結論から書く。コールセンターでフルタイム勤務している男性は全国に6万190人いて、年収は平均464万円である(厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査、職種区分「電話応接事務員」)。
ただし、この2つの数字は同じ方向を指していない。
6万190人は、同じ職種のフルタイム17万9,540人のうち33.5%にすぎない。人数で見れば男性は明確な少数派である。ところが年収のほうは、同じ職種の女性358万円を106万円上回っている。人数では3人に1人、賃金では上の側という、ねじれた位置に置かれている。
男性がこの仕事を選ぶかどうかを判断するとき、効いてくるのはこのねじれのほうだ。
6万190人という母数は、少数派ではあっても例外ではない
「コールセンターは女性の仕事」という印象は、統計の上でも半分は当たっている。ただし残りの半分は当たっていない。
フルタイム17万9,540人の内訳
賃金構造基本統計調査で電話応接事務員(電話交換手・コールセンターオペレーターを含む職種区分)のフルタイム労働者を男女に分けると、次のようになる。
| 区分 | 労働者数 | 構成比 | 平均年齢 | 勤続年数 | 年収換算 |
|---|---|---|---|---|---|
| 男女計 | 179,540人 | 100% | 43.6歳 | 7.8年 | 約394万円 |
| 男性 | 60,190人 | 33.5% | 43.7歳 | 8.5年 | 約464万円 |
| 女性 | 119,350人 | 66.5% | 43.6歳 | 7.5年 | 約358万円 |
年収換算は「きまって支給する現金給与額 × 12ヶ月 + 年間賞与」で計算している。前者には残業代が含まれる。
6万190人という数は、たとえば受付・案内事務員の男性1万7,490人の3.4倍にあたる。窓口系の職種のなかでは、男性が最も多く働いている職種である。求人票に「女性活躍中」と書かれていることが多いのは事実だが、母集団としての男性は薄くない。
年齢はほぼ同じで、勤続だけが1年長い
男性43.7歳・女性43.6歳。年齢はほとんど変わらない。勤続年数だけが男性8.5年・女性7.5年と1年の差になっている。
男性が短期で抜けていく職種でも、逆に長く居座る職種でもない。同じ年齢層の人が、同じくらいの期間だけ在籍している。にもかかわらず年収が106万円違う。ここが読みどころになる。
パート・アルバイトの側は男女に分かれていない
同じ調査の短時間労働者(パート・アルバイト)を見ると、電話応接事務員の時給は1,363円、平均年齢50.2歳、労働者数9万7,730人である。ただしこの区分は男女計でしか公表されていないため、パートの男性が何人いるかは統計から読めない。
男性がこの職種を検討するときに使える数字は、実質的にフルタイムの側だけである。以下、断りのない限りフルタイムの数字で話を進める。
年収464万円は、事務系の男性のなかでどの位置にあるのか
464万円という額は、単独で見ても高いか低いか判断がつかない。同じ調査のなかで、男性が多く働いている事務系の職種と並べてみる。
男性同士で横に並べる
| 職種(男性) | 年収換算 | 労働者数 | 平均年齢 | 勤続年数 |
|---|---|---|---|---|
| 総合事務員 | 663万円 | 500,220人 | 45.8歳 | 15.5年 |
| その他の一般事務従事者 | 637万円 | 341,960人 | 45.7歳 | 15.8年 |
| 会計事務従事者 | 620万円 | 160,660人 | 42.8歳 | 13.3年 |
| 電話応接事務員 | 464万円 | 60,190人 | 43.7歳 | 8.5年 |
| 受付・案内事務員 | 453万円 | 17,490人 | 48.4歳 | 13.2年 |
| 介護職員 | 404万円 | 414,170人 | 42.1歳 | 8.3年 |
| 事務用機器操作員(データ入力) | 390万円 | 34,360人 | 41.1歳 | 8.1年 |
事務職の男性という括りで見ると、電話応接事務員は上位ではない。総合事務員とは199万円の開きがある。
勤続年数を揃えると、見え方が変わる
ただし、この表は勤続年数がそろっていない。上位3職種はいずれも勤続13年から16年で、電話応接事務員の8.5年より5年以上長い。同じ土俵で比べた数字ではない。
勤続8年前後の職種だけを取り出すと、介護職員404万円・事務用機器操作員390万円が並び、電話応接事務員464万円がその上に立つ。受付・案内事務員は勤続13.2年で453万円なので、電話応接事務員のほうが4.7年短い在籍で11万円多い。
つまり「事務職としては低い」と「勤続の短さのわりには高い」が同時に成り立っている。長く勤めて上げていく設計の職種ではなく、比較的早い段階で一定の水準に届き、そこから先は別の条件で決まる職種だと読める。
労働時間で稼いでいる職種ではない
男性の所定内実労働時間は月156時間、超過実労働時間は8時間である。女性は153時間と8時間で、残業の量に男女差はない。
所定内給与額32万2,300円を156時間で割ると、時給換算は2,066円になる。総合事務員の男性は2,510円、事務用機器操作員の男性は1,663円なので、この職種の時間単価は事務系の中位にある。年収の順位より時間単価の順位のほうが上に来るのは、残業が月8時間しかないからだ。
人数構成と役職構成が、互いに逆を向いている
年収106万円の差が何によって生まれているかは、コールセンターの年収・給料はいくらで分解した。差は賞与に集中しており、毎月の所定内給与で6万7,100円、年間賞与で20万300円の開きがある。勤続の差1年ではとうてい説明がつかない額である。
説明として残るのは役職の分布だが、賃金構造基本統計調査には役職別の内訳がない。そこで、業界側の調査を突き合わせる。
女性管理職の比率は2割前後に張りついている
日本コンタクトセンター協会(CCAJ)の2025年度コンタクトセンター企業実態調査は、コールセンターの受託企業109社を対象に68社が回答したものである。この調査で全管理職(課長級以上・役員を除く)に占める女性の比率を見ると、最も多い回答が「11〜20%」の18社、次いで「21〜30%」の15社だった。
現場のオペレーターは女性が66.5%を占める。その現場を管理する層では、女性が2割前後にとどまる。人数構成と役職構成が正反対を向いている。
女性役員がゼロの会社が59.7%
同調査で全役員に占める女性比率を尋ねた項目では、「0%」が37社で最多だった。非公開を除いた62社の59.7%にあたる。
役員の話は現場の年収と直結しないが、方向としては管理職の分布と同じことを示している。上に行くほど男性の比率が上がる構造が、業界全体に共通している。
この構造を、男性はどう読むか
読み方は二通りある。
一つは、男性がこの業界に入ると管理側の役割を期待されやすいという読み方。SVや管理職の空きに対して男性の母数が少ないため、相対的に順番が回ってきやすい状態にある。年収464万円という平均値は、その順番が回った人の分を含んだ数字である。
もう一つは、オペレーターのまま在籍した場合、男性であっても平均464万円には届かないという読み方。差が賞与に集中している以上、役職に就かなければ賞与の水準は動かない。統計は「男性だから高い」ではなく「役職に就いた人が高く、その人に男性が多い」と読むほうが実態に近い。
ここは注意が要る。CCAJの管理職比率は受託企業の管理職全体の数字で、センターのSVだけを取り出したものではない。方向の傍証として使える範囲を超えて、SVの男女比そのものだと読むわけにはいかない。
正社員の枠は、どのくらい空いているのか
「コールセンター 男 正社員」という検索の背後にあるのは、たいてい賃金より先に雇用の安定の問題である。ここは業界側の数字が直接答えてくれる。
直接雇用者の半分以上が非正規という会社が67.9%
CCAJ調査によると、回答68社の総従業員数(直接雇用者全員)の合計は27万4,180人だった。そのうち総従業員数に占める正規社員の割合が5割未満の会社は38社あり、非公開12社を除いた56社の67.9%を占める。
直接雇用で入れたとしても、その内側で正規と非正規が分かれている。7割近い会社では非正規のほうが多い。正社員の枠は、直接雇用の枠よりさらに狭いところにある。
全体は減っているのに、正社員は増えている
一方で、時系列を見ると別の動きが出ている。同調査で2024年度と比較できた50社の総従業員数は26万9,560人から26万4,151人へ5,409人減った。ところが比較可能な47社の正規社員数は3万8,916人から4万977人へ、2,061人増えている。
人は減り、正社員は増えた。この2つが同時に起きているとき、非正規の枠が正社員に置き換わっている可能性が高い。オペレーターの不足感が72.7%、SVの不足感が87.9%(いずれも非公開2社を除く66社中)という水準を合わせると、量ではなく定着で人を確保する方向へ動いている、という読みが自然である。
派遣を経由する入り方は主流だが、それ自体が目的にはならない
同調査で「直接雇用の方が派遣より多い」と答えた企業は52社で、非公開1社を除く67社の77.6%を占めた。ただし派遣を何らかの形で使っている企業は59社(88.1%)に達し、派遣のみという企業はゼロだった。
派遣活用の理由は「一時的な人材不足の解消」が88.1%で最多、「受託案件への柔軟な対応」が55.9%と続く。どちらも案件の増減を吸収するための枠であり、技能への評価ではない。「即戦力の補填」は30.5%、「専門性の高い人材確保」は18.6%にとどまる。
派遣から入って直接雇用へ移る道はあるが、入り口の時点で正社員を狙うなら、直接雇用比率の高い会社を選ぶほうが近い。雇用形態ごとの制度の違いはコールセンターの派遣と正社員の違いで整理している。
どの持ち場が空いているかは、職種別の不足感でわかる
正社員として長く残るなら、オペレーター以外の持ち場も見ておきたい。CCAJ調査は職種ごとの過不足を尋ねている。
不足しているのは電話に出る人だけではない
非公開2社を除く66社での不足感(「不足している」と「やや不足している」の合計)は次の通りだった。
| 職種 | 不足感のある企業 | 比率 |
|---|---|---|
| スーパーバイザー | 58社 | 87.9% |
| コミュニケーター・オペレーター | 48社 | 72.7% |
| マネージャー・センター長 | 36社 | 54.5% |
| エンジニア(システム・IT) | 33社 | 50.0% |
| トレーナー、QA/QC | 32社 | 48.5% |
いずれの職種でも「過剰気味である」と答えた企業はゼロだった。不足の順位は、そのまま社内で人が回ってきにくい順位でもある。SVの不足感が87.9%と突出しているのは、オペレーターの補充が追いつかないまま、管理する側の人数だけが先に足りなくなっているためだ。SV1人が受け持つオペレーター数は平均8.93人で、2023年度8.54人、2024年度8.83人と3年続けて増えている。
エンジニアとトレーナーの枠は、電話の外側にある
エンジニア50.0%、トレーナー・QA/QC 48.5%という数字は、電話応対とは別系統の入り口がセンター内にあることを示している。同調査では生成AIをセンター運営の実務で運用している企業が33社(48.5%)に達し、活用方法の上位は「応対内容の要約」74.5%、「メール文章の作成」63.6%、「FAQの自動生成」61.8%だった(活用中の55社対象)。
システムの側に寄った持ち場は、この動きに合わせて増える方向にある。電話の技術ではなく、電話の周辺を設計・運用する技術で評価される持ち場だと考えたほうがいい。テクニカル寄りの入り口についてはテクニカルサポート・ヘルプデスクの仕事で扱っている。
受託内容から見た配属先の分布
同調査でセンターが受託している業務の内訳は、「カスタマーサポート」64社(94.1%)、「問い合わせ受付」61社(89.7%)、「受注センター」47社(69.1%)の順だった。電話業務の85.1%はインバウンド中心(非公開を除く67社ベース)で、相手は個人が70.1%を占める。
つまり配属される可能性が最も高いのは、個人からの問い合わせを受ける受信業務である。発信中心の職場を想定して準備すると、入ってから方向が合わない。両者の業務の違いはインバウンドとアウトバウンドの違いで比較している。
管理者を目標に置くなら、SV・管理者の求人から仕事内容と応募条件の書かれ方を確認しておくと、いま自分に足りないものが具体的に見える。
求人票のどこを見て判断するか
ここまでの数字を、応募前の確認事項に落とすとこうなる。
- 正社員としての募集か、正社員登用ありの募集か。正規社員が5割未満の会社が67.9%という水準なので、「登用あり」は枠が空いているという意味ではない。
- 賞与の月数が書かれているか。男女差が賞与に集中していた構造から考えて、年収を動かすのは月給ではなく賞与である。フルタイム全体の年間賞与は39万3,700円で、所定内給与額の約1.4ヶ月分にあたる。
- みなし残業の設定時間。この職種の超過実労働時間は月8時間である。20時間や30時間のみなし残業が付いている求人は、実態から離れている。
- SV・トレーナー・QAへの登用条件が明記されているか。不足感が87.9%・48.5%と高い持ち場ほど、条件が具体的に書かれている会社は本気で埋めようとしている。
このうち4番目が、男性がこの職種を長く続ける場合にいちばん効く。年収464万円という平均値は、8.5年の勤続と役職の有無を含んだ結果であって、入社時点で保証される額ではないからだ。
逆に言えば、オペレーター職として入って3年で判断するつもりなら、比較すべきは464万円ではなく、時給換算2,066円という時間単価のほうになる。この単価は事務系の中位にあり、残業月8時間という条件込みの数字である。何を基準に比べるかで、同じ職種の評価は変わる。
よくある質問
コールセンターで働く男性の割合はどのくらいですか
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、電話応接事務員のフルタイム労働者17万9,540人のうち男性は6万190人で、33.5%にあたる。3人に1人が男性という構成である。パート・アルバイト(短時間労働者)は男女計でしか公表されていないため、非正規を含めた比率は統計から読めない。
男性がコールセンターの正社員になるのは難しいですか
CCAJの2025年度調査では、直接雇用者に占める正規社員が5割未満の会社が回答56社中38社(67.9%)で、正社員枠自体は広くない。ただし比較可能な47社の正規社員数は前年度から2,061人増えており、総従業員数が5,409人減るなかで正社員だけが増えている。枠が閉じているというより、非正規から正社員へ置き換わる局面にある。
男性のほうが年収が高いのはなぜですか
同じ職種で男性464万円・女性358万円と106万円の差があるが、労働時間の差ではない(男性156時間・女性153時間)。差は賞与に集中しており、役職の分布が主因と考えられる。CCAJ調査で女性管理職の比率が「11〜20%」に最も多く分布していることが、その傍証になる。
男性はアウトバウンド(発信)に配属されやすいですか
CCAJ調査に配属の男女別データはないため、その傾向を裏づける一次情報はない。わかっているのは業務量の分布のほうで、電話業務はインバウンド中心が非公開を除く67社の85.1%を占める。統計上は、男女を問わず受信業務に配属される可能性が最も高い。
男性がSVになるまでどのくらいかかりますか
賃金構造基本統計調査に役職別の在籍年数の項目はなく、期間を示すデータはない。参考になるのは平均勤続年数7.8年という時間軸と、SVの不足感が87.9%で全職種中最も高いという事実である。SV1人あたりのオペレーター数が3年連続で増えていることから、補充の圧力は強まっている。
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出典
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計・企業規模計10人以上・男女別)/短時間労働者 職種別1時間当たり所定内給与額
- 一般社団法人日本コンタクトセンター協会「2025年度 コンタクトセンター企業 実態調査」(対象109社・回答68社・回収率62.4%・2025年6月16日〜7月23日実施)
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