整形外科・外科クリニックの受付は、来院受付、保険資格の確認、会計、レセプトを担当する。ここは他の診療科と同じである。
違うのは2点だけだ。健康保険を使えない患者が日常的に来ることと、診察が終わったあとにもう一つの待ち行列があること。「整形外科の受付は大変」と言われるとき、その中身はたいていこの2つを指している。
逆に言えば、この2つを先に理解しておけば、覚える順番がはっきりする。医療受付の基本業務そのものはクリニック・病院受付の仕事内容で整理しているので、ここでは整形外科に固有の部分だけを扱う。
保険証を出さない患者が来る科である
仕事中や通勤中のけがで受診した患者には、健康保険を使えない。労災保険の扱いになる。
窓口で受け取る書類が違う
厚生労働省の労災保険のパンフレット「療養(補償)等給付の請求手続」によると、労災指定医療機関で療養を受ける場合、被災した労働者は「療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付請求書」(様式第5号)を、療養を受けている指定医療機関等を経由して所轄の労働基準監督署長に提出する。通勤災害の場合は様式第16号の3になる。
つまり請求書は、患者から受付に渡され、医療機関を通って労基署へ行く。受付は書類の受け取りと不備の確認を担当することになる。
指定医療機関かどうかで手続きが変わる
勤務先の医療機関が労災指定でない場合、患者はいったん費用を負担し、あとから「療養の費用」を請求する形になる。この場合の様式は第7号(1)または第16号の5(1)で、事業主の証明が必要になる。
同じ「労災です」という申し出でも、自院が指定か指定外かで説明する内容がまるごと変わる。求人票を見るときに労災指定医療機関かどうかを調べておくと、初日に何を覚えるかの見当がつく。
待合が混む原因は、診察ではなくリハビリにある
整形外科の待合室が混んでいるとき、診察待ちだけを見ていると理由がわからない。もう一つの流れが重なっている。
リハビリテーション科は整形外科とほぼ同数ある
厚生労働省の令和5年医療施設(静態・動態)調査によると、一般診療所が標ぼうする診療科目別の施設数(重複計上)は、整形外科12,298施設、リハビリテーション科10,958施設である。数がほぼ並んでいるのは、整形外科がリハビリを併設していることが多いためだ。
患者は診察のあと、もう一度待つ
令和5年患者調査では、調査日に「筋骨格系及び結合組織の疾患」で外来を受けた推計患者数は805.1千人。うち一般診療所が644.9千人で、80.1%を診療所が受け止めている。
診察を終えた患者がリハビリに回ると、その人はもう一度待合に戻ってくる。受付から見ると、同じ患者を1日に2回さばくことになる。窓口の混雑が診察の進み具合と一致しないのは、この二段構えのためである。
そして、この二段目は予約枠で動く。リハビリは同じ患者が週に何度も通うため、次回予約の調整が受付の恒常業務になる。他科の「次回はお大事に」で終わる会計とは、作業量が違う。
患者層は「けが」と「痛み」で分かれる
同じ整形外科の待合に、性質の違う2種類の患者が並んでいる。
急なけがと、慢性的な通院
令和5年患者調査で「損傷,中毒及びその他の外因の影響」の外来患者は281.9千人、そのうち骨折が98.1千人だった。一方の「筋骨格系及び結合組織の疾患」は805.1千人である。数の上では、けがよりも痛みで通い続ける患者のほうが3倍近く多い。
この構成が、受付の1日のかたちを決めている。予約で組んだ通院患者の列に、予定にない受傷の患者が割り込む。予約制でありながら予約だけでは回らない、という状態が常態になる。
女性の受療率が男性の1.6倍ある
同調査の受療率(人口10万対)を見ると、筋骨格系及び結合組織の疾患の外来は総数647、男496、女791である。女性が1.6倍高い。
年齢でも偏りが出る。外来の受療率は75歳以上で11,333と、全年齢の5,850に対して約2倍である。高齢の患者が多い科では、窓口での案内が「伝える」から「歩いてもらう」まで含む仕事になる。受付の負荷が接客的というより物理的になるのは、この層の比率が高いためだ。
「大変」と言われる部分を分解する
検索されている「整形外科 受付 大変」という言葉の中身は、これまでの3点でほぼ説明がつく。
大変さの正体は業務量ではなく分岐の多さ
窓口に立つ人から見ると、目の前の患者ごとに処理の分岐がある。保険診療か労災か。初診か再診か。診察だけか、リハビリまで行くか。分岐が重なるほど、判断を挟む回数が増える。
一方で、覚えることが無限にあるわけでもない。労災の様式は業務災害と通勤災害で2種類、指定と指定外で2通りの計4パターンに整理できる。リハビリの予約は枠の埋め方を覚えれば型になる。分岐は多いが、有限で反復する。
負荷が集中するのは、判断の分岐そのものより、分岐が読めない時間帯である。予約で埋めた枠に受傷の患者が入ると、その日のリハビリの進行がまとめて後ろにずれる。受付は、待っている患者への説明と、後ろの枠の組み直しを同時に抱えることになる。整形外科の「大変さ」を先に知っておく価値があるのは、これが避けられる種類の負荷ではなく、科の構造から出てくる負荷だからだ。
未経験でも入りやすい理由
整形外科は一般診療所104,894施設のうち12,298施設が標ぼうしており、内科・小児科・消化器内科・皮膚科に次ぐ規模がある。求人の母数がある科だと言える。
そのうえで、労災の書類は制度で様式が決まっているため、職場ごとの独自ルールが入りにくい。覚えた手順が次の職場でもそのまま通じる部分が、他科より多い。整形外科系の求人は医療・クリニック受付の求人から、勤務形態の条件で絞り込める。
給料は診療科では変わらない
科ごとの給与を比べたくなるが、その比較はできない。
統計に診療科別の区分がない
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査で、医療機関の受付は「受付・案内事務員」に含まれる。正社員クラスの年収換算は356万円、短時間労働者の1時間当たり所定内給与額は1,231円である。診療科別の内訳は集計されていない。
| 統計上の職種 | 正社員の年収換算 | パートの時給 | 平均勤続 |
|---|---|---|---|
| 受付・案内事務員 | 356万円 | 1,231円 | 8.6年 |
| 会計事務従事者 | 509万円 | 1,593円 | 12.7年 |
| その他の保健医療サービス職業従事者 | 323万円 | 1,281円 | 6.4年 |
差がつくのは科ではなく、担当する範囲のほうである。窓口対応だけの求人と、労災の書類・レセプトまで持つ求人では、同じ「整形外科の受付」でも評価される範囲が違う。会計事務従事者と受付・案内事務員の年収差153万円は、この範囲の広さの差がそのまま出た数字だと読める。整骨院との違いも含めた比較は眼科・整骨院の受付の仕事内容で扱っている。
よくある質問
労災の書類は受付が作るのですか
作成するのは患者と事業主で、受付は受け取りと確認を担当する。様式第5号は療養を受けている指定医療機関等を経由して労働基準監督署長へ提出する流れになっているため、医療機関が経由地点になる。
整形外科の受付は他の科より忙しいですか
診療科別の業務量を比べた公的統計はない。ただし筋骨格系の疾患で外来を受けた患者805.1千人のうち80.1%が一般診療所であること、診察後にリハビリの二段目があることから、待合の滞留時間は長くなりやすい。
外科と整形外科では受付の仕事が違いますか
一般診療所で外科を標ぼうする施設は11,773で、整形外科の12,298と近い規模がある。窓口業務そのものは共通するが、労災の患者が来る点は両方に当てはまる。
未経験でも労災の対応を任されますか
制度側で様式が決まっているため、手順書のある職場が多い。業務災害と通勤災害、指定と指定外という4通りの分岐を覚えることが最初の到達点になる。
高齢の患者が多い科は体力が要りますか
外来受療率は75歳以上で11,333と全年齢平均5,850の約2倍にあたる。移動の介助や案内で立つ時間は長くなる。座って処理する事務だけを想定していると、入ってからのずれが大きくなる。
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出典
- 厚生労働省「令和5(2023)年 医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」(令和5年10月1日現在/一般診療所104,894施設・診療科目別は重複計上)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/23/
- 厚生労働省「令和5(2023)年 患者調査の概況」(令和5年10月実施/推計外来患者数・受療率)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/index.html
- 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「療養(補償)等給付の請求手続」(様式第5号・第16号の3・第7号(1)・第16号の5(1)の使い分け)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyousei/rousai/040325-14.html
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別の給与額/短時間労働者 職種別1時間当たり所定内給与額(企業規模計10人以上・産業計)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2024/index.html
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