美容室やサロンの受付が扱っているのは、席の空きではない。スタイリスト一人ひとりの時間である。
この違いは求人票からは読み取りにくい。「予約管理・電話応対・会計」と書かれていても、指名予約を扱う店とフリー予約だけの店では、受付が判断すべきことの量が二桁違ってくる。
そしてもう一つ、受付が手を出せる範囲には法律の枠がある。美容師法が「美容」を定義し、免許を持たない者がそれを業とすることを禁じているためだ。
受付が管理しているのは席ではなくスタイリストの時間
美容室の予約は、時間の帯を担当者ごとに割り当てる作業になる。カット60分、カラー120分といった施術ごとの所要時間が、そのまま予約枠の単位になる。
指名予約は枠の奪い合いになる
指名が入ると、その時間はほかの客に使えなくなる。人気のスタイリストほど枠が先に埋まり、フリー予約の客を誰に振るかという判断が受付に回ってくる。ここで新人スタイリストの枠を埋められるかどうかが、店の売上構成に直接効く。
同時に、指名料の有無と金額の確認も受付の仕事になる。会計時に指名の有無を取り違えると、金額が変わる。予約の記録と会計が一本の線でつながっている点が、飲食店の予約管理と違うところだ。
予約が崩れる場面を先に潰す
崩れ方は決まっている。前の施術が延びる、当日キャンセルが出る、カラーの追加が発生する。いずれも施術中に判明するため、受付は施術の進行を見ながら後続の予約を組み替えることになる。
当日キャンセルが出た枠をそのまま空けておくか、待ちの客に声をかけて埋めるか。この判断を受付に任せている店と、店長に確認させる店がある。求人票の「予約管理」という言葉は、どちらの意味でも使われる。面接で「予約の組み替えは誰が決めるか」を聞くと、任される範囲がはっきりする。
「電話応対ができれば務まる」と説明される職種だが、実際に難しいのは電話そのものではない。鳴った電話に出た瞬間、残りの枠と施術の進み具合を頭の中で照合しなければならないという点にある。
受付ができる仕事の範囲は、美容師法が決めている
サロンの求人票には「アシスタント業務あり」と書かれていることがある。どこまでを受付が担えるかは、店の裁量ではなく法律で決まっている。
美容師でなければ美容を業としてはならない
美容師法は「美容」を、パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により容姿を美しくすることと定義している(第2条)。そのうえで、美容師でなければ美容を業としてはならないと定め(第6条)、美容師は美容所以外の場所で美容の業を行ってはならないとも定めている(第7条)。
つまり受付が無資格で担えるのは、この「美容」に当たらない範囲に限られる。受付・会計・予約管理・清掃・備品補充はここに入る。
染毛とまつ毛エクステンションは美容行為に含まれる
厚生労働省は美容師法の概要のなかで、染毛とまつ毛エクステンションも美容行為に含まれると明示している。まつ毛エクステンションについては、施術者に美容師免許が必要であり、届出された美容所でなければ施術できないとも示されている。
線がどこにあるかは店の判断で決まるものではなく、法令と厚生労働省の解釈で決まる。まつ毛エクステンションのように、後から範囲が明確化された例もある。個々の作業について迷う場面が出たら、店を管轄する保健所の確認事項になる。
管理美容師が置かれている店の見方
美容師である従業者が常時2人以上いる美容所には、管理美容師を置く義務がある(第12条の3)。管理美容師になれるのは、免許取得後3年以上の実務経験があり、都道府県知事が指定した講習会を修了した者に限られる。
求人票に管理美容師の記載がある店は、少なくとも美容師が2人以上いる規模だと分かる。受付を専任で置く余裕があるのは、この規模から上になる。
開設の届出には従業者の氏名が載る
美容所を開設するときは、位置・構造設備・管理美容師とその他の従業者の氏名などを、あらかじめ都道府県知事に届け出なければならない。さらに構造設備について知事の検査を受け、確認を得るまでその美容所を使用できない。
新規出店の立ち上げに関わる場合、受付も従業者として届出の対象に入る。開店日が構造設備の検査確認の日程に縛られるのはこのためで、「内装は終わったのに開けられない」という状態が起きる。オープニングスタッフの募集で入社日が動きやすいのは、この手続きの影響が大きい。
美容所は増え続け、理容所は減り続けている
働き先の母数がどう動いているかは、厚生労働省の衛生行政報告例で追える。
5年で美容所は約2万施設増えた
| 年度末 | 美容所 | 理容所 |
|---|---|---|
| 令和2年度(2020) | 257,890 | 115,456 |
| 令和4年度(2022) | 269,889 | 112,468 |
| 令和6年度(2024) | 277,752 | 107,995 |
令和6年度末の美容所は277,752施設で、前年度から3,682施設(1.3%)増えている。同じ年度の理容所は107,995施設で、2,302施設(2.1%)減った。5年で美容所は約2万施設増え、理容所は約7,500施設減っている。
理容所と美容所の重複開設は381施設で、前年度から11.1%増えた。数としては小さいが、伸び率だけは生活衛生関係施設の中で目立つ。理容と美容の両方を1店舗で提供する形が、少しずつ広がっている。
美容所が増えているのに理容所が減っている状況は、募集の出方にも表れる。理容室で受付を新しく置く動きは鈍く、募集の多くは美容室側から出ると考えるほうが実態に近い。
施設数と受付求人の数は一致しない
ただし、この27万施設のすべてに受付がいるわけではない。美容所の多くはスタイリストが受付と会計を兼ねており、受付を専任で置くのは一定の規模から上の店になる。施設数は求人の上限を示す数字であって、実際の募集数ではない。
母数が増え続けている業種であることは確かなので、求人の探し方としては美容・サロン受付の求人を探すときに、店舗規模と受付が専任かどうかを条件に含めておきたい。同じ美容系でもエステサロン受付の契約実務は契約書面の交付が加わるため、事務作業の性質が変わる。
給料は受付・案内事務員の統計から見当をつける
美容室受付に限定した賃金統計はない。近い区分は厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査の「受付・案内事務員」である。
正社員は年収356万円、パートは時給1,231円
| 区分 | 金額 | 平均年齢 | 勤続年数 |
|---|---|---|---|
| 一般労働者(フルタイム) | 年収換算 約356万円 | 42.0歳 | 8.6年 |
| 短時間労働者(パート) | 時給 1,231円 | 50.1歳 | 6.2年 |
年収換算は「きまって支給する現金給与額256,500円 × 12か月 + 年間賞与485,800円」で算出した。パートは実労働日数13.7日・1日5.7時間で、月収換算約9万6千円になる。
美容室の受付求人は時給表示が多く、この1,231円が比較の基準になる。上回っている場合は、土日祝の出勤や遅番の比率が高いことが多い。営業時間が夜まで続く業態なので、最終受付の時刻を確認しておくと実際の退勤時刻が読める。受付という職種全体の枠組みは受付という仕事の全体像で整理している。
よくある質問
美容室の受付に美容師免許は必要ですか
受付・会計・予約管理には免許の要件がない。ただし美容師法第6条により、美容師でなければ美容を業とすることはできない。染毛やまつ毛エクステンションは厚生労働省が美容行為に含まれると示しているため、無資格では扱えない。
アシスタント業務はどこまでやりますか
店によって幅がある。判断の基準は、その作業が美容師法にいう「美容」に当たるかどうかである。求人票に具体的な作業名が書かれていない場合は、面接で確認しておくのが確実になる。
美容室の受付は正社員とパートのどちらが多いですか
受付・案内事務員の統計では、フルタイムが84,880人、パートが84,580人でほぼ同数である。ただしこれは全業種の合計であり、美容室に限った内訳は公表されていない。
受付から美容師を目指すことはできますか
美容師免許を取るには、指定された養成施設で学科と実習を修めたうえで美容師試験に合格する必要がある。修業期間は昼間課程2年、夜間課程2年、通信課程3年以上と定められている。受付として働きながら通信課程に通う進み方は、制度上は成り立つ。
未経験でも採用されますか
美容所は令和6年度末で277,752施設あり、前年度から3,682施設増えている。母数が拡大している業種のため、募集の入り口は開いている。ただし受付を専任で置くのは一定規模以上の店に限られる点は考慮したい。
次に読む
出典
- 美容師法(昭和32年法律第163号)第2条・第6条・第7条・第12条の3 https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC1000000163
- 厚生労働省「美容師法の概要」(美容の定義・染毛およびまつ毛エクステンションの取扱い・管理美容師)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124874.html
- 厚生労働省「令和6年度衛生行政報告例の概況」生活衛生関係施設数(各年度末現在・美容所277,752施設/理容所107,995施設)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/24/
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種別(受付・案内事務員/産業計・企業規模計10人以上・男女計)
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