられますか

個人情報の取扱いに関するガイダンスは、受付での呼び出しについて、患者の希望に応じて一定の配慮をすることが望ましいとしている。実際の運用は医療機関ごとに決まっているため、初診の受付でどう聞くかは職場の手順に従うことになる。

次に読む

出典

  • こども家庭庁「妊婦健康診査の公費負担の状況に係る調査結果について」(令和6年4月1日現在/全国1,741自治体)https://www.cfa.go.jp/press/2cf467a4-025c-4b69-a1a6-8a69626fd658
  • 母子保健法 第13条・第16条 https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000141
  • 個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(平成29年4月14日/令和8年4月一部改正)https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/iryoukaigo_guidance/
  • 厚生労働省「令和5年医療施設(静態・動態)調査の概況」(診療科目別は重複計上)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/23/
  • 厚生労働省「令和5年患者調査の概況」(令和5年10月実施)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/index.html
  • 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(企業規模計10人以上・産業計)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html

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この記事を書いた人

受付・コールセンター歴10年の編集者。企業受付・インバウンド・SV(管理者)・採用担当を経験し、現場目線で「受付キャリアナビ」編集部の記事執筆・編集を担当。

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