声・滑舌に自信がない人のコールセンター|働ける条件と練習の順番

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結論から書く。声質や滑舌そのものを理由に応募を止める必要はない。この職種で実際に評価されているのは声の良し悪しではなく、相手が一度で聞き取れる速度と区切りで話せるかである。

ただし、これは「気にしなくていい」という話ではない。

聞き返される回数が多い状態は、応対時間が伸びるという形で数字に出る。数字に出る以上、放置すれば評価に響く。逆に言えば、原因を切り分けて手当てすれば動かせる種類の問題でもある。

まず、この職種がどれだけの人数を必要としていて、どんな業務を受けているのかから見ていく。

目次

「滑舌が悪いと落ちる」という前提は、業界の母数と噛み合わない

採用の可否を考えるとき、最初に見るべきは選考基準ではなく、その職種が何人を必要としているかである。

27万7,270人という規模

厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、コールセンターのオペレーターが含まれる職種区分「電話応接事務員」の労働者数は、フルタイム17万9,540人、パート・アルバイト9万7,730人で、合計27万7,270人にのぼる。

この規模を、発声に問題のない人だけで埋めるのは現実的ではない。実際の年齢構成を見ると、フルタイムの平均年齢は43.6歳、パートは50.2歳である。声の若さや通りの良さを商品にしている職種であれば、この年齢分布にはならない。

採用に苦労している企業が82.1%

日本コンタクトセンター協会(CCAJ)の2025年度コンタクトセンター企業実態調査は、コールセンターの受託企業109社を対象に68社が回答したものである。この調査で採用活動の状況を答えた67社のうち、「苦労している」26社と「やや苦労している」29社を合わせた45社、82.1%が採用難を訴えている。

オペレーターの不足感は、非公開2社を除く66社の72.7%。どの職種でも「過剰気味である」と答えた企業はゼロだった。声の質で候補者を絞れる需給状況ではない。

外国籍の人材を雇用している企業が58.8%

同調査で外国人(外国籍人材)を雇用していると答えた企業は40社で、回答68社の58.8%にあたる。外国語対応を行っている企業も40社(58.8%)で、対応言語は英語38社、中国語22社、韓国語17社と続く。

日本語の発音が母語話者と同じでない人が、すでに現場で電話を取っている。この事実は、発音の完璧さが採用要件ではないことを、選考基準の説明よりも直接的に示している。

電話業務が実際に求めているのは、声の質ではない

では何が要件なのか。受託している業務の内訳から逆算すると、輪郭が出てくる。

受託業務の内訳

CCAJ調査でセンターが受託している業務は、「カスタマーサポート」64社(94.1%)、「問い合わせ受付」61社(89.7%)、「受注センター」47社(69.1%)の順に多い。

この3つに共通しているのは、相手が先に用件を持っているという点である。こちらから話題を作る必要がない。話す量より、聞いて確認する量のほうが多い構造になっている。

電話業務の85.1%は受信で、相手の70.1%は個人

同調査で電話業務のイン・アウトの比率を見ると、「インバウンドのみ」と「インバウンドの方が多い」を合わせて57社、非公開を除く67社の85.1%を占める。コールの対象も「B to Cのみ」「B to Cの方が多い」で47社、同じく67社の70.1%だった。

相手は個人であり、業界用語を知らない。この条件下では、速く滑らかに話すことが評価されない。むしろ、専門用語を避けて短く区切る話し方が正解になる。滑舌に自信がある人が有利とは限らない構造である。

聞き返しが問題になるのは、どの場面か

受注センターが69.1%を占めている点に、要件がはっきり出ている。注文番号・住所・電話番号・金額といった、間違えると業務が成立しない情報を、音声だけでやりとりする場面がある。

ここで発生する聞き返しは、滑舌の問題ではなく情報の受け渡しの問題である。「1」と「7」、「B」と「D」を区別する手順は、発声の練習ではなく確認手順の側で解決する。どちらの問題なのかを切り分けないまま「滑舌を直そう」とすると、直しても聞き返しは減らない

聞き返される原因は5つに分かれる。全部を練習で直すわけではない

自分の話し方のどこが引っかかっているのかは、原因ごとに手当てが違う。業務の中身から逆算すると、原因は次のように分かれる。

練習で動くもの、機材で動くもの、手順で動くもの

原因 症状の出方 手当ての場所
話す速度が速い 冒頭の名乗りで聞き返される 練習
語尾が消える 文末の確認事項が伝わらない 練習
緊張で声が浅くなる 通話の最初の1〜2分だけ悪化する 慣れと型
マイクの位置・機材 相手や日によってばらつく 機材の調整
数字・固有名詞の受け渡し 復唱のたびに止まる 確認手順

このうち練習で動くのは上の2つだけである。3つめは回数で減る。下の2つは、発声とは別系統の問題で、口の動かし方をいくら直しても改善しない。

速度は、自分では速いと感じない

早口の自覚は本人には出にくい。目安になるのは、名乗りの部分で聞き返されるかどうかである。名乗りは毎回同じ文言なので、内容の難しさが原因になりようがない。ここで引っかかるなら、原因は速度か語尾のどちらかに絞り込める。

語尾は、話す内容ではなく息の量の問題

「〜になります」「〜でよろしいでしょうか」といった文末は、確認を取る場所であるにもかかわらず、息が足りなくなって最も弱くなりやすい。一文を短く切って、文末まで息を残す。これは滑舌の訓練というより、文の長さの設計に近い。

機材が原因のときは、練習しても変わらない

聞き返しの頻度が相手や日によってばらつくなら、原因は自分の口ではなくヘッドセットの側にある可能性が高い。マイクが口元からずれている、集音の向きが合っていない、回線が混んでいる、といった条件は、通話ごとに変わる。

自分の話し方が原因なら、症状は毎回ほぼ同じ形で出る。ばらつくかどうかが、練習で直る問題かどうかの分かれ目になる。ここを取り違えたまま発声練習を続けても、聞き返しの回数は動かない。在宅勤務では機材が自前になるため、この切り分けはいっそう重要になる。

応対の型を先に固めると、声の負担が下がる

発声を直すより先に効くのが、話す内容の側を固定してしまうやり方である。

定型部分と非定型部分を分ける

一本の通話のうち、名乗り・本人確認・復唱・クロージングは、どの案件でも文言がほぼ決まっている。ここを完全に暗記して、考えずに口が動く状態にしておく。

すると、頭を使う必要があるのは相手の用件を聞く部分だけになる。話す量が減るのではなく、話しながら考える量が減る。緊張由来の声の浅さは、この設計でかなり落ちる。

数字とアルファベットは、発声とは別扱いにする

受注センターが69.1%を占める以上、数字とアルファベットの受け渡しは避けて通れない。ここは滑舌で押し切らず、区切りと復唱で処理する。電話番号を3桁ずつ区切る、アルファベットを地名や単語に置き換えて伝える、聞き取った内容は必ず読み上げて確認を取る。

いずれも発声の質とは無関係な手順である。手順で処理できる部分を手順に渡してしまえば、声で頑張らなければならない領域はかなり狭くなる。

型は入社後に配られる。ただし配り方は会社で違う

こうした型は、通常は研修で渡される。ただしCCAJ調査によると、専任トレーナーがいる企業は36社(回答68社の52.9%)、専任のQC・QA担当者がいる企業は31社(45.6%)で、いずれも半数前後にとどまる。

つまり、話し方を体系的に教われるかどうかは会社によって分かれる。声に不安がある人にとっては、時給より先に見るべき条件がここにある。研修の実際はコールセンター未経験デビューの流れで扱っている。

評価のされ方を知っておくと、不安の置き場所が変わる

「自分の話し方が下手だと思われていないか」という不安は、評価が見えないところで下されていると感じるから続く。実際には、評価はかなり明示的な形で行われている。

録音の採点は、半数近くのセンターで自動化されつつある

CCAJ調査によると、生成AIをセンター運営の実務で運用している企業は33社(48.5%)にのぼる。PoC段階や社内検証を含めると55社が何らかの形で活用しており、その55社での活用方法は「応対内容の要約」74.5%、「メール文章の作成」63.6%、「FAQの自動生成」61.8%と続く。

注目したいのは、「コミュニケーターの評価(モニタリングの採点)」が49.1%を占めている点である。応対の録音を聞いて採点する作業に、機械が入り始めている。

採点されるのは印象ではなく項目である

採点が仕組み化されるということは、評価基準が項目に分解されるということでもある。名乗りの有無、復唱の実施、確認の取り方といった、実行したかどうかで判定できる項目が中心になる。

声の印象で人物評価が下されているわけではない。手順を実行していれば点は付く。この構造を知っているだけで、通話中に気にすべきことの優先順位が変わる。

数字に出るのは「聞き返しの回数」ではなく通話時間

もう一つ知っておきたいのは、聞き返しそのものを数える指標が通常は存在しないことである。表に出るのは1件あたりの通話時間や処理件数といった集計値で、聞き返しはその内側に埋もれる。

だから、聞き返しが多少あっても、確認手順が速ければ数字は悪化しない。逆に、聞き返しを恐れて確認を省くと、後処理でのミス修正に時間を取られて数字が悪くなる。声の問題として悩んでいたものが、実は手順の問題として測られている。

給与の側に、声を理由にした差はない

賃金構造基本統計調査で電話応接事務員を見ると、フルタイムの年収換算は約394万円、パート・アルバイトの時給は1,363円である。この統計に応対品質による区分はない。差がつくのは雇用形態と役職であって、話し方の巧拙ではない。

つまり、声に自信がないことを理由に低い条件の職場へ回されるという構造は、統計上は確認できない。気にすべきは配属先の業務内訳のほうである。

声を使う量そのものを減らす選択肢は、実際に増えている

どうしても電話が負担なら、業務の側を選ぶ手もある。ここは業界の動きが後押ししている。

電話は減り、テキストは増えている

CCAJ調査で電話業務の増減を尋ねた項目では、「昨年度より減少した」が19社で「増加した」の16社を上回った。一方、メールやチャット等のテキストによる業務は「増加した」が28社で最多となり、テキスト業務を行っていない企業を除く62社の45.2%を占めた。

チャットボットやボイスボットによる自動応答も「増加した」が21社(自動応答を行っていない企業を除く50社の42%)と最も多い。電話の総量は減る方向に動いている。

提供チャネルの内訳

チャネル 対応している企業の比率 2023年度からの動き
電話 95.6% 96.9%からわずかに低下
eメール 80.9% 87.5%から低下
Webフォーム 69.1% 76.6%から低下
FAX 58.8% 73.4%から大きく低下
有人チャット 55.9% 46.9%から上昇
チャットボット 48.5% 46.9%から微増
AIボイスボット 35.3% 28.1%から上昇

いずれも回答68社ベースである。3年間で伸びているのは有人チャットと自動応答の2系統だけで、それ以外は横ばいか低下している。

有人チャットが55.9%まで来ている点は、声を使わない持ち場が半数以上のセンターに存在することを意味する。ただしチャット専任の求人になっているとは限らず、電話と兼務の場合も多い。応募時に業務の内訳を確認する価値がある。電話を使わない働き方はメール・チャット対応の仕事内容で整理した。

在宅は、声にとって有利にも不利にもなる

在宅オペレーションを「既に実施している」企業は39社で、非公開を除く65社の60%に達した。実施理由の最多は「働き方の多様化のため」で39社中33社(84.6%)である。

在宅は周囲の話し声が入らない分、聞き取りやすさでは有利に働く。一方で機材と回線が自前になるため、音質のばらつきが自分の責任範囲に入る。マイク位置が原因の聞き返しは、在宅では誰も指摘してくれない。始め方の条件は在宅コールセンターの始め方にまとめている。

応募前に確認する4点

ここまでの数字を、求人票と面接での確認事項に落とすとこうなる。

  1. 受信中心か発信中心か。業界全体では受信が85.1%だが、個別の求人では発信中心もある。話す量は発信のほうが多い。
  2. 専任トレーナーの有無。業界平均で52.9%。話し方を教わりたいなら、ここが分かれ目になる。
  3. チャットやメールの比率。有人チャット対応があるセンターは55.9%。電話以外の持ち場があるかを聞いておく。
  4. モニタリングの頻度と返し方。採点が項目化されているセンターほど、直すべき点が具体的に返ってくる。

1つめは特に効く。発信は自分から話し始めるため、名乗りと用件説明を毎回こちらが担う。受信なら相手が話し出すのを受けてから入れる。話す量の差はインバウンドとアウトバウンドの違いで業務の流れごと比較している。

面接で声について聞かれた場合も、身構える必要はない。確認されているのは、聞き取りやすさと、聞き返されたときに落ち着いて言い直せるかどうかである。滑舌の良さを求められているわけではない。

受信業務から探すなら、カスタマーサポート(受信)の求人で仕事内容と応募条件の書かれ方を確認しておくと、必要な水準が具体的に見える。

よくある質問

滑舌が悪いとコールセンターの採用で落とされますか

CCAJの2025年度調査では、採用に苦労している企業が回答67社中45社(82.1%)、オペレーターの不足感がある企業が66社中48社(72.7%)で、声質で候補を絞れる需給状況にない。同調査で外国籍人材を雇用している企業も40社(58.8%)ある。選考で見られているのは、聞き取れる速度で話せるかどうかである。

電話が苦手でもコールセンターで働けますか

電話を扱う以上、通話がゼロになる職場は多くない。ただしCCAJ調査では有人チャット対応を提供している企業が55.9%、eメールが80.9%あり、テキスト業務は「昨年度より増加した」が28社で最多だった。声を使う比率を下げる働き方は存在する。応募時に業務の内訳を確認するのが早い。

声が小さいと言われます。改善できますか

聞き返しの原因は、速度・語尾・緊張・機材・確認手順の5つに分かれる。声量として自覚される症状は、マイクの位置や機材の設定が原因のこともある。相手や日によって指摘のばらつきがあるなら、発声より先に機材を疑うほうが早い。

方言やなまりがあると不利ですか

CCAJ調査で外国語対応を行っている企業は40社(58.8%)、外国籍人材を雇用している企業も40社(58.8%)ある。発音の均質さを要件にしている業界ではない。B to C の通話が70.1%を占めるため、相手も一般の個人である。専門用語を避けて短く区切ることのほうが、なまりの有無より結果に効く。

練習は何から始めればいいですか

名乗りの部分で聞き返されるかどうかを先に確かめたい。名乗りは文言が固定されているため、そこで引っかかるなら原因は速度か語尾に絞られる。数字やアルファベットで止まるなら、それは発声ではなく復唱手順の問題で、区切り方を決めるだけで解消する。

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出典

  • 一般社団法人日本コンタクトセンター協会「2025年度 コンタクトセンター企業 実態調査」(対象109社・回答68社・回収率62.4%・2025年6月16日〜7月23日実施)
  • 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計・企業規模計10人以上)/短時間労働者 職種別1時間当たり所定内給与額

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この記事を書いた人

受付・コールセンター歴10年の編集者。企業受付・インバウンド・SV(管理者)・採用担当を経験し、現場目線で「受付キャリアナビ」編集部の記事執筆・編集を担当。

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